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BRAINS  作者: 愛猫私
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第2話

第2話 夢遊病(スリープウォーカー)


 護送車の中に、完全に拘束された状態で、身動きできない白中と、長い足を組んで一緒に乗っている黒木がいた。

 

 「白中、昼間はちゃんと寝たのか?」

 「言われた通り寝ましたよ、と言いたいところっすけど寝れないんすよ。」

 「その不眠症はどうにかならないのか?」

 「そんなこと言われてもっすね。」

 「お前の能力の発動条件は、寝ていることだろ。」

 「そんなに簡単に寝れないっすよ。だから、いつも限界まで起きてるんじゃないっすか。」

 「それもまたお前の能力の不具合だな。人間は3日寝なければ、幻覚や妄想、パニック、極端な思考低下、自分でも気が付かない睡眠の頻発などが起こる。それこそお前の能力の暴走の引き金になりかねん。」

 「えーっと、んじゃあ2日目ってところっすね。」

 「眠気はどれくらいだ?」

 「いや~。めっちゃ眠いっす。」

 「『夢遊病(スリープウォーカー)』の能力は、寝ているときにだけ超人的な身体能力を得るところにある。それが管理できれば、調査部隊の活動の幅が大幅に広がる。理解しているか?」

 「いやいや。まだ、配属されて一日も経ってないんすから、そんなにモチベないですよ。」

 「自分の能力の重要性を理解していないようだな。BRAINと言ってもただの人間だ。ナイフで急所を突かれれば、出血多量で死ぬ。もちろん銃で撃たれれば、生きてはいけないだろう。しかし、お前のようなSランクはそれを凌駕する身体能力を有している。これがどういうことか分かるか?」

 「まったくわかりません。」

 「はぁ。要するにお前より弱い奴は制圧することが出来るということだ。調査部隊とは言え、BRAINの制圧も仕事のうちだ。お前のような能力者がいなければ、一方的にやられる場合がある。」

 「ボディガード的な位置っすか?」

 「そうだ。お前は万年睡眠不足だから思考が回らんだろ?」

 「いや。まぁ。そうっすね。」

 「だから、忠実な犬となれ。眠れと言ったら寝ろ。起きろと言ったら起きろ。それだけでいい。」

 「・・・。無茶苦茶っすね。」

 「まぁ。大丈夫だ。起こすことに関しては、心配いらない。」

 「確かに一度寝たら全然起きられないんで、そこはありがたいっすね。起こす方法があるのか知りませんけど。」

 「そんなことは、べつに知らなくていい。」

 

 黒木は、白中を起こす方法について、お茶を濁した。

 護送車は、真夜中の道路を走っていく。

 ガタガタと一定のリズムは、運転していない者からしたら心地よいものである。

 黒木は、話すのを止めない。それは白中を眠らせないためである。

 とにかく、東京の特殊能力者調査部隊本部に白中を運ばなければならない。その道中に白中の能力が発動してしまうことが憚られた。

 拘束をしているとはいえ、肉体強化を得た白中が何をするか分からない。しかも、睡眠状態では、こちらの話など理解できない。

 ゆえに、特殊能力者調査部隊本部まではどうしても寝させないようにするほかなかった。

 

 「きついっすねぇ。」

 「睡魔か?」

 「はい。そこのジュースもらっていいっすか?」


 白中が言ったものは、缶にストローが刺さっている飲み物だった。

 

 「カフェインか。」

 「気休めっすけどね。寝るときは寝ちゃうんで。」

 「本部にたどり着くまでは、耐えろ。」

 「ふわ~あ。なんとか踏ん張りますよ。」

 

 大きなあくびをした白中は、チューチューと缶に入った飲み物を飲んでいた。

 

 「本部に着いたとしても、今日はやることはない。明日、私の部署のメンバーを紹介する。」

 「わかったっす。じゃあ、本部に着いたら寝てもいいんすよね?」

 「あぁ。お前専用の部屋は用意してある。」

 「シャワー浴びたいっすね。」

 「私の監視下ならな。」

 「え?」

 「その時に寝てしまったらどうする。拘束している物がないんだぞ?」

 「いやいや。そこまで黒木さんに監視されてシャワー浴びるの結構堪えますよ。」

 「しょうがないだろ。」

 「いくら高校生のときからの付き合いだからって俺はもう大人なんっすよ?」

 「お前の能力からして、目を放すことはできない。」

 「・・・。しょうがないっすね。」

 

―――――

 

 護送車は、東京特殊能力調査部隊本部についた。

 そして、白中は、拘束具を外された。

 BRAINである白中を今取り押さえられるのは、黒木しかいない。

 ふらふらとした歩き方の白中だが、なんとか眠気に耐えているようだった。

 二人は、自動ドアをくぐり中へ入っていた。

 

 特殊能力調査部隊本部と言っても、その部署だけがこの建物に入っているわけではない。

 他にもBRAINに対しての対策部隊が常駐している。

 黒木と白中は、エレベーターに乗り最下層へ向かった。

 

 「まさかとは思うんすけど、ここでも閉じ込められるんすか?」

 「もちろんだ。」

 「そうっすよね。」

 「お前に自由はない。あくまでも特殊能力調査部隊の犬であり、私の犬でもある。」

 「へいへい。」

 「ここがお前の自室だ。シャワーを浴びるなら早くしろ。」

 

 頑丈な扉を前に黒木が言った。

 明らかに牢獄であり、窓一つない部屋だった。辛うじて、トイレやシャワールームは完備されている。

 しかし、どれも頑丈そうな作りで、並大抵の力で破壊することはできないようになっていた。

 

 「じゃあ、ちょっと失礼してシャワー浴びさせてもらいます。」

 「あぁ。私は扉の前にいる。」

 

 黒木は、頑丈な扉を閉めると自動的に鍵がかかった。

 そして、シャワーを浴びると言った白中は、自分しかいない部屋で上着を脱いだ。

 その時だった。

 

 「ガシャン!」

 

 ものすごい音とともに部屋の中で暴れる音が聞こえた。

 黒木は、扉越しに体育座りをして、事が収まるのを待っている。しかし、一向に収まる気配はない。

 黒木は、その部屋の中で暴れる物音を耳にしながらも、眠りについた。



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