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BRAINS  作者: 愛猫私


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第11話

第11話 殺戮者と夢遊病者


 荒れ狂う風が、黒木たちを襲う。

 立っていられないほどの風が吹きつけてくる。ビルの屋上にある室外機の陰に隠れる3人。

 

 「黒木課長!これもあのBRAINの能力だと思います!」

 「二つの能力か?」

 「おいおい。何でもありかよ。発動条件はどうしたんだよ!」

 「わかりません!とにかく確保して尋問すれば、わかりますよ!きっと!」

 「仕方ない。このままでは防戦一方だ。白中行くぞ。」


 そういうと、今朝のことを黒木は思い出していた。


―――――


 「私の能力の発動条件をまずは済ましておこう。」

 

 そういうと、手を顎に当て、白中に接吻する黒木。

 未だに抵抗のある白中は、目を丸くしている。

 

 「この間話し合って決めた私のオーダーについてなのだが、私の能力は「オーダー」と発言してから命令した言葉に従うようになる。ここぞという時に白中へオーダーを出す。そこで、第一関門は、白中が寝ていない状態の場合どうするかだ。」

 「寝てなかったら、ただのお荷物っすからね。」

 「だから、最初のオーダーは「眠れ」になるだろう。そして、次に「私たちを守れ」、最後に「敵を制圧しろ」になる。」

 「いいんじゃないんすか?」

 「最後のオーダーは制圧しろだ。起きろではない。ここが注意点だな。もし、対象者を制圧したとしても、そのあと自分で起きるまでは、能力が暴走してしまう可能性がある。」

 「え?面倒っすね。」

 「あぁ。だから、少し手荒い手を使うことになるかもしれない。青木や私は、テーザーガンを持っている。起こすために白中へ撃つ可能性がある。」

 「・・・。ま、まあしょうがないっすよね。」

 「それで上手く行くといいのだがな。」


―――――


 「オーダー1。「眠れ!」、オーダー2。「私たちを守れ!」、オーダー3。「敵を制圧しろ!」」


 黒木は自分の能力を発動させた。

 ガクンと頭が下がり、眠りに入った白中の体からは、ゆらゆらと白い靄のようなオーラが湧き上がっていた。

 室外機に隠れていた白中は、暴風の吹き荒れる中を飛び出していく。座っていたところのコンクリートは弾け、弾丸のように飛んでいく。

 吹き荒れる風の切り裂くように、敵目掛けて飛んでいく白中。

 

 すると、暴風は突如、上から下へと向きを変え、白中へ降り注ぐ。

 

 「なんなんだ!お前は!俺の邪魔をするなよ!」

 「・・・。」

 

 吹き付ける暴風は、白中を押さえつけ、屋上の中心に白中を釘付けにする。

 白中は、ぐぐぐと無理やり体を起こそうとするが、驚異的な風量の圧力に上手く体を起こすことが出来ない。

 

 「青木、白中を援護するぞ。敵はAランクだろう。風が厄介だが、テーザーガンで敵を制圧するぞ。」

 「はい!わかりました!でも、白中さんが抑え込まれてるほどの風圧です。私たちなんて一瞬で吹き飛ばされてしまいますよ!」

 「そうだな。慎重に気付かれないように行くぞ。」

 

 じりじりと物陰から敵へと近づいていく黒木を青木。

 吹き荒れる風が、二人の髪をたなびかせていく。

 白中は、物凄い風圧で抑え込まれているが、ぎりぎりと歯を噛みしめる音と共に徐々に体を起こしていく。


 「人が耐えられる圧力じゃないんだぞ!ふざけるな!」

 

 微風(そよかぜ)タイキはイラつき、大声を上げる。

 白中は無反応で、着実に体を起こし、膝を着き、今にも立ち上がりそうだ。

 

 「やっぱり特定の対象者でなければ、人間を潰すほどの圧力は生み出せないんですよ!」

 「ビッグエアーを身につけているものだけを圧死させる能力だから、他の者にはあの閉じ込めて潰すというのは使えないんだな。」

 「だとしてもすごい風圧ですよ!テーザーガンも弾かれてしまいます。」

 「白中の動き次第ということか。」

 

 野次馬たちの視線は、砂埃の上がる屋上に集まっていた。

 血だまりの死体たちへのトレンドは急激に冷めていき、通常ではあり得ない超常現象に注目が集まっていた。

 スマホを向け、荒れ狂う風の渦を捕えるカメラたち。そこで何が起こっているのか把握できる者はいない。

 凄惨な状態になったスクランブル交差点を必死で駆け回っているのは、警官たちや救急隊たちだった。

 被害者が増えないこのチャンスを逃すまいと、一斉に遺体を回収する。

 誰とも区別のつかない肉の塊を丁寧に拾い上げていく。中には、救急隊ですら嘔吐し、動けなくなるものもいる。だが、一刻も早くこの場所から非難する必要があった。

 旋回する風は、都内中央に突如と現れた竜巻と言っていいほどの風を撒き散らしていた。

 災害に匹敵するほどの風は、白中を抑え込むために集中しているが、これが一たび街中を荒らし始めたら、看板や野次馬などは吹き飛ばされ二次被害が生まれる。

 

 現場から退避するように促す警官たちも、荒れ狂う風の行方を追っていた。

 どんどんと警官の語気が強くなる。無理やりにでもこの現場から野次馬たちを遠ざけるために、身を挺して押さえつける。

 

 その時、ようやく白中が暴風に対応して、直立することが出来た。

 じりじりと歩みを進めて微風(そよかぜ)タイキに近づいていく。

 

 「来るなぁぁぁ!」

 

 抑え込む風圧ではなく、今度は小さな竜巻が発生した。小さい砂を巻き上げ、白中を捕える。

 高速で飛び交う砂や塵は、白中の肌を切り裂いていく。しかし、それと同時に、ゆっくりではあるが、白中の傷ついた肌は回復していく。

 

 動きやすくなった白中は、体の傷などお構いなしに、高速で竜巻から離脱し、微風(そよかぜ)タイキの腹部に蹴りを入れた。

 強制的に押し出された吐瀉物が地面へと滴る。

 

 「おごぁ!・・・」


 腹部を抑えて、膝を着いた微風(そよかぜ)タイキは、息を吸おうとするが出来ない。

 目を見開き、冷や汗を流す。白中の攻撃は一撃だった。

 微風(そよかぜ)タイキの能力は解け、風が止んだ。

 黒木と青木がテーザーガンを構え、微風(そよかぜ)タイキに近づく。白中は、ぼーっとして動かない。

 白中の行動は、黒木によって制限されているとはいえ、意思疎通が取れない以上何を考えているのかわからない。

 武術に精通している黒木は、呼吸が出来ずうずくまる微風(そよかぜ)タイキの様子がおかしいことに気が付いた。

 確かに白中の強烈な回し蹴りが腹部を捕えた。しかし、制圧する程度に手加減はされていた。

 だが目の前にいる微風(そよかぜ)タイキは顔面が蒼白になっており、呼吸しようとして口をパクパクしているが、肝心な空気が口の中に入ってこない様子だった。


 「青木!被疑者の様子が変だ!」

 

 すぐさま駆け寄る青木。微風(そよかぜ)タイキを仰向けにし、呼吸を確かめる。

 

 「呼吸してないです!蹴られただけでこんなになりますか!?」

 「一時的に呼吸できないのはあり得るが、何か喉に詰まっているようなことは起きない。どういうことだ?」

 

 白中は、敵を制圧したことで、ぼーっとしているが、鼻をクンクンとして、違う方向を見ている。

 

 「被疑者を死なせるわけにはいかない。どうにか延命させろ!」

 「人工呼吸をしてみます!」

「ハジメ、救急隊をこちらに呼んでくれ!」

「わかりました!数分で到着するようにします!」


 担架を持った救急隊がビルの中へ入っていくのが見えた。青木は、人工呼吸と心肺蘇生を繰り返している。

 息が出来ない微風(そよかぜ)タイキは、先ほどまでとは違い意識が朦朧としている。

 白中は、相変わらず何もせず、違う方向をずっと向いている。

 そこに屋上に上がってきた救急隊が、迅速な対応で青木と交代した。


 「代わります。」

 「ありがとうございます。呼吸していないみたいなんです。」

 「分かりました。すぐに病院に運びます。」

 「いや、そのまま異能力者東京収容所へ運んでくれ。そこにも医療機関がある。」

 「分かりました。」

 「ハジメと緑川は救急隊の誘導をよろしく頼む。」

 「分かりました!」


 担架で運ばれていく微風(そよかぜ)タイキを見送ると黒木と青木は、呆然とした白中と対峙することになった。



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