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BRAINS  作者: 愛猫私


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第39話

第39話 東雲ウイVS大門スグル2



―――――


 「おいおい。止めなくていいのかよ。やばいぞ。」

 「あれは殺傷トリガーを外してますよ。」


 訓練場の端で休んでいる白中と広瀬が焦っていた。


 「白中さんと同じ感じがしますよ。」

 「あぁ。なんかよくわかんないけどすごい集中力だ。ウイちゃんの場合ちゃんと制御できてるみたいだけど。」

 「東雲姉妹の能力はBランクと聞きましたが、Sランクの白中さんに匹敵する力なんじゃ・・・。」

 「かもしれない・・・。」


―――――


 スグルは躊躇することなく引き金を引いた。

 その瞬間、目の前のウイは忽然と消え、少しの砂埃だけが舞い上がった。

 目で追えないほどの速度で移動し、拳ほどのBB弾を回避した。


 「は?この距離で避けられるわけねーだろ。」


 スグルの使用しているエアーガンはのBB弾の射出速度は、100m/s。

 人間の反応速度がだいたい0.2秒。スグルとウイの距離はだいたい5mほど。それを考えると着弾時間は、約0.05秒。

 ウイは、銃弾が射出されてから動いたのではなく、スグルが引き金を引くという脳の電気信号を捉えすでに避けていたというのが正解だった。

 スグルは立て続けに何発も打ち続けた。しかし、その弾はすべて外れ、ウイの横を通り過ぎていく。


 「実弾でも当たらないよ。もう、あなたの考えを完全に掌握したから。」

 「いやいや。だとしても体が着いていかないやろ!」

 「それも私自身の制限を解除してるから大丈夫。」

 「何言ってんや。思っててもできないのが普通やろ。」

 「訓練すればできる。」

 「どんな訓練やねん!」

 

 

 スグルは足元にあった小石を手に取りウイ目掛けて放り投げた。

 目くらましには十分な量、それが一気に巨大化した。ボーリングの玉ほどの石は、ウイとスグルの間を完全に遮断し、その隙間からスグルはBB弾を撃ち込む。

 最初は小さいBB弾はその弾幕をすり抜け、ウイ目掛けて飛んでいく。そして、着弾するときに巨大化した。

 不規則に飛んでくる投石の軌道などウイにはわからないが、『制限解除(リミッターリリース)』によって強化された動体視力により、その投石がゆっくりと流れて見える。どこが安全かをいち早く視覚で認知して、身体をそこへ移動させる。

 回避という名のダンスを踊るウイ。その姿にあっけを取られるスグル。

 何もかもが通用しない状態。だが、ウイ目掛けてスグルは駆けだしていた。


 遠距離攻撃がダメなら近距離で、そして拘束した状態で狙撃するしかないと判断した。

 もちろんその作戦はウイに筒抜けだ。だから、失敗する。


―――――


 「まずいかもしれないな。」

 「明らかにスグルは隙だらけですね。」

 「ウイは今、火事場の馬鹿力を発動しているようなものだ。まともに食らったら怪我だけじゃすまないぞ。」

 「止めますか?」

 「だが、身体強化が行われているのであればSランクとしての評価をしなければならない。ここはスグルに頑張ってもらおう。」

 「うちのメンバーを実験に使わないでもらいたいですけどね。」

 「多少の怪我なら全部うちで面倒を見るから許してくれ。」

 「さっき、怪我だけじゃ済まいって言ってましたよね。」


―――――


 黒木と矢切の心配をよそに、小石の投擲からBB弾の狙撃、そして近接戦闘へのスイッチを図るスグル。

 ウイの死角からスグルはウイを拘束しようとした。

 しかし、ウイの華麗な回避のダンスを邪魔したことにより、とんでもない反撃を食らうことになってしまった。

 ウイは、投擲された石とBB弾を華麗に回避しながら、ばねのような体を回転させ、遠心力を脚力へと集中させていた。

 そこに無防備なスグルがやってきた。

 ウイはスグルの心を読み、ここぞとばかりに強烈な踵落としを繰り出した。

 スグルの耳の横で風が切れる音がした瞬間、足元が爆ぜスグルは場外まで吹き飛ばされた。

 

 「『月落(ルナーラ)』」

 

 強烈な踵落としは、訓練場の土台に大きなクレーターを作り出した。

 見ているものがすべて唖然として、口をぽっかりと開けている。


 「あんなん食らったら死ぬわ・・・。」

 

 とっさに防御姿勢をとり、吹き飛ばされ大の字に横たわるスグルが、そういうと意識を失った。

 試合終了の合図を聞かずして、ウイは自分の能力を解いた。

 白い靄はなくなり、大量の汗と荒い呼吸をしているが、体の負傷はどこにもないようだった。


 「そこまでだ。第二試合、東雲ウイの勝利。」


―――――


 「ウイちゃん、強すぎない?」

 「最初から強かった。」

 「まあ、そうなんだけど。なんか、今まで以上に強くなってるよね?」

 「FQ3と戦った後からもっと自分の能力と見つめあっただけ。」

 「いや、俺もそうしてるんだけど。訓練場の土台壊せるまでにはなってないよ。」

 「白中さんだって暴走すれば、辺り一面焼け野原。」

 「ウイちゃんの場合、制御してて焼け野原だから。」


 訓練場の端で、休息をとっている白中と広瀬、ウイ、そして大の字で横になっているスグル。

 

 「いてて・・・。」

 「大門さん大丈夫ですか?」

 「いや!あんなん!死ぬやろ!なんやあの威力!こちとらBB弾でかくしただけやぞ!?」

 「確かに規格外でしたね。」

 「途中から勝つイメージ全く出来んかったわ。わいの力不足ではあるけど、もう少し戦いのバリエーションないと対応できんわ。」

 「気になったんですけどいいですか?」


 ウイが広瀬とスグルの話に入ってきた。

 

 「大門さんの撃った弾を広瀬さんの力で生物化できない?」

 「あぁ。それはもうやっているよ。」

 「そのコンボは最初に思いついたな。なんとな!生物化すると弾道を変えられるんや。」

 「すごい。一人の力は限界がある。FQ3も一人ではなかったし複数いられたら勝ち目が一気に下がる。」

 「ウイさんは、一人でも掃討できる力を持っていると思いますが・・・。」

 「戦いの中でゾーンに入れることがわかったので、多少のことではやられないと思う。でも仲間は重要。」

 「そやな。わいら関西地区は、チームワークが重要やからな。」

 

 そこに黒木と矢切がやってきた。

 

 「ウイ、大門。よくやってくれた。試合内容はよく見させてもらった。」

 「二人とも激闘でしたね。しかし、スグル、君は反省点があると思うので、よく考えておくように。」

 「そんなぁ!よくやった方やと思いますけどね!」

 「そういうことは自分でいうものではないぞ。」

 「まぁ、今回はいつもの装備の10分の1もしてませんでしたしね。ウイちゃん相手ならBB弾じゃなくてアサルトライフルくらい装備せんと無理ですわ。」

 「確かに相手に合わせて装備を整えることも重要だな。今回、制限があったとは言えよく戦った。」

 

 黒木と矢切は、二人を労うと、訓練場の中央へ戻っていった。

 そして最後の試合、東雲ユイと鳥飼アヤセの戦いが始まる。



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