第42話
第42話 混沌の第三勢力
「は~い!注目~!私はマリー!魔法使いなの!その青木サキを捉えにきたの!ノリピー挨拶しないと!」
「えぇっ!いいよ。もうたぶん会うことないし。しかもほら、あんまり喋るなって言われてるでしょ。」
「えぇ~!こんな大勢いて私たちのこと教えないで帰るなんて、つまんなーい!」
特殊能力調査部隊もFQ3も全員が警戒態勢に入った。
どこからともなく現れ、明らかな異質な気配を漂わせる二人。
「八咫烏、あいつらも俺らの仲間か?」
「馬鹿言うんじゃないよ~。あれは、うーん。誰?」
「うちらは『BRAINS』。あなたたちファッキューサンみたいなダサい名前じゃないの!」
「え~と。あれかな~?あの小さい子は、うちらを馬鹿にしてるのかな~?」
「相手にするなよ。今は逃げるんだろ?」
「ああ!ダメダメ!馬鹿なのはその変なマスクだけにして!」
と、マリーという女の子が慌てた素振りで手を振り、FQ3の二人を挑発した瞬間、ノリピーと呼ばれていた女が、八咫烏の背後に一瞬で移動していた。
「な!?」
「ごめんなさいね。」
意識外からの急な攻撃に対処が遅れる八咫烏。
攻撃を躱すと同時に青木を放してしまった。
それを見逃さない武藤。閃光の一閃で青木の手を掴み、引き戻ろうとした。
が、しかし、ノリピーと呼ばれる女に捕まれた青木はびくともしない。
そして、その刹那。二人は武藤と八咫烏、炎煙の目の前から消え、マリーの傍まで移動していた。
「はい。お仕事完了~!マリーはやっぱり天才魔法使い!」
「動かないでくださいね。といっても動けないでしょうけど。」
「ん~~!!!」
青木は手で口を塞がれていないのにもかかわらず、口が開かない状態だった。
「一体どんな能力だ!?」
FQ3とBRAINSのやり取りを見ていることしかできない白中が叫ぶ。
「もう用はないので帰りま~す!」
「これで失礼しますね。」
「おいおい!それはないぜ。八咫烏行けるか?」
「う~ん?うち任せなの~?まあいいけど~。合わせるからさっさとやって~。」
炎煙は先ほど横やりが入り止めていた黒煙をマリー達目掛けて噴射した。
辺り一帯が黒煙に包まれ、視界が奪われる。さらには、不完全燃焼で発生した煙は、一酸化炭素であり、大量に吸い込めば意識を失い中毒死する。
マリーたちは、その黒煙に包み込まれ、そして、八咫烏の追撃を受ける。
「『群鴉』」
大量のカラスが、一斉に捨て身の自爆特攻をする。カラスが地面にぶつかり、砕け散る音と苦鳴が聞こえる。
黒煙と砂埃が混じり、辺りが余計に見えなくなっていく。マリー達がどうなったか目視で確認ないほどの砂埃と黒煙がだんだんと収まっていくと、そこには、誰もいなくなっていた。
「あ?どういうことだ?」
「ここで~す!ここ!ここ~!」
マリーの癇に障る声が訓練場の客席から聞こえた。
マリー達は一瞬にして、訓練場の中心から、50m以上も移動していた。
「じゃあ、私たちは帰るのであとよろしく~!」
「では、失礼しました。」
ノリピーは青木を抑えたまま軽く会釈をした。
そして、その瞬間ふとマリーとノリピーは青木を連れて消えた。
―――――
「う~ん。これは任務失敗だね~。まあそういうときもあるさ~。」
「いや。いいのかよ。」
「よくないね~。非常にまずいよ~。でも、うちらじゃ到底追いつけないし~。でも代わりにここの誰かを殺しておく?」
「いや、余計なことはしないほうがいい。」
「うん?うちの方が幹部で偉いんだけど~!」
「逃げの一手と決まってるだろ!」
「はいはい。」
残された八咫烏と炎煙がそう話しているうちに、白中が白い靄を上げて突っ込んできた。
「『白昼夢』からの『模倣犯』ネームド:黒木ヒトミ!」
「うわ!早いね~!」
調子の狂う八咫烏目掛け、高速で近づき、掌底の連撃を繰り出す白中。
それを後退しながら避ける八咫烏。時折、カラスが白中と八咫烏の間に割って入ってくるが、それを掌底で粉砕する。
ぴょんぴょんと跳躍しながら逃げ回る八咫烏を白中は捉えることができない。
「くそ!まともに戦えよ!」
「どうでもいいけどさ~。猛禽類って知ってる~?」
「知らねーよ!」
「それはさ~!格好いいああいうのを言うんだよ~?」
と、八咫烏が言うと数十羽のイヌワシが飛んできた。
イヌワシたちが掴んでいる手すりから伸びるワイヤーを掴むと、八咫烏はふわりと上昇した。
「おい!逃げるんじゃねー!」
「逃げるさ~。だって、多勢に無勢~。無理無理~。」
「わりいな。」
炎煙もよくわからない謝罪を述べると、黒煙をまき散らし、上昇していった。
黒煙により特殊能力調査部隊の皆がせき込む。その間に、八咫烏と炎煙は手の届かない高さまで飛んで行ってしまった。
―――――
「ゲホゲホっ!」
皆がむせている。だんだんと黒煙が止んでくると、辺りは異様な静けさだった。
各々が何もできなかった後悔で誰も先陣を切って話そうとはしない。
「くっそ!」
白中の悔恨の声だけが聞こえた。




