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BRAINS  作者: 愛猫私


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第17話

第17話 白中の素面と危険な姉妹



 土曜日の早朝、ウイとユイの二人は、特殊能力者調査部隊本部の入り口にいた。


 「約束の時間より少し早く着いたね。」

 『一応、礼儀。』

 「あのさ、お姉ちゃんが喋らないと私一人、独り言みたいでいやなんだけど。」

 『沈黙は金。』

 「なんか使い方違う気がするんだけど。」

 

 二人が入り口で軽口をたたいているときに快活な声が聞こえた。


 「ウイちゃん!ユイちゃん!お久しぶりです!」

 「青木さん!こんにちは!」

 「・・・こんにちは。」


 ユイは、青木に手を振りその快活な性格に引けを取らない挨拶をした。

 ウイは、もはや聞こえるかどうかわからないほどの小さな声で反応した。

 

 「二人ともよく来てくれました!今日は、いろいろとあると思いますけど、今後の二人を迎え入れるための準備の一環だと思って頑張ってくださいね!」

 「はい!今日は模擬戦だと聞いてきました。これを突破できれば、特殊能力者調査部隊本部に入社できるんですよね?」

 「え?そ、それは・・・。私が決めることじゃないので何とも言えないです・・・。」


 青木はユイの前のめりな姿勢から目をそらした。

 ウイは青木の言動にジト目で対応する。

 

 「とにかく!特殊能力者調査部隊本部でみんなが待っているので、案内しますのでついてきてください!」

 

 青木はウイとユイを引き連れて、かび臭い特殊能力者調査部隊本部へ案内した。

 その移動中のエレベーターの中で、ユイが青木に聞いた。


 「今日模擬戦する相手はどんな方なんですか?」

 「前もって聞いちゃいますか?」

 「聞いても聞かなくても相手の心が読める私たちならBRAINかどうかわかるので、どう対処するかなんとなくできますけど、先に聞いておきたいなって。」

 「いいですよ~!これがなんと、SランクBRAINの方なのです!」

 「・・・!」


 ウイが、目を見開き反応した。

 ユイは、「やっぱりそうだ」という感じで受け入れている。


 当たり前のことだ。特殊能力者調査部隊本部に所属する以上、BRAINとの対戦は回避することはできない。現場に出るとなれば、驚異的な能力をもつBRAINと対峙することになる。そして、その最上位がSランクのBRAINである。

 ウイとユイは、Bランク。自分よりも格上の相手にどれほど自分たちが通用するか試すチャンスは、ここでの訓練くらいしかない。経験値を溜めるためには、この場を借りて自分たちの有用性を発揮しなければ、特殊能力者調査部隊本部に入ることは、勉学に励もうが到底できないと感じていた。


 「へ~。どんな能力なんですか?うちらの能力はもうその方に伝えてあるんですよね?」

 「そうですね!確かにウイちゃんとユイちゃんの能力は伝えてあるので、フェアではないですね。今回模擬戦する白中さんは『夢遊病(スリープウォーカー)』です。」

 「『夢遊病(スリープウォーカー)』???」

 「詳しくは説明できません。能力の解明もあまり進んでいませんので。とにかくSランクということなので、身体強化はもちろんあります。殴られたりしたら、ただの怪我じゃすまないかもしれませんよ?」

 「それなら大丈夫ですよ?たぶん当たらないので!」

 『・・・傲慢は危険。』

 「とにかく会ってみればわかりますよ。情報収集も二人にやってもらいたいことなので、能力がどいうものか判断するのも実践で役に立つと思いますので!だけど残念なことに、その方には能力を使用してもらわないように黒木課長が判断しました。」

 「何でですか!?」

 「えーっと。あんまり制御できないんですよ。実のところ、意識がないというか、結構危険な能力なので模擬戦で使用する能力じゃないってことですかね。」

 「じゃあ、なんのために模擬戦するんですか?」

 「ウイちゃんとユイちゃんの能力の見極めもそうですが、その方の非能力時の身体能力の向上も今回の目的です。その方も最近入ったばっかりなので。」

 「そういうことですか・・・。」

 

 少し不服そうなユイ。


エレベーターが到着するとかび臭さは一層強くなる。

キャビネットが乱立し、所狭しと書類が山積みになっており、お世辞にもきれいなオフィスとは言えない特殊能力者調査部隊本部についた。

そこには、緑川と赤坂、黒木、そして、顔面蒼白でいかにも体調が悪そうな白中が待っていた。


「お連れしました!」

「よく来たな。東雲姉妹。特殊能力者調査部隊本部の皆を紹介しよう。まずは、ここまで連れてきてくれた青木だ。青木は、BRAINの能力を解き明かすスペシャリストだ。ともに行動することが多くなるだろう。次に緑川。ここのオペレーターだ。困ったことがあったら私よりも力になってくれることが多いだろう。次に赤坂。彼はここのシステム担当だ。BRAINの行動調査や出動時の補佐などをしてくれている。そして、次に白中。彼はSランクBRAINだ。我々のボディガードとしての側面とBRAINの制圧が主だ。そして、最後に私、黒木だ。白中の能力を制御できるAランクのBRAINだ。このメンバーで日々の任務に従事している。」


黒木が話し終えると、ユイが快活に挨拶をした。


「東雲ユイです!BランクBRAINです!この度は私たちの有用性を証明するために参りました!模擬戦ですが、一生懸命挑戦しますので、お姉ちゃんともどもよろしくお願いします!」

「東雲ウイです。よろしくお願いします。」


ユイとは裏腹にウイの声はやはり小さい。


白中は、二人を見ている。そして、手汗をものすごくかいていた。

東雲姉妹は、かなりの美少女だ。しかも瓜二つの顔が2つ。違いもわからない。

そんなことを考えていることも心を読まれていると考えると恥ずかしくなってきてしまう。よからぬことを考えないようにすればするほど、思考が逆に冴えわたってきてしまう。

すると、赤坂が、白中に板チョコを渡してきた。


「ユメトお兄ちゃん、落ち着いて。心の読めない僕でも今の状況からしたら何考えているかわかるよ?」

「あぁ。わりい。あの子たちと戦うって考えると気が引けちゃってさ。」

「もう勝った気でいるの?」

「いや、体格的には俺のほうが有利だろ。でも、なんだろう。能力なしで戦うってのが、黒木課長にボコボコにされたイメージしかないから、弱気でいるのかも。」

「日頃の練習成果を出せば一撃くらいは当てられるよ。」

「一撃だけ!?」

「ユメトお兄ちゃんと相手二人だから分が悪いけど、勝ち負けじゃないしこれからともに働くかもしれない仲間なんだから、そんなに気負わなくていいと思うよ。」

「・・・ありがとな。」


青木がパンと手を叩き「さて」というと、東雲姉妹と黒木、白中を訓練場に案内した。


―――――


「どう思う?」


緑川がモニター越しに訓練所を見ている赤坂に言った。


「どうってなんですか?」

「ユメト君、勝てると思う?」

「どうですかね?相手の心が読めるって相当強いBRAINですよ。素人ではまず無理でしょうね。」

「ハジメって意外にきつい言い方するよね。さっきチョコあげてたのに。」

「あれはあまりにも、ユメトお兄ちゃんが緊張していたからです。」

「緊張もするよね。東雲姉妹だって黒木課長に鍛えられてたわけだし、ユメト君だって素面でBRAINと戦うのは始めただから。」

「能力が使えないときのためにユメトお兄ちゃんの戦闘力アップは必須事項です。」

「それはそう。うちらも録画を頼まれたけど、どうなのかしら。」

「どうとは?」

「BRAIN同士の戦いにこの模擬戦が役に立つのかなって思っただけ。」

「確かにSランクBRAIN同士であれば、人間の動体視力をはるかに凌駕してくるでしょうけど、攻撃の癖などはスローにすれば改善できますよ。きっと。」

「そうね・・・。まあ、観戦といきましょうか。」

「はい。」


訓練場の真ん中には、白中とウイとユイの三人が集まっていた。

その少し離れたところに黒木と青木がその様子を見守っている。

前方にユイ、後方にウイという布陣で白中と対峙している。明らかに役割分担ができている状態で、簡単には倒せる相手ではないと白中は悟った。

と、弱気になっていることも相手は理解しているのだろうとさらにやる気がなくなっていた。


「はぁ。」

「白中さん。もう降参ですか?」

「いや、やる気が阻害されて何もしたくない。というより、半端なく眠い。」

「なんですか!?一応、こっちは特殊能力者調査部隊本部に入れるかどうかがかかっている模擬戦なんですからちゃんとやってください!」

「わりい。黒木課長、寝ちゃったらすいみません。」

 「この状況化で寝れるということは、かなり限界に近いんだな。わかった。」

 「・・・寝る。」

 

 ウイは、黒木と白中のやり取りを注意深く見ている。

 ユイは、やる気満々といったところで、柔軟をして体をほぐしている。


 『まじでやんのかよ。仮にも女子高生だろ?殴ってもいいのか?』

 「構いませんよ?そんな軟じゃないので!」

 『げっ。心読まれた。まじでめんどくせえ。』

 

 青木が「それでは」と間に入り、開始の合図を言った。

 

 「白中さんと東雲姉妹の模擬戦、開始!」



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