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BRAINS  作者: 愛猫私


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第36話

第36話 白中ユメトVS広瀬マルタ1



 「では、合同試験の模擬戦の対戦相手を発表する。まず、第一試合、白中ユメト対広瀬マルタ。第二試合、東雲ウイ対大門スグル。第三試合、東雲ユイ対鳥飼アヤセ。この順番で行う。」

 

 矢切が試合内容を皆に伝えた。

 

 「一応、東京特殊能力調査部隊の本部で私の部下たちが試合内容を録画している。また、念のために病院から神戸チユも待機させている。神戸は治癒能力を持ったBRAINだ。死ななければだいたいの怪我は治る。臆することなく力を発揮してくれ。」

 

 東京特殊能力調査部隊の広い訓練場に集められた皆は緊張の面持ちだった。


 「では、まず第一試合、白中ユメトと広瀬マルタの試合を開始する。二人とも前へ。では、始め!」


―――――


 広瀬マルタはBランクのBRAINだ。能力は『命を吹き込む(ライフギバー)』である。

 これは、無生物を生物に変え自分の指示通り動かす能力である。特に諜報活動にかなり役に立つ能力であり、関西地区で重宝されている。しかし、あまり大きなものには使えず、例えばビルを丸ごと生物には変えられない。最大でも軽自動車程度である。


 「白中さん。よろしくお願いします。僕はあまり戦闘向けではないのですが、関西地区のメンバーとして負けられないので、出し惜しみせずに全力で行きます。」

 「・・・。」

 「無視ですか。人間性に難ありとお見受けします。ではこちらから行きます『怪物の行進(モンスターパーティ)』。」


 広瀬マルタは、試合会場である訓練場に手を着いた。

 その訓練場は、すべてが硬質のタイルで出来ており、それら一つ一つに広瀬の能力で命が宿る。


 「「「おんどれやー!やってやんぞー!」」」

 

 タイルにかわいらしい小さな顔が付いている。そのかわいさとは裏腹に口は悪い。

 同じくして、白中も準備が整ったようだった。


 「『白昼夢(デイドリーム)』。」


 白中の身体から白い靄が出現し、顔には独特のクマが浮かび上がっている。

 

 「ごめん。さっきなんか言ってた?ってなんだこいつら!」

 「やっちゃってください!タイル達!」

 

 無数の硬質のタイルが白中を襲う。

 襲うといっても体当たり程度であるが、自我を持った硬質のタイル達の体当たりは強力だ。

白中は、身体が強化されているため、ダメージというダメージは受けていない。しかし、あまりの物量で身動きが出来なくなっている。


「んだこいつら。硬いし、暴言吐いてくる。」

「「「こんなカス野郎やっちまえ!」」」


白中は、能力を発動しているが、戦闘力を転換する能力をまだ発揮できていない。ゆえに防戦一方。

傷は治っているが、無数のタイル達を倒せずにいた。


「Sランクの武藤さんと日々鍛錬している私が、そう簡単にやられるわけにはいきません。」


―――――


 「面白い能力だな。矢切。」

 「だろ?広瀬マルタの能力は無生物を生物に変える力。人間のように独立した自我を持った状態でマルタの命令を聞く。Bランクの範疇を超えていると思っていたんだ。」

 「Aランク、使い方によってはSランクか?」

 「身体強化は出来ないが、例えば装着する装備品に自我を持たせれば、自動で回避や防御を行うこともできる。その面ではSランクに匹敵すると考えている。」

 「面白い。今は遠隔攻撃に専念しているが、近距離になった場合の対処もあるというわけか。」

 「そういうことだな。」


―――――


 「ちと反撃しないとやべぇな。」

 

 白中は拳を固め、タイルを殴り飛ばす。硬質のタイルは、粉々に砕かれ一つの命が終わった。

 

 「「「てめぇ!よくも仲間を!!!」」」


 タイル達が仲間をやられたことで激怒した。

 今までの猛攻がさらに威力を増していく。物量と的確な急所を狙った攻撃で再び防戦一方になる白中。


 「くそ。めちゃくちゃ強いじゃねえかよ。チャンネルを切り替える暇がねえ。」

 「何かしようとしても無駄ですよ。タイル達はもうキレてますから。」

 

 その時だった。二つのタイルが白中の膝裏に体当たりした。

 ガクッと膝をつき体勢を崩した白中の顔面目掛けてくるくると回転したタイルが激突した。


 「「「タイルアタック!!!」」」


 吹き飛ばされる白中。額からは血が出ている。

 

 「くそ痛え。このままだと起きちまう。時間を稼がないと。やるしかねぇな。『暴走(ランペイジ)』。」

 

 白中の白い靄の量が大幅に増えた。

 そして、顔のクマも別の模様を浮かび上がらせている。何より異質なのは、その姿勢。四足歩行の構えから驚異的なスピードと破壊力を持った暴走状態に自ら飛び込んだ。


 『とりあえず、この白い部屋に戻ってこれたか。えーとチャンネルは・・・。これにしよう。とにかく暴走状態であのタイル達を破壊しつくさないときりがない。』


 暴走状態の白中は、的確にタイル達を破壊していく。

 一撃一撃が必殺状態の暴走は、多勢に無勢のこの状況下を打開できる唯一の道だった。


 「なんですか!?あの気持ち悪いのは!」

 「「「ぎゃー¥@:*?%&$」」」


 タイル達の悲鳴が聞こえる。

 どんどん破壊され粉々になり山積みになっていくタイルの瓦礫。


―――――

 

 「暴走状態でもほかのBRAINを攻撃することなく、広瀬マルタを標的にしている。これも一つの成長か。しかし、暴走状態にならないと打開の一手がつかめないというのは、考えようだな。」

 「いや。あの状態で十分強いでしょ。ほとんどの敵を制圧できてしまうんじゃないですか?」

 「まあな。だが、白中には次のステージに行ってもらわないと困る。」

 「あの戦闘力よりも上ですか?」

 「違う。能力の使い方の問題だ。もはやSランクであることは揺るがない。しかし、能力の不安定さは任務に支障が出る。」

 「なるほど。能力を自分のものにするということですか。」

 「そういうことだ。さて、敵も一掃できたがどうする?このまま暴走状態で終わりか?」


 残り少なくなったタイル達が決死の突撃で、広瀬マルタに近寄らせまいとしている。


 「「「突撃ー!!!」」」

 「・・・。」


 物言わぬ暴走状態の白中は、タイル達を無慈悲に破壊しつくす。

 そして、最後のタイルを手で握りつぶした瞬間。広瀬マルタの背筋が凍り付いた。



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