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BRAINS  作者: 愛猫私


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第37話

第37話 白中ユメトVS広瀬マルタ2



 異形の姿をした白中を見て広瀬マルタは背筋を凍らせた。

 暴走状態の白中は明らかに広瀬マルタに殺意をむき出しにしている。

 守ってくれるタイル達もすべて破壊しつくされ、残骸となってあたりに散らばっている。

 一度命を吹き込んだものを再度利用することはできないため、残骸に命を吹き込むことはできない。

 

 すると、突如、白中は天を仰ぎ、空を眺め始めた。

 そして、だんだんと白い靄の量が減り、顔のクマの模様も変わり始めた。


 「・・・っと、暴走は終わりだ。」

 

 ふっと空気が変わったことに広瀬は安どした。

 先ほどまでの一方的にやられていた白中に戻ったのである。

 

 「何だったんですか、今の・・・。」

 「気にしないでくれ。あれは使いたくない能力だから。」

 「一瞬でタイル達をばらばらに。」

 「ここからは、自分の能力を試す試合にする。」

 「なるほど、あれが奥の手なら、次はとっておきなんでしょう。」

 「んじゃあ、行くぞ。『模倣犯(コピーキャット)』ネームド:黒木ヒトミ。」


 白中の白い靄がまたも多くなった。そして、その立ち居振る舞いすべてが、黒木を模倣したものになった。チャンネルの切り替えができるようになったことを表している。

 白中は、接近戦で広瀬の懐に高速で移動した。

 広瀬は突き上げられた掌底を躱し、攻撃に転じる。しかし、白中の黒木さながらのしなやかな体に触れることすらできない。

 ガードの上からでも響く掌底は、広瀬の口を切り鼻血を出させていた。

 

 「黒木課長の身体能力はこれほどなのですか。」

 「100%じゃないけど、まあこんなもんだ。日々ボコボコにされてたからな。」

 「私も奥の手を出さないと一方的にやられてしまいますね。」

 「あぁ。そうしてくれ、何せこの試合は手の内の見せ合いなんだから。」

 「では、行きましょうか。『怪獣の(モンスターアーマー)』」

 

 広瀬は自分の着ている戦闘服に手を当て始めた。

 すると、小手やひざ当て、ボディスーツなどが一斉にしゃべり始めた。

 

 「「「貴様か!われらの敵は!」」」

 「あまり無理やりな動きはしないでください。私の身体がばらばらになってしまうので。」

 「「「関係ないね!目の前の敵を抹殺すること!すなわちこれがわれらの生きがい!」」」

 「あんたもうまく制御できてるわけじゃないんだな。」

 「恥ずかしながらまだ発展途上ですが、対人戦闘なら負けなしの強さです。」

 「まあ、うちの黒木課長も負けてるとこ見たことないんだけどな。」


 と、話を交わすと急に広瀬が白中に向かって攻撃を仕掛けてきた。

 右手の小手が自分の意志で攻撃を仕掛けてくる。それを避けられたと思うと、回転しての左ひじの攻撃。さらにダメ押しの、右足の上段蹴りがさく裂した。

 白中は、すべて掌底ではじき返したが、最後の蹴りはもろに食らってしまった。


 「おいおい。まだ話してる途中だろ。」

 「すみません。この能力たちは勝手に攻撃してしまうので。」

 『・・・しかもなんだ今の態勢は。』


 広瀬マルタの重心は、常に『怪獣の(モンスターアーマー)』によって制御されており、あり得ない態勢でも質の高い攻撃が繰り出せる。これが、広瀬マルタの奥の手だった。

 

 白中は、自立行動する戦闘服を掻い潜り、露出している顔面に攻撃を当てなけらばならない。

 いくら身体が強化されていたとしても、戦闘服の小手やひざ当てを粉砕できるほどの力は黒木にはない。あるとしたら掌底による鎧通しだが、それも回避されてしまえば意味がない。

 

―――――


 「他人の戦闘力を模倣する能力ですか。こんなの報告書にはありませんでしたが。」

 「あぁ。私も初めて見る。白中自体の戦闘技術はそれほどでもない。ゆえに能力によって特定の相手の戦闘技術を模倣できるようになったのだな。これはすごい。」

 「今は一人の戦闘技術の模倣ですが、これが数人。いや数十人、数百人となれば、一人で小隊以上の戦闘力を有することになりますよ。」

 「計り知れないな。Sランク本来の姿というわけか。しかし、広瀬の方も能力は発展途上とはいえ、やはりかなりの能力だな。」

 「自立したサポート部位が勝手に身体を操作して攻撃する。これは対人間だとかなりトリッキーに見えるでしょうね。どこから攻撃が来るか予測がつかない。」

 「さて、お互いの手の内は見せたぞ?どう戦う?白中。」


―――――


 攻撃力は広瀬の方が上だった。規則性のない攻撃は、白中を捉えダメージを与える。

 しかし、白中は、『白昼夢(デイドリーム)』の発動中であり、多少のダメージは受け付けない。さらには身体能力も向上している。あとは、元となる戦闘技術だけ。

 黒木を模倣した白中は、少し離れた位置で黒木のいつもの構えをとった。

 広瀬の攻撃は止まない。素早く走り込み上下に分かれた打撃を連発してくる。それをすべて円のように手を回しいなしていく白中。

 パンと乾いた音とその打撃の方向が白中によって変えられる。


 「「「なんだぁ!このがきぃ!」」」

 「あんまり無茶しないでください!」

 「「「おらおらおらおらおらあ!」」」


 戦闘服から怒号が聞こえるが、白中には聞こえていない。すべての攻撃をいなし続けていく。

 そして直線的なそして致命的な攻撃の隙が、白中目掛けて飛んできた。

 広瀬は、この集中した戦闘のなかで、「まずい」と悟った。

 そして、「まずい」と思った時には、天地が逆転して仰向けに地面に叩きつけられていた。

 

 「がはっ!!!」


 硬い訓練場に叩きつけられ、無理やりに肺の空気を押し出されてしまった。

 怒号を出していた戦闘服たちも目を回して動けなくなっている。

 

 「黒木流:よくわからん投げ。俺も理解してないけど、なんかいつの間にか叩きつけられてるやつだ。」

 「・・・参りました。」


―――――

 

 広瀬の降参により、白中が試合に勝った。

 しかし、それらの激闘を見ていたほかの試験者たちは、震えが止まらなかった。同じレベルでの試合ができるかどうかが気がかりだったからだ。

 

「いい試合だったぞ。白中。しかし、よくわかない投げというのは、センスがないな。」

「いや、自分でやっててもどうやって投げてんのかわからないんですよ。タイミングとか軸とか。」

「今度はもっとしっかり説明しながらやるか。」

「いや、最初からそうして下さ・・・。っと、終わりましたか。」

「ん?そうか、お前は今まで寝ていたのか!?」

「そうですよ?でも、ちゃんと覚えてますよ。勝ちましたよね?」

 「あぁ。そうだな。」


 そこへ広瀬が来た。

 

 「白中さん。さすがSランクのBRAINです。」

 「いやいや、広瀬さんの能力めっちゃ強くね?」

 「確かに広瀬の能力は強い。もっと極めれば、白中などすぐに倒せるぞ。」

 「そういってもらえるととても嬉しいです。」

 

 そこへ矢切が不思議そうに言った。


「しかし、なぜあの時、白中の服を怪獣に変えなかった?」

 「発動対象は、1つだけなんです。自分の身に着けているものに発動している最中は、ほかに命を吹き込むことができないんですよ。」

 「なるほどな。能力なしの単身で戦ったら一瞬で決着が着いてしまっただろう。だからこそ、広瀬は自分の戦闘服に能力を使わざるを得なかったのか。」

 「はい。そのまえに暴走している白中さんを見ていたので、正直死ぬ気でいました。」

 「あはは、あれはあんまり使いたくなかったんだけど、かなり追い詰められてて・・・。」

 「物量で押されると何もできないのは、致し方ないことだな。だからこそのチームだ。」

 「そうですね。」

 「二人とも消耗しているだろ。後ろで少し休んでいいぞ。」

 「はい。」


 そういうと白中と広瀬は訓練場の端にどさりと座り、疲れを滲ませていた。



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