第45話
第45話 BRAINSの屋敷1
広大な敷地をもつ豪邸の一部屋に青木は縛られ座らせられていた。
青木のおぼろげな視界が明瞭になっていく。
「ここは・・・?」
「目が覚めましたか?」
そこに立っていたのは、念動力と言われる最強の存在。
おぼろげな写真しか見たことがなかった青木ですら、理解できるほどの圧倒的な威圧感。
「そんなに怯えないでくださいよ。簡単に殺したりしませんよ。」
その言葉がさらに恐怖を煽る。
Sランクではないはずの念動力が白中の暴走以上の威圧感を出している根源が理解できない。
いや、青木は理解できる。その洞察力で、察した。この人間は、人を殺した数が違うのだと。
人を人だと思っていないのだと。
「さて、あなたを連れてきた目的は話しましたっけ?」
「・・・。」
「あぁ。今目を覚ましたところでしたね。どうしますか?何か飲みますか?生憎、甘いジュースとかはないですけど。もし欲しいなら、買わせてきましょうか?」
「い、いや。大丈夫です。」
「うーん。今日はいろいろあったと思うんですが、しかも、目が覚めるまで数時間ありましたし、喉が渇いていないということはないと思うんですが。」
しつこい物言いに青木は、怯え始める。
「じゃあ、お水をください。」
「やっぱり!遠慮しないでくださいよ。マリー。お水を。」
「はい!魔法使いのマリーはお水を持ってきました!」
「青木様に飲ませてあげてください。手を縛られたままでは飲めませんので。」
「はい!」
マリーは、ゆっくり青木に水を飲ませた。
「どうですか?少しは落ち着きましたか?それでは、マリー下がってください。」
「わかりましたわ!」
そういうと、マリーは部屋を出ていった。
青木からすると、この得体のしれない男と二人きりになるのがとても嫌だった。
敵だとしても、あの快活な女の子に青木はすがっていたのかもしれない。
「さて、本題です。我々はBRAINを探しています。なぜかというとBRAINを守るためです。あなた方と同じ目的だと思うのですがどうですか?」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味です。少数であるBRAINを集め、自治権を認めさせたいということです。」
「・・・その規模の仕事をしていませんのでわかりません。」
「ははは。面白い。自分の仕事が何に直結しているか理解していないで、従事していたというんですか?」
「私は、BRAINの事件を解決する仕事をしているだけです。」
「なぜ、BRAIN専用なのですか?なぜBRAINは特別なのですか?」
「だ、だって、異能力を使うじゃないですか!」
「そうだとしても考え方や思想はただの人間ですよ?」
「それは・・・。事件を起こす規模や脅威度が人間とは違います。」
「なるほど。世界の脅威として認識されているのは間違いないわけですね。」
「なにが言いたいんですか?」
「なぜ、そもそもあなた方に従わなければいけないのでしょうか?」
「それは簡単なことですよ。秩序のためです。」
「ふーむ。なんともあなたは、聡明で豪胆だ。では問います。BRAINたちは考え方や思想は人間と同じと言いましたが、BRAINは人間よりも高次元の生物です。」
青木が恐れていた考えがその男の口から出てきた。
「その高次元の生物が、自分よりも低い生物に対して、譲歩する必要はあるのでしょうか?」
「・・・あります。」
「あなたは食用の家畜に譲歩したことがあると?」
「・・・。でもあなたたちは、人間を食べないでしょう!」
「ははは。それはそうですね!でも、私たちの脳を非能力者が食べると能力が移ることを知っていますか?」
「!!!!?」
「我々は自分たちを守るために徒党を組むだけですよ。」
「そんな、そんなこと聞いたことがありませんよ!」
「当事者じゃないあなた方にその深淵が分かるわけないじゃないですか。BRAINの脳を摂取すれば、その能力を得る可能性があるというところまでですが、その価値がどれほどかわかりますか?非能力者からしたら、未知の力を得て、非日常の体験ができる特急券を得られるんです。そのために弱いBRAINは殺されたりします。特にFQ3はよくそういうことをしますね。だからこそ、弱いBRAINを守りたいんです。どうか力を貸してもらえませんか?」
「私にどうしろと?」
「あなたの持っているBRAINの情報を読み取らせてもらいたい。」
「・・・無理やりやらないということは、許可が必要なのが発動条件ですか。」
「ははは!やはり聡明だ!だが、許可を得る方法はいくらでもあるんです。」
そういうと、机のうえに置いてあった万年筆が、宙に浮き青木の目の前に飛んでいき、寸前のところで止まった。
「!!!」
「片目を失っても口があれば、十分ですよね?」
しかし、そういった男は能力を解除し、万年筆が地面に落ちた。
「まぁ。でもいいんです。あなたが、我々の目的に共感して教えてくれるまで待ちます。事を荒げたいわけでもないですし。この屋敷のなかは自由にしてもらっていいですよ。出られませんが。」
「なんで・・・。」
「なんで?何がですか?強行するとでも?それで自治権を持ったとしても争いは絶えませんし、あなたようなBRAINに理解のある人間がいなくなるのは、個人的には嫌なので。その気になったら教えてください。」
そういうと、青木を縛っていた縄がするするとほどけた。
「そうだ、私の名前は、天堂カイです。以後よろしくお願いします。サイ!いるか?」
「うん。いるよ、お兄ちゃん。」
「青木さんを部屋へお連れしろ。」
「はーい。」
サイと呼ばれたフードを被った少年が、部屋に入ってきた。
青木は、カイ同様にサイに対しても嫌悪感を持った。
大きく黒い瞳は、何の感情も感じられない。
そして、青木は部屋を連れ出された。
―――――
青木が連れてこられた部屋には、窓が付いているが壁紙だった。
ベッドと別の部屋にはトイレと小さな浴槽のユニットバスがあった。しかし、それしかない。
食事は、マリーが持ってきてくれる。
待遇はいいが、完全に監禁されている状態だった。その間にも、扉に耳を当て、相手の人数を捉えようとする青木だったが、屋敷が広すぎてその詳細を掴むことはできない。
そんなとき、マリーが食事を持ってきても部屋を出ていかない。
「あの!私!マリーっていうんだけど!サキちゃんは私たちの仲間になるの!?」
「え、?」
「少し聞いちゃったの。サキちゃんが私たちの救世主だって。」
「救世主?」
「だってそうでしょ?BRAINなんて人間に比べたら数が少ないんだから、みんな仲間にならないと淘汰されるにきまってる。」
「いや、そんなこと・・・ないですよ。」
「なんで、ないってはっきり言えないの?」
「それは・・・。」
青木は知っていた。BRAINの中でも不遇な能力で差別される人たちを。
それが保護対象だったこともある。しかし、だいたいが悪の道に行ってしまう。
能力をコントロールできない人や、人を傷つける能力、すべてが万能ではないBRAINたちがどうなっているかわかっていたからこそ、はっきりと言えなかった。
「あのね、マリー。サキちゃんが好きなの。」
「は?」
「BRAINの仲間の人間のサキちゃんが好きなの。」
黒目に光のないマリーの異常さに一瞬で気付いた青木。
これは、愛玩だ。人間がペットを愛でるのと同じ。マリーは青木をそう見ている。
青木は震えが止まらなくなった。
マリーが去ったあと、マリーが持ってきた食事をすべて吐き戻した。




