第32話
第32話 関西地区の原石
「この度はわざわざ関西地区の特殊能力調査部隊に足を運んでいただいて、誠に感謝する。私はここの課長の矢切という。以後よろしく頼む。」
「なんや?わいらは保護対象じゃなかったんか?とうとう捕まるつう話かいな。」
「全然人の話を聞かないこの人は、誰?わたし嫌い。」
「よう言うやないか!あんたも相当目つき悪いで?というかどうしたんやその前髪。」
「お互い面識はないと思う。それは、個別に保護対象として我々と接していたからな。しかし、今回、君たちに依頼したいのは、我々関西地区の特殊能力調査部隊に力を貸してもらいたいと考えたからだ。」
「わいがか?そりゃあ、BRAINとしての能力を使いたいっちゅう話かいな?それとも本当に特殊能力調査部隊に入れっちゅう話かいな?」
「どちらもだ。特殊能力調査部隊に入ってもらい、BRAINとしての能力を使って、この関西地区の秩序を守ってもらいたい。」
「・・・。わたしは構わない。でも、そこまで強い能力じゃない。」
「わいもそうやで?」
「君たちの能力は、Cランク。発現してからかなり時間もたっている。その能力を使いこなしているのではないか?」
「使いこなすつうてもやな。わいの能力は、物の大きさを変える能力やで?しかも小さくは出来ん。」
そういうこてこての関西弁の男は、大門スグル。BRAINの能力は『巨大化』。
物体の大きさを大きくすることができる能力でその範囲は、もともとの大きさを10倍にする能力であり、生物に対しては適用できないという条件があり、さらには大きくできるものにも制限がある。
「わたしは、鳥を操ることができるってだけ。」
そういう前髪が長く、その隙間から鋭い目つきをした女は、鳥飼アヤセ。BRAINの能力は『鳥使い(バード)』。
鳥類であれば、自在に操ることができる。またその鳥の視覚情報を共有することも可能。
「君たちの能力は、使い方次第では相当の能力になると思っている。さらには、我々には教えていない使い方もあるのであろう?Cランクという能力では収まりきらないと判断し、特殊能力調査部隊に入植してもらいたいという結論に至った。」
「あんまり厄介ごとに巻き込まれたくないんやけどな。」
「正直、命に係わる仕事であることは間違いない。しかし、君たちの存在が脅かされるのも時間の問題であると判断した。それは、FQ3の脱兎の出現だ。」
「脱兎?」
「FQ3ってなんや?」
「簡単にいうとBRAIN狩りの組織だ。BRAINを殺しBRAINの存在しない世界を作ることを目的にしている武装組織。それがFQ3。通称ファッキューサンだ。」
「なんて名前やねん!」
「その組織に私たちが狙われるっていうこと?」
「あぁ。今回の標的は君たちではなかったが、Aランクの能力者が2人脱兎によって殺された。殺された二人だが、相当に卓越した能力者だったはずだが、残念なことに我々では守ることができなかった。しかも、能力者の脳が奪われ、悪用される可能性がある。東京ではFQ3による、ランクの低い能力者の一方的虐殺が起きている状態と聞く。ゆえに、君たちのような能力者を積極的に特殊能力調査部隊に引き入れることで、力を増強し、FQ3からの脅威から低ランクのBRAINを守りたいと考えている。」
「なるほどなぁ。わいもこの嬢ちゃん同様にかまへんで。具体的にどないな仕事かわからんけどもここにいる方が命の危険からは避けられるわけやからな。」
「わたしは、さっき言った通り入職するのは構わない。」
「それは、大いに助かる。早急に手続きを踏んで、二人を迎え入れる準備をする。」
―――――
関西地区の特殊能力調査部隊の病院では、武藤がベッドで横になっていた。
そこでは、広瀬マルタがリンゴの皮をむいていた。
「まだ痺れはとれませんか?」
「あぁ。少しな。」
「FQ3は、人類至上主義を抱えているのにBRAINを利用するなんて、なんとも自己都合な組織ですね。」
「あぁ。しかし、ただの人間ではBRAINがなかなかできないのであろう。脱兎のような能力者が複数いるのは明確だ。我々関西地区の特殊能力調査部隊も力を付けなければ、いつかは逆転されてしまう。それでなくても、BRAINは普通の人間と見分けがつかない。テロ行為ではすべて後手に回ってしまう。」
「索敵に特化した能力があると便利なのですがね。」
「それもあるな。しかし、そういった能力は自覚しづらい部分があるからな。」
「そういえば今回、東京と合同の試験があると矢切課長が言っていました。」
「それなら私も聞いた。マルタと新たに雇い入れた二人の実力を見極めたいということだろう。」
「僕もこの試験で有用性を発揮しなければ、先輩としての威厳が無くなってしまいます。」
「マルタは十分に強い。自信を持て。」
「ありがとうございます。しかし、相手の能力が秘匿された今回の試験では、僕のように派手な能力はすぐに相手に能力を知られてしまいますから。」
「知られたとしても対処できないのが、お前の能力だろ。私もあの物量を相手にした場合、対処できるかはわからない。」
「武藤さんなら能力を発動する前に一瞬で終わりですよ。」
「まぁそうかもな。」
「はい。リンゴです。」
「ありがとう。」
リンゴを手に取る手が未だに振るえている武藤。
脱兎の能力の後遺症がまだ続いていることを明かしている。
脱兎はその自身の能力で、自分よりも格上の相手を何人も手にかけている。さらには、FQ3の資金力を使い、特注の装備をすることで、身を固め防御力も高めている。
これだけの情報が手に入っただけでも今回の戦闘は、大きな成果を出したと言える。FQ3の幹部との闘いやその他の情報がだんだんと明らかになっている。
―――――
「もしもし~。無名?こっちは順調~。」
「そうですか。敵の戦力の減退は急務なので、できればもう一人くらい幹部を差し向けてもよかったのですが、一人で大丈夫ですか?」
「たぶん大丈夫だと思う~。場を荒らすだけなら得意だし~。情報もある程度聞き出せた~。」
「ほう。さすがですね。」
「脱兎が、Sランクの閃光を抑えてくれたから、あとはうちがやる~。」
「どうでしょう。一人くらいは殺せそうでしょうか?」
「うーん。能力の分からない人が1人いる~。あと東京の能力者は全員不明~。そこが気がかり~。」
「東京のほうは、私でどうにか情報を集めてみます。今回のことが終わったら、できれば、諜報の方へ回っていただきたいのですがいいですか?」
「わかった~。戦闘より諜報の方が楽だし得意~。」
「では、お願いします。あと、東京に戻ってきたら紹介したい人たちが幾人かいますので、よろしくお願いします。」
「わかった~。」
「では、ご武運を。」
黒のペストマスクと黒色のコートを身にまとった人物は、すっと闇に消えた。




