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BRAINS  作者: 愛猫私


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第13話

第13話 狂人と常人



 「メンバーの選抜に関してはあなたに一任します。武器の手配はこちらで。」

 

 無名と呼ばれる長身で細身のスーツを着た男が、倉庫の中、柄シャツを着てピエロのマスクを付けた男に言った。


 「あのさ~。もっとまともな人材いないの?包丁も持ったことないやつをいくら集めても意味ないよ?」

 「道化様、申し訳ございません。我々FQ3はそもそも、他から人材を集めて切り捨てるやり方で幹部は数えるほどしかいませんので。」

 「分かってるけどさ~。さすがに、BRAINを殺すんでしょ?しかもナイフで。それなりに度胸のあるやつじゃなきゃ無理だよ。」

 「とにかく、不良や追い詰められた無敵の人、裏社会の人間など、多岐にわたってメンバーを集めたつもりです。吟味していただくのは、道化様の腕の見せ所だと思いますが。」

 「へ~。今回は一般人じゃないんだ。不良って・・・。あんまり好きじゃないんだよね。人の話聞かないやつ。だからと言ってビビって萎縮するようなやつだとへまするからな~。」

 「12人用意しました。とにかく、見てください。判断はそれからにしてください。」

 「はいはい。で、銃は?」

 「ベレッタM9A4です。」

 「まあ。ここでしか使わないけどね~。」

 「コンバットナイフの使い手の道化様には、生き残った者にある程度の手解きをお願いしたいと思っております。」

 「無名君。結構めんどくさいこと言っているのわかってる?」

 「はい。承知の上です。」

 「はぁ~。わかったわかった。とにかくCかDランクくらいのBRAINと対等に戦えるくらいにしておくよ。」

 「ありがとうございます。」

 「いやいや、いい人材がいたらの話だから。」


 柄シャツを着たピエロのマスクをかぶった男はひらひらと手を振ると「下がっていいよ」といい、無名を帰した。

 


―――――


 倉庫の中には、紙袋をかぶせられている男が12人、椅子に括り付けられて身動きが取れないようになっている。

 皆、恐怖で静かにしているのか、冷静さをアピールしているのかわからないが、微動だにしない。

 彼らは何のためにここに連れてこられたか理由を知らない。

 道化と呼ばれるピエロが、階段を下り、紙袋を被った男たちの前に現れた。

 

 「あ~い!ちゅうも~く!って見えてないか。」

 

 おどけた態度を取る道化。

 びくっと肩を震わせる者もいれば、全く動かない者もいる。


 「はい。状況を説明するよ~。君たちは、BRAINを殺す仕事を請け負ってもらうために連れてこられました。んで、僕が見極めさせてもらって、ちょっと訓練したら、特定のBRAINを殺してもらいまーす。ドゥユーアンダースタン?」


 静まり返る倉庫内。

 ふぅーっとため息をつく道化。

 

「まあ、いいや。とにかく一人ずつ見ていくか~。」


そういうと、一番左にいた男の紙袋をはがした。

そこには、タトゥーの入った腕。見るからに表の世界には居ないような強面の男がいた。


「ふむふむ。ドゥユーアンダースタン?」

「なめてんじゃねーよ。」

「ふむふむ。君ならこの状況どうする?動けないよね?殴れないよね?言葉って意味あるの?」

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ。殺してやんよ!」

「この状況でどうやって?」

「こんな縄!・・・っ!」

「いやいや。脳筋馬鹿かよ。解けるわけないじゃん。拘束してんだから。あぁダメだこりゃ。」

「粋がってんじゃ!〇□※◆!」


バン!と銃声の乾いた音が響いた。

道化は相手が話している最中に弾丸を打ち込み一人殺した。

 その銃声の音にびくっと体がビクついた男の方へと向かって紙袋を取った。


 「びっくりしたね~。どう?やれそうかな~?君。」

 

 ぼさぼさの髪を伸ばした男は、だらしない身体をしているが、目つきは狂気じみていた。

 

 「やります!やって見せます!もうこれしかないんです!人殺しでもなんでもしますから!」

 「ほうほう。じゃあ、死んでって言ったら死ぬの?」

 「はぁ・・・?」

 「え?だから、死んでって言ったら死ねるのかって。ドゥユーアンダースタン?」

 「そ、それは・・・。」

 「はーい。残念!」


 またも銃声が響き渡った。

 残りは10人となった。この道化は何を見ているのか理解することは常人にはできない。

 

「無名のやつ。適当なやつばっかり連れてきやがって。とにかく次行くよ~。」


また、次の男の紙袋を剥いだ。その瞬間、道化は、唾を吐きかけられ、そのピエロのマスクにべたりと唾が付いた。その男は三白眼の黒髪の短髪で、目つきが悪かった。


「ふむふむ。嫌なことしてくるね。君の有用性を証明してくれないと死ぬって理解できてないの?」

「仕事はやる。だけど、お前みたいに卑怯なことしている奴は嫌いだ。」

「卑怯?拘束している相手を銃で撃ち殺すことが卑怯?」

「そうだろ。俺らを使い捨てにするのが目に見えてる。吟味とか言ったか?どこが吟味してるんだよ。」

「はぁ。理解できない脳って本当に意味がないよね。なぜ拘束して銃で撃ち殺しているかって?そりゃあ楽だからに決まってるでしょ。仕事が出来そうか見極めて出来ないと判断したら引き金を引くだけ。終わり。ドゥユーアンダースタン?」

「な、どこが、どこを見極めてるっていうんだよ!」

「君さぁ。隣にいてわからないの?右に座っている子、君よりはるかに強いし、頭も良さそうだよ?」

「なんで顔も見てないのにわかるんだよ!」

「はぁ?まずは身体付き。身長から体重の比率を診たらだいたいどれくらいの攻撃力があるかは想像できるだろ?君が彼より大きいのは見ればわかるんだけど、それじゃ攻撃は当たらない。足腰と体幹の筋力が全然違う。しかも、この傷だらけの体。ただの自傷行為にしては、浅かったり深かったりして疎ら。ナイフの練習でついたものかな?それとも戦ったことがあるってことかな?っとこれくらいは容易に想像できる。で、君はというと、人を殴ったことはありそうだ。拳を痛めているね。で、どうだった?一撃で葬れたかな?出来なかったでしょう。人間のパンチ力じゃ、よほど当たり所が良くなければ、一撃で伸す事なんて難しいんだ。だから何度も拳を固めて殴る。だから、拳が砕ける。喧嘩と僕が望んでいる仕事は全く別物なの。ドゥユーアンダースタン?」

「だ、だったら何だっていうんだ!BRAINの肉体はただの人間だろ!」

 「もういいよ。君合格で。話すの面倒。隣の子の面倒を見る係でよろしく。」

 「は?」


 そういうと道化は、ひらひらと手を振り、大人しく座っていた隣の男の紙袋を剥いだ。

 

 「あぁ。やっぱりね。君。合格。」

 「え?いいの?何にもしてないよ?」

 「だって君、人殺しのプロでしょ。無名も嫌なことするな~。僕を試すようなことしてさ。」

 「ナイフの特訓があるって聞いてさ!」

 「おっと、勝手にお話するのはよくないね。お前!この子の面倒を見る係なんだからしっかり!」

 「え?あ、あぁ。悪い・・・。」


 釈然としない顔をする三白眼の男。

 残り8人となった。すると、突如、道化が話し始めた。


 「さっき、この目つきの悪い子に話した通り、だいたい体を見ればわかる。見せかけの筋肉で、威圧する事しかできないやつはいらないってわかっただろうから、覚悟するように。」


 というと、連続して5発の銃声が倉庫内に響いた。

 

 「5人か。ちょうどいいくらいかな。さて、じゃあ次のステップに行きますか~。先に言っておくけど、まずは人の話をちゃんと聞くこと。君たちが仕事をやる前にある程度一人前にするのも僕の仕事なんだからちゃんと着いてくるように。ドゥユーアンダースタン?」

 

 5人は無言だったが、小さくうなずいた。

 

―――――


 集められたのは5人。

 黒髪の短髪で三白眼の男。次に、人殺しのプロと判断された少し小柄ながら体が傷だらけの少年。次に、腕や太ももが丸太のように大きな屈強な男でタンクトップと短パンを着ている。次に、茶髪でジャージを着ていて見るからにチンピラの男。そして、最後に、ジャケットにジーンズの長髪でパーマをかけた長身の男。


 「じゃあ、これを渡していくので、みんな持って。」


 道化が差し出したのは、刃渡り20センチほどのコンバットナイフが渡された。

 刺突にも特化しているようで、刃先が両方研がれたダガーナイフとなっていた。

 各自手に取ってそのナイフを眺めてたり、握ったりして感触を確かめていた。

 

 「はい。じゃあ3人になるまで殺し合ってください。よーい始め!」

 

 皆、キョトンとした顔していたが、最初に動いたのは、傷だらけの少年だった。

 滑るように、地面を駆け抜け、長髪のパーマ男の髪の毛を後ろから引っ張り、首を掻っ捌いた。

 血しぶきを上げながら、声も出せず、血でうがいをする長髪のパーマ男は、ガクッと膝を着きそのまま倒れた。

 見事なまでの不意打ち。そして、不意打ちだからこその殺傷能力。首にある総頚動脈を一撃で切り裂き、その上を守るようにある胸鎖乳突筋をも一瞬で両断していた。

 これで生き残れるのはあと一人。

 屈強な男は、悟った。例えパワーがあったとしてもこの少年には勝てないと。

 なぜなら、自分の筋肉の表面に浮き上がる血管が全て、弱点に見えたからだ。ナイフで切られれば、大量の血を失うことになる。だから、屈強な男は、ジャージのチンピラ風の男を狙った。

 すべてが中途半端な男。ナイフがなくても、殴れば気を失いそうな体つき。

 パワーではなく、ナイフという武器の意味を高速で思考する。俊敏性に欠ける屈強な体では、相手に分がある。だからこそ、掴ませたり、間合いに入らないようにする必要がある。

 屈強な男は、ジャージのチンピラ目掛けてナイフを投擲した。両刃のナイフであるため、当たればそれなりに切れる。ジャージのチンピラは、とっさに避けた。そこに、屈強な男の猛烈なタックルが直撃した。

とっさにジャージのチンピラは、タンクトップを掴み、ナイフを背中へと振り下ろす。

 しかし、硬い筋肉と太い骨に当たり、一撃では仕留められない。そして、屈強な男は押し倒し、馬乗りになり、大きく振りかぶって拳を打ち付けた。拳はジャージのチンピラの顔面を捕え、一撃で伸びてしまった。

 屈強な男の背中からは、赤い血が滴っている。


 「はい。そこまで~。って目つき悪いそこの君。本当に何もしてないね。」

 

 道化から注意をうける三白眼の男。

 それをよそに、道化は倒れているジャージのチンピラの頭に銃を向けて一発。

 

 「はい。では、総評といきますか。目つき悪い君。無能決定。だけど、傷だらけの少年のお守り役として任命します。んで、筋肉だるま君。ナイフの使い方がひどすぎる!投擲武器じゃないんだから・・・。といっても、筋肉だるま君なりに考えた結果なのだろう。タックルはレスリングから来たものだと思うので、及第点としましょう。で、最後。傷だらけの少年。君は、文句なしと言いたいところだけど、不意打ちが出来ない状況ならどうやって殺すのかも見てみたかったかな。」

 「え~。それは、スッとやって、びゅっとやって、終わりだよ。」

 「どういうことだ?目つき悪い君!」

 「いや、わかんねーよ。」

 「とにかく、目つき悪い君。筋肉だるま君の手当をしなさい!」


―――――


 目つき悪い男が、屈強な男の傷を手当てしていた。

 

 「おい。背中の傷、浅くねーぞ。大丈夫かよ。」

 「死ぬか生きるかの瀬戸際だぞ?これくらいの傷で死ぬかよ。」

 「あんたもだいぶいかれてんな。」

 「でも、見ただろ。ここは常人がくる場所じゃない。狂人の真似をしてでも、食らいつかなければすぐに死ぬ。」

 「狂人の真似事って。」

 「俺は、レスリングを長年やってきたが、それは試合に勝つためだ。だけど、あの二人は、そうじゃない。試合に勝つとかそういう考えじゃない。どうやって殺すかしか考えていない。勝敗がそもそも生と死だ。だから、命を軽く見ることが出来るんだ。」

 「そこまでわかってんなら、手を貸さないで逃げようぜ。」

 「おいおい。臆病風か?ここに捕まった段階で死んだも同然。あとは、ここでのし上がるしか道わないんだぞ。」

 「話が通じねー。どうやってもド素人の俺がこの仕事を全うできるとは思えねー。」

 「お前が任されたのは、あの少年のお守り役だろ。BRAINを殺せとは言われていない。」

 「だけどよ・・・。」

 「ここに連れてこられた時点で終わっていた命だ。やれることをやれ。」


 こうして道化率いる、FQ3の下っ端たちが選別された。

 



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