第43話
第43話 FQ3の敗走
「あ~ぁ。何の成果もなく帰ると道化にまたなんか嫌味いわれそう~。」
「確かに。でも、第三者が割り込んでくるなんて聞いてないし、しょうがなかったんじゃないか?」
一方は煙を上げ空を飛び、一方は数十羽のイヌワシにぶら下がり、空を移動している炎煙と八咫烏が話している。
「とにかく帰ったら幹部会議だね~。青木サキの居場所は見当はついているし。」
「そうなのか?」
「うちはさ、鳥と視覚も共有できるわけ~。ほぼすべての地域に監視カメラがあるようなものだから~。都会でも田舎でもさ~。」
「だから諜報担当なのか。」
「ま、そういうこと~。」
「そうか。あと、聞いていいのかわからないけど、なんで青木サキを狙ったんだ?」
「え?聞いてないの?幹部補佐なのに~?」
「あぁ。道化が教えてくれなかった。」
「それはただの嫌がらせだよ~。」
「あの野郎・・・。」
「青木サキが必要なんじゃなくて、BRAINの情報が必要なんだよ。彼女はほとんどのBRAINの能力と低ランクの保護対象のBRAINの所在地を知っているから誘拐しようとしたんだよね~。」
「なるほど。BRAINの居場所か。それがあれば、BRAINの間引きもできるし、強力なBRAINなら仲間にできるってことか。」
「そう。そういうこと~。相手も全く同じこと考えてるだろうね~。」
「脳男は何を考えてんだ?」
「それは知らな~い。頭が良すぎて何考えてるかなんて誰もわからないよ~。とにかく、あの二人、ただものじゃなかったね~。あれだけ強い能力者がいるってことは、もっと強い念動力並みの人材を集めて、会長のご子息を狙いに来るんじゃないかな~?」
「そっか。うちは大丈夫なのか?」
「FQ3のこと~?大丈夫もなにもやらなきゃやられるだけだよ~。戦闘になることはほぼ確実。それまでにどうにか戦力を上げないとさすがの道化や脱兎、無名だって大人数相手じゃ分が悪いもん。」
「だけどよ、なんか矛盾してないか?」
「何が?」
「FQ3は、人類至上主義なんだろ?結局BRAINの力を使ってるじゃねえか。」
「それはあくまでも手段だよ。人類至上主義なのは変わらないよ。うちらだってその目的のためにただ使われてるだけだし、目的が達成されたら例外なく消されるだけだよ?」
「・・・またか。」
「また?なに?不満でもあるの?当たり前のことだよ?」
「いや、なんでもねえ。」
―――――
「あ~。八咫烏と炎煙の見事な敗走おめでとう。」
「言った通りでしょ~?」
「まあな。」
道化が倉庫に帰ってきた二人に嫌味の第一声を送った。
「何のことかな?目的をこなせなかったものに行き場はないんだけどなぁ。」
「言わせてもらうけど~、相手はBRAINSでした~!」
「それもかなりの使い手だった。東京地区と関西地区の特殊能力者調査部隊も全員揃っていた。あの状態から青木サキを狙うのは不可能だぜ。」
「炎煙。言い訳君に名前を変えようか?」
「うるせえよ。」
「まぁ。正直なところ現状のFQ3よりもBRAINSのほうが戦闘力は上でしょうね。」
ピシッとしたスーツを着た無名が話に入ってきた。
「あひゃ!戦力強化しないとさすがに死ぬよ!無名を入れて四人しかいないんだからさ。」
調子の狂う声を出す脱兎が無名の後からついてきた。
「なんで俺が数に入ってないんだよ。」
「あひゃひゃ!別に炎煙を数に入れてないなんて言ってないよー!」
ケタケタと笑う脱兎も炎煙に対しては、いまだに幹部候補として認めていない様子だった。
「炎煙も十分に戦力になっていますよ。私の見立てでは、この中でも相当上位の力を有しています。あまり、いたずらに炎煙を貶さないでください。」
「あひゃー!怒られちゃった!」
「しかしながら、今回の青木サキの誘拐に失敗したのはかなりの痛手ですね。FQ3の下っ端にBRAINの居場所を探らせるのも限界が来ているのは確かです。そこで、BRAINSの根城に青木サキを奪還しに行きます。」
「このメンバーでか?」
「メンバーのリーダーは、八咫烏。あなたです。」
「まあ~。そうだよね~。場所が分かるのうちだけだし~。」
「しかし、八咫烏だけでは戦闘力に欠ける。それを補うために彼らが協力してくれます。ではこちらへ。『零骨』『黒鉄』」
そこに現れたのは、もともと炎煙と行動を共にしていた、傷だらけの少年と屈強な男だった。
「初めまして。私は零骨ものの『零骨』と申します。よろしくお願いします。」
傷だらけの少年は、へりくだり挨拶をした。
炎煙は性格の変わってしまった傷だらけの少年を見て吐き気をもようした。
次に、屈強な男が挨拶をした。
「がはは!我こそ鉄の塊!『黒鉄』という!『零骨』共々よろしくお願いする!」
あの無口だった屈強な男が、自信に満ち溢れ、快活に挨拶をしてくる。
「お、おい。俺を覚えてるか?」
マスクを外して、目つきの悪い顔を晒し、二人を見た炎煙。
「申し訳ありません。私の小さい脳の中にあなたのような、鋭い目つきの方の記憶はございません。」
「がはは!我も知らん!」
「・・・は?お、おい。無名・・・どういうことだよ。」
「残念ですが、前の人格を維持できるほど、彼らの脳が耐えられなかったということですね。しかしながらBRAINとして覚醒していますし、生きながらえることができました。」
「どうしたのかな?炎煙。たかだか、記憶がないだけじゃないか。目の前にいるのは紛れもなく、あの傷だらけの少年と筋肉だるま君だよ?」
「・・・もういい。」
「なんだ、今度は拗ねるのかい。」
「やることが人間じゃねえ!!!」
「申し訳ございません。以前、任務に失敗したようで、その上、命の危機を無名様に救われた非才の身の私は確かに生きている資格はないかもしれません。」
「・・・いや、そうじゃねえ。」
「がはは!いいではないか!これからすべて完遂!それを以て全ての恩返しとする!わかりやすい!」
「あのまま死なせておけばよかったというわけか。なんとも炎煙らしい。自分が思い描いた結果と違うだけで過去に後悔する。なんとも後ろ向きな考え方だね。いいじゃないか、生きているんだから。」
「人格が変わるなんて死んでるも同然だろ。」
「そんなことないよ~。これから、新しい友達と協力して新しい信頼を構築できるんだから、嫌なことばかりじゃないでしょ~。」
「あひゃ!炎煙がキレるくらい人格が変わったら、二人は一回死んでるも同然でしょ!」
「とにかく!二人は、炎煙と同様幹部候補とします。そして今回のBRAINSの根城に八咫烏と同行してもらいます。そして、青木サキの奪還任務に就いてもらいます。」
「私には、荷の重い任務ですが、皆さんの足を引っ張らないように、一生懸命頑張りたいと思います。」
「がはは!我にドンと任せておけ!」
「よろしく頼むよ~。炎煙何か欠ける言葉はあるかい~?」
「・・・また一からやり直そう。」
俯きながら、小さく答えた炎煙。
何のことかよくわかっていないが、零骨と黒鉄は、返事をした。
―――――
「脱兎~。」
「あひゃ?なんだい、八咫烏。」
「あのさ、無名に直接聞くのが嫌だったから君に聞くんだけど、彼らにももちろん装備品はあるんだよね?」
「あひゃ?装備品?専用のスーツとかってこと?」
「そうそう~。」
「たぶんあると思うよ?なんかいろいろ倉庫に運んでいたみたいだし。さすがにうちらみたいにマスクくらいはあるでしょ。」
「あとさ~。彼らの能力ってなんだか知ってる~?」
「あひゃひゃ!うちが知るわけないじゃん!」
「そうだよねぇ~。」
「なんだい?八咫烏。リーダーになったからやる気をだしたのかい?」
脱兎と八咫烏が話しているところに、道化が割って入ってきた。
「道化は知っているの~?彼らの能力。」
「あぁ。知っているよ?」
「できれば、作戦に影響しそうだから前もって教えてもらえないか~?」
「いいとも。彼らの能力は・・・。」




