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BRAINS  作者: 愛猫私


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第30話

第30話 採用



 ウイとユイは、特殊能力調査部隊本部の病院のベッドで寝ている。

 大量の血を失ったことと、自身の能力の限界を超えたことによる身体へのダメージは相当のものだった。

 誰がどう見てもBランクのBRAINの域ではないが、その戦闘を見ていたものは、いない。

 当事者たちも未だ眠ったままだった。

 

 「ウイちゃんとユイちゃんは大丈夫ですかね?」

 「致命傷は避けてあったって医者も言ってたし、時期に目が覚めるんじゃないか?」

 「特殊能力調査部隊本部に入る前に特殊能力調査部隊本部の病院に入るなんて縁起が悪いですね。」

 「言うてやるなよ。黒木課長がいうにFQ3のやつを二人倒したんだろ?すげぇじゃん。」

 「でも、厳しいこと言うようですけど、相手は非能力者ですよ?ここまでボロボロになってちゃ採用されるかどうか。」

 「でも、あの双子の力は、うちらに必要なんだろ?」

 「そうですが・・・。」


 そこに黒木がやってきた。

 

 「お前たちに話がある。」

 「なんですか?」

 「この度、東雲姉妹を正式に特殊能力調査部隊本部に入れることを決めた。だが、それにあたって、白中も含めた合同試験を行うことになった。」

 「は?俺も?」

 「要するに能力の見極めだ。東雲姉妹の能力はBランクだが、いまいち能力が分からないので判定できていない。そこで、関西の特殊能力調査部隊本部と合同で試験をすることになった。」

 「関西と言えば、SランクBRAINの『閃光』たちがいるところですね?」

 「あぁ。だが、彼女は今回の試験に参加はしない。別のBRAINの候補生が試験に臨む。」

 「その候補生と模擬戦でもするんですか?」

 「あぁ。その通り。それによって、BRAINのランクの再判定を行う。もちろん日程は東雲姉妹が完全に回復した状態で行うがな。」

 「・・・俺は能力をうまく使えないんですけど、参加するんすか?」

 「とにかく克服しろ。でなければ一方的にやられるだけだぞ。」

 「・・・どこでも寝れるようにするか。」

 「不眠症なのにですか?」

 「まじで不便すぎるだろ、俺の能力。」

 「まぁ。時間はある。準備しておけ。」

 

―――――


 白中は、自分の能力『夢遊病(スリープウォーカー)』の発動条件に苦労していた。眠らなければ発動しないこと、睡魔に苛まされているが、自分で眠ることができない。突発的に寝てしまう。など不具合を上げればきりがない。

 眠ることで、常人離れした肉体強化を得ることができ、多少の傷もすぐに癒える。

 しかし、BRAINを自動で排除してしまうところも苦慮すべき点だ。今のところ何も制御できていない。

 日頃、牢屋のような部屋で監禁状態で、寝ているが、寝ている間、牢屋のなかで暴れている。

 寝ているということもあり、自分の中では意識がない。

 そこで、黒木に言われた「夢を操る能力」。明晰夢というものに挑戦していた。

 

 明晰夢は、夢であることを自覚することであり、夢の中での出来事をコントロールすることができる。明晰夢には、観察型と完全操作型が存在する。

 観察型は、夢であることを認識していても、展開はほとんど操作できない。現実感や映像は鮮明であるが、自分の意志で行動や場面を操作できない。

 その逆に、完全操作型は、夢の出来事を自在に操ることができる。かなり鮮明で、現実に近い感覚を伴い、自由度の高い想像ができるのが特徴である。

 

 白中は、明晰夢について、調べていた。

 自分がこの状態になれば、能力の発動さえしてしまえば、うまくコントロールできるのではないかと考えていた。

 それには、発動条件のクリアが必要だが、それもまた解決策を見出していた。

 毎日毎日、寝るときに短時間で寝る方法の5ステップを実施していた。これは、アメリカ海軍の特殊部隊などで開発された技術で、非常に効率的に短時間で眠りに入る方法だった。

 これを出来なくても何回も何回も試みていた。

 

―――――


 そんなある夜のことだった。

 いつもなら牢屋のような部屋を暴れまわる音が聞こえているはずだったが、全く音がしない。

 黒木は白中が寝るまでいつも部屋の前に座っていたが、今日はずっと物静かで白中が寝たかどうかが分からない。


 「まだ、寝ていないのか。」

 

 そう思い、鉄の扉に備わっている、小さな窓から部屋の中を覗き込んだ。

 そこには、白い靄を纏いつつも棒立ちをしている白中が立っていた。


 「・・・どうなっている。」


 いつもなら暴れていてもおかしくない。

 しかし、微動だにせずずっと天井を眺めている。

 そして。はっきりと聞こえた。


 「あの天井のシミ、顔に見えるなぁ。」


 黒木は驚愕した。

 寝ているはずの白中が意識を持っていること、そして、寝ているはずにも関わらず周りの状況を捉えていることに。

 

 恐る恐る鉄の扉を開ける黒木。

 

 「白中。大丈夫か?」

 「誰っすか?・・・くっそ。まだぼやけてんな。」

 「黒木だ。今はどっちの状態だ?」

 「黒木課長っすか。今は寝てます。うーん、半分寝てます。」

 「コントロールできているのか?」

 「いや、全部じゃないです。ただ頭がさえているだけって感じです。寝てても。」

 「では、この会話は寝言か?」

 「たぶん。起きたら覚えていない可能性が高いっすね。」

 「しかし、よくやった。私の能力を使わずしても、コントロールできるようになってよかった。」

 「いや、まだです。瞬きをすると、自分がいる場所が変わっちゃうんですよ。今いるのはいつもの部屋ですけど、何分かしたら違う映像に切り替わっちゃうというか。」

 「訓練あるのみだ。持続できるように頑張ってくれ。能力の制御は自分で編み出すしかほかない。」

 「あ~。そうっすね。あれ?黒木課長?どこっすか?うーん。またこの白い部屋か。」


 白中は、現実から夢の世界に引き戻されてしまったようだ。

 その様子を見た黒木は、また鉄の扉を閉め、椅子に座った。

 そして、また部屋の中を暴れる音がし始めた。


―――――


 「久しぶりによく寝た~。」

 「元気そうですね。白中さん。」

 「日頃の特訓の成果が出てきた感じかも。」

 「特訓ですか?」

 「入眠と夢を操作する訓練だよ。」

 「そんなことしてたんですか!」

 「黒木課長に言われてね。でも、自分の意志で眠れるように成りつつある気がする。」

 「それはすごいじゃないですか!」

 「あんまりみんなに迷惑かけられないし、自分も合同試験の対象だからやれることはやっておかないと、東雲姉妹との模擬戦みたいになっちゃうとね・・・。」

 「自分の意志で操作できるようになることが第一歩ですね!」

 「そういうことだ。」

 「合同試験もありますし、白中さんの能力が自由に使えるようにしないとやめさせられちゃうかもしれませんしね!」

 「ええ?使えないとやめさせられちゃうの!?」

 「冗談です!」

 「おい!」

 「でも、ウイちゃんとユイちゃんの先輩として、しっかりと能力を開花してもらわないと面子がたたないんじゃないですか?」

 「それは確かにそうだな。今回も二人は頑張ってたみたいだし。」

 「期待していますよ!白中さん!」

 「あぁ。任せてくれ。」



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