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BRAINS  作者: 愛猫私


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第18話

第18話 模擬戦という名の蹂躙



 まず、攻撃を仕掛けたのは、ユイであった。

 次に、攻撃を仕掛けたのは、ユイであった。

 さらに、攻撃を仕掛けたのは、ユイであった。


 追撃に追撃を重ね、白中は被弾し、さらに被弾。後退し、さらに後退。

 反撃という隙が、無いほどの猛攻。

 

 ユイは拳を固めず、掌底で確実に白中を圧倒する。威力がないからこその手数の多さ。

 ふいに来る強烈な蹴りをガードすることしかできない白中。


 『まじかよ!なんでこんなに的確に攻撃できんだよ!一撃が軽いだけが救いだ。黒木課長だったら死んでる・・・。』

 『大したことないかもね!お姉ちゃん!』

 『私が心を読んで、ユイに伝えてるからできる業。それを忘れない。』

 『はいはい。心を読むことに専念しているお姉ちゃんがいてできる業です。』

 『右から反撃来る。』


 ユイは体をそらすと、白中の右フックを華麗に避ける。

 

 「くそ。当たんねえ。」

 「心を読まれてるって思うと動きが鈍くなるよね!」

 「そうだな。攻撃もダメ。防御もダメ。どうするか・・・。」

 

―――――

 

青木が黒木に話しかける。

 

 「やっぱりあの二人強いですね。」

 「心を読める。さらにはテレパシーで的確に攻撃範囲を限定させる。まぁ強いな。」

 「白中さん勝てますかね?」

 「わからん。せめて一撃は当てたいところだな。」

 

―――――


 『にしても、この人体格のわりに異常にタフなんだけどなんなの?』

 『その出所だけわからない。』

 『なんか、攻撃の勢いが殺されてる感じがするんだけど。』

 『遠くから見てるけど、上体がすごく柔らかいのかも。攻撃が当たるときに少し上体をそらすだけで威力が分散している気がする。』

 『時間かかるなぁ。』

 『右上段蹴り来る。』

 『はいはい。』


 ユイは、頭を守るように腕でガードを展開する。

 しかし、白中は東雲姉妹の攻略に一歩近づいた。


 『違う!ええっと・・・。上からの蹴り!』

 『はぁ?なにそれ!』


 白中は、蹴りの軸足を半回転させ、踏み込み蹴りの軌道を変え、横から薙ぎ払う蹴りではなく、上から下へと振り下ろす蹴りへと瞬時に変えた。

 

 「なるほど・・・。」

 

 バシンと鞭で打たれるような乾いた音が訓練場に響いた。


 「痛っ!」

 

 今の東雲姉妹の能力は、姉のウイが白中の心を読み、それをテレパシーで言語化してユイに伝えている。だから言語化の難しい、不意な挙動は説明が間に合わない。トリッキーな動きに弱いのだ。

 

 『お姉ちゃん!何今の!』

 『わかるんだけど、言葉にするのが難しい。けど、二度目はない。今のを『特殊な蹴り』と呼ぶ。』

 『わかった。』


 白中は、考えた。

 テレパシーでイメージを伝えるには、言語化しかない。それを逆手にとり、言葉で伝えることが難しい動きで攻撃すれば、翻弄できると。しかし、何といっても白中は、素人だ。今のブラジリアンキックがせいぜい出せる唯一の一撃だった。

 

 『わかったところで・・・。』

 『相手は手詰まり状態みたい。』

 『さっきのがとっておきだってことね!』

 そして、再び始まるユイの猛攻。

 白中の顔面をとらえる掌底で、白中は鼻血を出している。

 口の中も切っており、明らかにダメージが蓄積している。

 頭の揺れ、さらには睡魔によって思考がまとまらない。ふと、白中は思った。


 『気絶と睡眠の違いはなんだ?』

 『何考えてんの?この人。』

 『お姉ちゃん!いいから倒しきるよ!』

 『上段の回し蹴りは避けられるから、そのまま体を回転させて裏拳で顎。』

 『わかった!』

 

 ウイの言った通りになった。

 ユイの裏拳が白中の顎にクリーンヒットした。そして、白中は、気絶した。

 

 すると、ウイに異変が起きた。

 わなわなと体が硬直し、体が震えている。

 白中は、上段の回し蹴りを避けた瞬間、眠ってしまったのである。心を読んでいたウイは、急にブラックアウトした白中の思考に引き込まれてしまった。


 ただただ立ちすくむウイ。目の前は真っ暗な状態。何が起きたのか理解が及ばない。

 閉鎖された真っ黒の空間に一人取り残されてしまった恐怖に体が硬直して動けない。しかし、ユイの声だけが聞こえる。

 

 『お姉ちゃん!どうしたの!?』

 『わからない。何も見えない。』


―――――


 そのとき、訓練場に大声が響き渡った。

 

 「オーダー1。東雲姉妹を制圧しろ!!!!」


 ユイはビクッと肩を上げ、声の方へ向いた。そこには黒木が白中へ命令を出していた。

 青木は、「まだやるのか?」という顔をして驚愕していた。


 『お姉ちゃん!多分白中さんの能力が発動してる!そこから出て!』

 『無理。何もない。出られない。』

 『うち一人でやるしかないか・・・。』

 『やばかったら最終手段を使う。』

 『いや、まじでやばそう・・・。』


 ユイは、白中をみてそういった。

 白い靄を出しながら、倒れていた体を起こし、さらには、四足歩行の構え。気味が悪い。

 ユイもウイ同様に、心を読もうとしたが、何も感じることができない。

 ウイは、白中の深層心理に入り込みすぎた結果、白中の心の中に閉じ込められてしまった。

 これでは、お得意の連携もあったものではない。

 

 ユイは、トリッキーな動きに翻弄されつつも、なんとか攻撃を受け流している。

 さきほどまでボロボロにされていた白中の戦闘力は、格段に上がっており、防戦一方だ。

 しかも、一撃が尋常ではないほど重い。細い体から繰り出される攻撃が一撃必殺であり、まともに食らえば動けなくなる。

 

 心を読めなくても体術を駆使し、致命傷をさけるユイ。

 とにかく近寄らせないために、手を絡め、腕を絡め、攻撃の範囲を狭め、背中を向け押し出し距離をとる。

 吹き飛んだ白中は、弾丸のように飛んでくる。

 体当たりでもされたら、一瞬で決着が着いてしまう。それを手で押しのけ軌道を変える。

 そして、驚愕する。さきほどまでの、人間の質感とはまったく別物だということを。

 身体強化された白中の体は、硬く。拳を打ち付ければ、こちらの拳が砕けてしまうのが容易に想像できた。

 肩で息を吸うユイ。微動だにせず、動けないウイ。

 

 『お姉ちゃん。もう限界かも。』

 『もう少し待って。今考えている。』


 ウイは、囚われていた状態から思考を巡らせて考えていた。

 

 「『夢遊病(スリープウォーカー)』・・・。眠い・・・。もしかすると。」

 

 ウイは白中の能力の解除方法にたどり着いた。



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