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BRAINS  作者: 愛猫私


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第38話

第38話 東雲ウイVS大門スグル1



 「では、東雲ウイ対大門スグルの第二試合を行う。両者とも前へ。」

 

 ウイはぴょんぴょんと跳ねながら体を温めている。

 それに比べスグルの方は、片手にエアーガンを装備している。

 

 「ん?あれっていいの?」

 

 ウイが黒木に尋ねた。

 

 「あぁ、問題ない。実践に近い試合だしな。必ずしも肉体のみで戦うものだけではない。大門の能力はもう把握しているだろ?」

 「なるほど。そういうことなら。」

 「ごめんな。わい、そんなに戦えんし、能力的にも微妙やからハンデだと思ってくれ。」

 「関西地区は東京地区とは違って、個々の能力の特化というよりは、模範的なチームでの行動を重視している。」

 「わい、最近入ったばっかりやから、みんなの力借りんと何もできないんでな。」

 「そうなんですか。じゃあ、本気出したらダメかな?」

 「嬢ちゃん、それは野暮やで。こっちも死ぬ気でBRAINと毎日やりやってんやから。手を抜くのはなしや。」

 「ごめんなさい。」

 「まあ、ええて。試合の内容がすべてを語る、ちゅうこっちゃ!」

 「では、両者、試合開始!」


―――――


 ウイは『ゾーン』に入る準備を開始した。

 目を瞑り、意識を集中し、自分の中へと深く潜っていく。とその時、右のほほを何かが掠めた。


 「初弾は命中せず。やっぱり頭小さいなぁ。」

 

 ウイの頭を掠めたのは、拳ほどの巨大なプラスチックの塊だった。それも強烈な速度で射出され、当たれば、気を失いかねないほどの高威力。

 

 「『巨大化(ヒュージ)』。わいの能力や。原理は簡単にわかるやろ。エアーガンで射出したBB弾を大きくしたんや。当たったら痛いではすまんからな。」

 「・・・。今のはたまたま。当たったら打撲もしくは、骨折。完全に遠距離からの制圧特化型。」

 「すごいやないか。ガンナーはポジションが重要なんや。わいは後方からの制圧部隊。近接だけが相手を無力化できると思わんことやな。」

 

 スグルの次弾が射撃された。最初は小さいBB弾が急に巨大化し飛んでくる。

 

 「単に巨大化してるわけちゃうで、でかくなったら空気抵抗もでかくなるけど、そこら辺は能力の向上で、通常の速度を維持したまま打てるんや。これが、実弾だったらどてっぱらに風穴開いとるわ!」

 「殺傷能力高すぎて、制圧どころじゃない。」

 「嬢ちゃんみたいな格上と戦うなら、殺さなきゃならんときもあるやろ。」

 「それはそう。」

 

 ウイは一度、ぴょんと跳躍し着地した瞬間、一瞬でスグルの懐に入っていた。

 

 「はっや!」

 

 ウイの蹴り上げを無理やりのけぞることで何とか回避し、反撃の銃弾を打つ。

 ウイは、地面を回転しながら、その近距離射撃をすべて躱す。

 

 「なんで当たらへんのや!」

 「銃口から、引き金を引く瞬間、視線、どこを狙うか。すべてわかる。」

 「反則やないか!」

 

 と、狙いを定めながら近距離で撃ったBB弾が地面に当たり粉々に破裂した。

 割れた破片は不規則に飛び散り、ウイを襲った。

 予想外の攻撃に、態勢を崩すウイ。そこにスグルの凶弾が命中した。


 「がはっ!」

 

 脇腹に命中した拳ほどのプラスチックの塊は、ウイを吹き飛ばした。

 

 「ラッキーパンチや。」

 「痛っ!」


 脇腹を抑えながら立ち上がるウイ。スグル自体も予想していないことには対処できない。


―――――


 「大門スグルもなかなかの能力者だな。実に堅実な立ち回りをしている。」

 「後衛でありながら、殺傷力も持ち合わせているのは彼くらいでしょうね。」

 「敵に回られると厄介だな。我々東京地区は近接戦闘のものが多いからな。」

 「いやぁ。かなり人材に恵まれましたよ。しかし、彼自体には身体強化はありませんし、東雲ウイの心を読む能力があれほど、洗練されているとなるとほぼ勝ち目はない。」

 「この試験は勝ち負けではないから、お互いのいい面も悪い面も出させる戦いをしてもらわないとだけどな。」


 黒木と矢切は、試合内容を見ながら二人で話している。


―――――



脇腹を抑えながら、駆けまわるウイ目掛けて、スグルはBB弾を撃ち込んでいく。

 しかし、さすがの体捌きと言わざるを得ないほど、ウイは華麗に避けていく。

 反撃の隙を与えないようにするため、スグルはBB弾の残数を頭の中で考えていた。

 だからこそ、ウイにそれを読まれ反撃のチャンスを与えてしまった。


 「リーロドせな。」

 「それを待ってた。」

 

 ウイのダンスのような、遠心力を利用した強烈な回転蹴りが、スグルを襲う。

 

 「『月蹴(ルナソル)』」

 

 脚力だけでなく、体幹、そしてそれをフルに使い生み出された遠心力を上乗せした強烈な横薙ぎの蹴りがさく裂した。

 メキメキという破壊音と共に何かが粉々になった。

 

 「いやぁ。当たったら死ぬで。まじで。」


 そこには無傷のスグルが立っていた。

 辺りには黒いプラスチックの破片が散乱しており、ウイが蹴り飛ばしたのはそのプラスチックだとわかった。

 スグルは一貫して『巨大化(ヒュージ)』の能力しか使っていない。

 変わり身の術のようなことができたのは、空になったマガジンを巨大化させ、その陰に隠れたのであった。サンドバックとなった空のマガジンを見てスグルは冷や汗をかいてる。

 

 「それだけじゃないでしょ。」

 「いや。それだけやで。さっきも言ったけどなガンナーは、ポジションを取るのが上手いんや。間一髪やったけどな。硬質のプラスチックが粉々ってどんな体してんねん。」

 「今ので、入れた。ゾーンに。」

 

 戦いの最中で、時折起きる時間が引き延ばされる感覚。

 その感じ方は人それぞれだ。攻撃するときも防御するときも、死線を超える先に訪れる時間のずれ。

 ウイは、一撃必殺の攻撃を当てることに必死になっており、体感する時間が引き延ばされていた。

 そして、その境地がゾーンとしてのトリガーとして、発動した。

 

 「戦いのなかでもゾーンに入れるんだ。『制限解除(リミッターリリース)』。」

 

 スグルはすぐにウイから距離を取った。

 ウイの身体からは白い靄が出現している。明らかに様子がおかしい。

 銃口は常にウイを狙っている。スグルは異変に気が付いたため、すぐにトリガーの横にあった、制圧ではなく射殺用の出力へ切り替えるスイッチへ変更した。

 弾丸はBB弾のため、射殺までとはいかないが、先ほどよりも弾速は数倍上がっており、当たれば骨折は間違いない。

 そのスイッチを切り替えざるを得ないほどの異質感。

 特にいやなのは、自分の心を土足で自由に入り込まれている感覚だった。この不快感がスグルの恐怖レベルを飛躍的に上げた。


 「嬢ちゃん。それ危ないんとちゃうん?」

 「うん。あなたがね。」


 スグルは躊躇することなく引き金を引いた。

 



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