第20話
第20話 東雲姉妹の能力
「ハジメ、映像を見せてくれ。」
「はい。」
「それにしてもユイちゃんもウイちゃんも相当身体能力が高いですね。」
緑川がモニターを覗き込みながら言った。
「そうだな。能力も相まってBランクではないな。ランクの格上げも視野に入れるべきだ。」
「ユメトお兄ちゃんは・・・。」
「タコ殴りね・・・。」
「過大評価しすぎていたか・・・。」
そこに青木と白中とウイとユイが現れた。
「お疲れ様です!お二人が目を覚ましました。」
「連れてきましたよ。」
「今日はありがとうございました!」
「不甲斐ない結果。」
さきほどまで激闘を繰り広げていた二人はたった数時間ほどで驚くほど回復していた。
「もう体は大丈夫なのか?」
「傷はまだ治ってないですし節々が痛いですけど、体力は寝たので大丈夫です!」
「私はそもそも被弾していない。」
黒木が「そうか」と胸を撫でおろしながら、続けて言った。
「白中、ウイ、ユイ。これから反省会だ。自分たちの模擬戦の様子を見て改善点を示せ。」
「はい!」
皆が食い入るようにモニターに映し出された模擬戦の様子を見ている。
「・・・前半タコ殴り。後半覚えてない。以上。」
「白中、ふざけているのか?」
「いや、心の読めるBRAIN相手に善戦した方だと思いますよ?」
「まず、白中はそもそもの戦闘力が低すぎる。これは私との手合わせをさらに強化すべきだな。」
「ぜ、絶望すぎる・・・。」
「ウイとユイはどう思う?」
「うーん。最初は勝てそうだと思っていましたけど、白中さんの能力が発動してからは全く歯が立たなかったです。少しの隙も作れなかった。」
「そもそも私は何もしていない。」
「そうだな。しかし、最後のはどうやったんだ?どうやって白中を起こした?」
「あれは二人で協力しないとできないうちらの能力の一部です!とっておきですね!」
「自分たちの思考を相手に押し付ける能力。」
「それで、白中さんを強制的に起こしたんですよ!」
それを聞いていた青木が目を丸くした。
「それって黒木課長の能力と同じ精神に影響を及ぼす能力じゃないですか!」
「そうだな。対象は1人が限界というのは、私と同じ。だが、条件も緩い。なかなか素晴らしい能力だ。」
「えへへ。」
ユイは嬉しそうに照れている。
しかし、ウイが「でも」と付け加えると言った。
「相当の集中力が必要。あと明確な隙がないと無理。さらには、簡単な指示しか出せない。欠点だらけ。おまけに使ったら動けなくなる。」
「姉妹間の無言での意思疎通と相手の心を読むことができ、さらには、行動を強制する能力。AランクBRAINといっても過言ではないぞ?」
「そこまで評価されるとさすがに嬉しい。」
「正直なところ、東雲姉妹には特殊能力者調査部隊本部へ入ってもらいたいと思っている。今日はもう目覚めないと思っていたが、早く目覚めたこともある、我々の仕事を少し説明しよう。青木よろしく頼む。」
「はい!わかりました!ウイちゃんとユイちゃんがもし特殊能力者調査部隊本部に入った場合には、特に事件、事故の現場調査を行ってもらいたいと思っています。私や白中さんと同じですね!二人は、相手の心を読む力があるので、事件解決により早くたどり着くことができると思っています!あとは、捉えた標的の取り調べですね。これも心を読む能力がかなりの効果を発揮します。当たり前ですが、二人の前では嘘は意味がありませんので!あと報告書の作成などは、まぁ白中さんでもできるので、二人には問題なくできると思います。」
「おいおい。俺の評価低くない?」
「白中。正直、お前の能力は強力すぎる。制御しなければ、たちまち血の海だ。私ももちろん今までと同様に同行するつもりでいるが、相手が複数人の場合、私か東雲姉妹の監視下に置かなければ、取り返しのつかないことになる。」
「じゃあ、わたしたちは現場調査と取り調べ、あと白中さんの制御がお仕事になるってことですか?」
「そのつもりだ。だが、まだ卒業まで時間がある。とりあえずは、アルバイトという形で雇い入れることになるだろうな。」
ウイとユイは顔を見合わせた。
特殊能力者調査部隊本部に入ることを目標にしていた二人は、即戦力としてのお墨付きをもらったことで笑顔を浮かべている。
「ハジメ、ふたりに連絡用のスマホを渡してやれ。」
「はい。これです。一応、お二人はBRAINとしての保護対象者です。なので、常に居場所が分かるようにしてあるのと、身の危険を感じるようなことがあった場合は、特殊能力者調査部隊本部に連絡がいくようになっています。」
赤坂はふたりにスマホを渡した。
「とにかく、今日は青木の指示のもと、報告書の作成や最近の事件の下調べなどを行ってもらう。」
「はい!わかりました!」
「・・・了解。」
「白中は私についてこい。」
「え?・・・」
「訓練だ。」
白中は項垂れた。
―――――
「ユイちゃんここが違っていますよ!」
「え、えーっと・・・。」
「ウイちゃんも同じところが間違っていますね。ここは緑川さんの名前を書くところです。」
「なぜこんなにも名前を書くところが多い・・・。」
「うちの報告書は、特殊なんですよ。とにかく、黒木課長と緑川さんは手が空いていないので、我々で勝手に名前を書いて提出してるんです。だから、間違えないようにしないと、注意をうけるのは、我々じゃなくて黒木課長と緑川さんになっちゃうんですよ!」
「じゃあこの報告書は読まれないんですか?」
「読まれますよ?『異能力者東京収容所』に直接。」
「それってかなり重要。」
「そうですねぇ。我々の報告によって、BRAINの監視体制が決まったりするので、間違えられません。最初は私が付きっきりで見ていますので、思う存分、報告しちゃってください!」
「でもこれって、白中さんの報告書ですよね?」
「はい!そうです!白中さんは特殊能力者調査部隊本部に配属されていますけど、一応『異能力者東京収容所』の監視対象なんですよ。残念ながら自由の身ではないのです。」
「青木さんが書いた報告書をみると、10時にブラックコーヒーを飲んでいるとか、観察日記的な報告ばかりなんですが・・・。」
「白中さんのBRAINとしての能力は、おいそれとは使えないので、ほかのことを書いて行数を増やしています!」
「そんなことでいいんですか!?」
「いやぁ。これが大変なんですよ。白中さんは全然寝ないので、観察しているこっちの体力が先に限界を迎えちゃうので、手伝ってくれる二人が増えて助かりましたよ!」
「・・・まさかの報告書だけで24時間体制。」
「その通りです!前よりももっと情報量のいい報告書が提出できそうです!もちろん白中さんの報告書だけじゃないですからね?BRAINだったりFQ3だったりいろいろとありますから。」
「早く現場に行きたいなぁ。」
「・・・同じく。」
デスクワークから目を背ける東雲姉妹。
今まで青木一人でやっていたと考えると、青木も常人ではないと感じた二人。
そして、そこまでBRAINに対しての熱量を持っている青木をBRAINオタクと再認識するのであった。
―――――
訓練場にて、黒木と白中が話していた。
「戦って東雲姉妹の能力はどうだった。」
「いやぁ。マジで強いっす。歯が立たないレベルで何にもできなかったっすね。」
「あの身体能力になってもらわなければ困る。」
「相手の心読むのは無理っすよ?」
「では、これは?」
すると、いきなり黒木が左のジャブを繰り出し、白中の目の前で手を開いた。
視界が限定された状態で、右のストレートを視覚外から打ち込む。
白中は、反射的に黒木の左手を払いのけ、右ストレートを手で受け止めた。
「私がやろうとしたことを理解しての動きだったか?」
「いや、今のはとっさに。」
「東雲姉妹の能力は、あくまでも相手の心が読めているからこその後出しだ。今のように反射で対応できれば、何も問題ない。今回の模擬戦で白中は二人の能力を知ったうえで戦う前から臆していた。それが何もできなかった要因だ。」
「うーん。こっちが攻撃するときにどうしても頭で考えちゃうのはどうしたいいっすか?」
「簡単だ。相手が行動するよりも早く行動しろ。」
「脳筋すぎる・・・。言うのは簡単っすけど、実際には相手も攻撃しているで・・・。」
「パワーにはパワー。スピードにはスピード。能力を開放しているときにはできていることだ。肉体のポテンシャルは高いはず。理論上、お前の肉体は、寝ていようがいまいが関係なく自分の体なのだぞ?」
「それを引き出せばうまく戦えると?」
「そういうことだ。私が思うに、寝ているときと起きているときの境界が分かれば、起きているときにも身体能力を向上させられるのではないか?」
「寝てるときは真っ暗っすからね。なんとも。」
「夢は見ないのか?」
「うーん。忘れちゃいますね。夢ってそういうものでしょう?」
「あぁ。しかし、明晰夢というものもある。夢の中で、自由自在に夢を扱えるようになることだ。」
「夢を操るかぁ。寝る前に意識してみますよ。」
「あぁ。最初はそれでいい。では、訓練をするぞ。」
「・・・はい。」
白中と黒木の訓練は、朝方まで続いた。




