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BRAINS  作者: 愛猫私


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第19話

第19話 二つ目の制御



 ウイは、白中の能力の解除方法にたどり着いていた。

 

 『ユイ。あの人を起こせば、戦いが終わる。』

 『あぁ、そう!この状況でよく言えるね!』

 『うちらも動けなくなるけど最終手段を使うとき。』

 『白中さんは思考停止してるけど、うまくいくと思う?』

 『わからない。やってみる価値はある。』


 ユイは、白中の猛攻で、制服が破け、切り傷だらけになっている。


―――――


 「黒木課長、もうやめませんか?能力ありであそこまで戦えている時点で十分二人は有能な人材です。」

 「そうだな。だが、あと一歩だ。彼女らもBRAINなんだぞ?この逆境を乗り越えてもらわなければ、正直ただの保護対象でしかない。」

 「厳しいですね・・・。」

 「あぁ。彼女らは若い。ゆえに余計な事故に巻き込まれては欲しくない。しかしながら、特殊能力者調査部隊本部に入ろうとしている。そうであるならば、自分の身は自分で守れるようになってもらわなければ、困る。」

 「でも、相手はSランクの白中さんですよ?さすがに力の差がありすぎます。」

 「それを見極めるのが今日という日だ。ユイが限界に達するまえにオーダーを出す。もう少し待て。」

 

―――――


 「黒木課長も無理させるなぁ。高校生相手にSランクBRAINぶつけるなんて。」

 「本人たちは、浮かれていたと思いますよ。これで、厳しさを知ったんじゃないですか?」


 板チョコを食べながらモニターをみる赤坂と緑川。

 

 「いやいや、制圧しろってオーダーだとしても抗ったら、結構本気で怪我するよ。」

 「それも承知の上なんじゃないですか?SランクBRAINと対峙したら殺し合いになる場合もあるんですから。もちろんBRAINだけじゃなくて、僕たちの仕事はいつも死と隣り合わせなんですから。」

 「黒木課長はそこまで織り込み済みってことなのかもね。」

 「そうだと思います。」


―――――


 『ユイ、何とかして隙を作って。』

 『無茶な!』

 『二人で集中しないとできない。』

 『わかったけど、もってあと数分だし、明確な隙が作れるかどうかわかんない。』

 『頑張って。』


 ウイは今、白中の精神世界に囚われて身動きが取れない。

 それをユイが守りながら、白中の猛攻を凌いでいる。ユイの反撃に全く微動だにしない白中は身体強化され、ダメージが皆無である。それに比べユイは、制服もボロボロ、肩で息をして、ぎりぎりで攻撃を避けるので精一杯だ。

 ユイも心が読めるが、睡眠状態の白中の心の中は空白であり、何を考えているか読めない。

 そこから繰り出されるトリッキーな攻撃は、容易にユイのガードを突破してくる。

 

 白中は、四つん這いの状態で、ユイに高速で近づき、前触れもなく跳躍、空中で二回、踏みつけるように蹴りを入れてくる。とっさに頭の上で腕をクロスさせガードするユイ。

 白中が背後に来た瞬間、回し蹴りをお見舞いする。しかし、空を切る右足。

 白中は、ユイの軸足を蹴り飛ばし、転倒させた。それも一瞬の出来事。受け身が取れず訓練場の硬い床に後頭部を強打したユイ。目の前がチカチカと明滅し、世界が歪む。


 『やばい・・・!』

 

 白中は、四つん這いの状態でユイに覆いかぶさると、顔の横を一発殴った。訓練場の床はメキメキと砕け、ユイの戦意を喪失させるためのパフォーマンスだとすぐにわかった。

 そして、振り返り、今度はウイの方に移動し始めた。

 ウイは何が起きているのか理解できていないが、ユイのテレパシーによって白中が近づいてきているのを把握していた。


 『お、お姉ちゃん。近づいてきてる。』

 『・・・。無理、何にもわかんない。』

 『私が何とかしなきゃ。』


 痺れた体を何とかして起こし、白中の背中に飛びつくユイ。渾身の力を振り絞ってのチョークスリーパー。しかし、白中の腕力によって容易に引きはがされてしまう。

 とにかく、ユイは技を乱発した。引きはがされた腕にしがみつき、腕ひしぎ十字固めを繰り出した。

 仰向けで相手の腕を自分の股に挟み、腰を上げて肘を極める代表的な技だが、ユイの身体能力あっての卓越した技だ。白中は、完璧に極まった関節技を外すために、ユイごと床に叩きつけようとする。

 ユイの体重を軽々と片手で持ち上げ振り回せるほどの腕力。それでも、ユイは放そうとしない。

 Sランクの腕の一本くらい持っていかなければと考えていた。

 

 しかし、その時はきた。

 ユイは訓練場の床に叩きつけられ、肺に入っていた空気が無理やり押し出され、動けなくなってしまった。


 「がはっ!」

 『ユイ!』

 『お姉ちゃん、私じゃ無理だ・・・。あと3メートル。』

 『そのまま指示して。』


 訓練場で横たわるユイが、標的を変えた白中の言動をテレパシーでウイに伝える。

 何も感じ取ることのできない状態でのウイの戦闘センスが冴えわたる。


 『技が決まったら、白中さんを起こす。』

『わかった。でももう来てる!まっすぐ。姿勢がものすごい低い。3,2,1』

 

 ユイのカウントダウンと同時にウイは、右足を振り上げた。

 予備動作もなく振り上げられた右足は、四つん這いの白中の顎を蹴り上げ、体を浮かした。

 白中も被弾しながら、制圧するために腕を伸ばす。


 『い、今!』

 

 ウイはユイの掛け声とともに、白中の腕を抱え込み、足を払い一本背負いをし訓練所の床に叩きつけた。そして、ウイとユイのふたりの能力が発動された。


 『『起きろ!!!』』


ウイとユイの『精神感応(テレパシー)』の能力のとっておき。

それが『押圧(プッシュ)』。ウイとユイの同調した思考で簡単なものであれば、相手の脳に直接押し付けることができ、行動させることができる。しかし、一日1回とさらにはものすごい精神エネルギーを消耗する代物で、まだまだ自分たちの能力に振り回されてしまっているのが難点である。

 

 「んあ?」


 白中が目覚めた。目の前には、大の字で横たわるウイとユイの姿。

 やってしまったという罪悪感が白中を襲う。

 恐る恐る、ウイとユイのもとへ近寄り。


 「大丈夫そ?」

 「何とかなりました・・・。」

 「今日はもう動けない。」


 青木や黒木も駆け寄り、模擬戦は終わった。

青木と白中は二人を担ぎ上げ、医務室に連れていくことにした。


―――――


 「白中さん。素面のときは、まだまだ弱いですね!」

 「いや、あの二人が強すぎるんだよ!割とやりあえてた方だと自分を褒めたいね。」

 「自惚れるな。能力が発動しなければ、お前の負けで終わっていた。」

 「あぁ。途中で寝ちゃって・・・。すいません。」

 「模擬戦中に寝るとか、豪胆すぎますよ!」

 「いやぁ。まじで眠くて・・・。疲れも相まって寝ちゃった。」

 「しかし、そのおかげで東雲姉妹にさらなる可能性があることが分かったな。素晴らしい人材だ。今日はさすがにもう動けないか。今日はここに泊めていかせよう。」

 

 ウイとユイはベッドで寝ている。

 肉体的疲労と精神的疲労で、泥のように眠っている。

 

 「青木と白中。二人を頼んだ。私は、緑川と赤坂と共に今日の模擬戦をもう一度検証しておく。二人が目を覚ましたら、呼べ。」

 「わかりました!」

 「俺も二人見たいに泥のように寝たい・・・。」



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