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BRAINS  作者: 愛猫私


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第10話

第10話 殺戮の全貌


 血だまりとかしたスクランブル交差点には、救急隊が何人も到着していた。

 しかし、その惨状を見て何の手立てもないことをすぐに悟っていた。

 そんなとき、大きな声で、青木が叫んだ。


 「スクランブル交差点に入らないでください!」

 

 その大きな声に振り向くように救急隊が一斉に青木のほうを見る。

 そして、逃げ惑う人たちの雑踏が青木の声をかき消した。

 

 「くそ!聞こえてねー。」

 「救急隊たちは辛うじて、聞こえたみたいだな。でもこの現状で現場を離れるわけにもいかないだろう。」

 「あんな状態誰が見ても救えないっすよ。今の救急隊に何が出来るっていうんすか。」

 「とにかく、もっと情報がほしいです!」

 

 すると、またも身動きが出来なくなった人々が現れ始めた。

 

 「おい!あそこの人、また閉じ込められてるんじゃないか?」

 「あの人も。あそこの人も。」

 「白中、青木助けに行くぞ!」

 

 三人は、惨劇の渦中であるスクランブル交差点に突入した。

 四方を見えない壁で覆われている人たちの下へたどり着き、どうにかこの見えない壁を破壊できないか考えていた。しかし、いくら叩いたとしても、謎の壁はびくともしない。

 拳銃を取り出し、足元の壁を撃ち抜こうとしても、弾丸が潰れるだけで、なんの効果もない。

 中に閉じ込められている人は、なにか必死に叫んでいる様だが、音が遮断されこちらには聞こえない。


 「おいおい。まずいぞ。中の人がしゃがみだしたぞ。」

 「たぶん上から壁が迫ってきているんです!」

 「このままだと圧死してしまうぞ。」

 「何か共通点・・・。何か・・・。」

 

 その瞬間だった。耐えきれなくなった体は、黒木たちの目の前で、ぐしゃりと押しつぶされてしまった。

 

 「うあああああああ!」

 「サキちゃんしっかりしろ!黒木課長!どうするんすか!」

 「青木を現場から遠ざける!白中、青木を担げ!」

 「うっす!」

 

 急いで、スクランブル交差点から離脱する三人。錯乱する青木は、目の前でひしゃげて血しぶきを上げ死んだ人の映像がフラッシュバックしている。

 死んだ魚のような目になり虚ろな状態の青木は、ぼそぼそと何か言っている。

 

 「サキちゃん!大丈夫か!?」

 「・・・ビッグエ、アー。」

 「え?ビッグ、なんて?」

 「もしかしたらビッグエアーじゃないか?青木落ち着いて言葉にしろ。」

 「共通点は、ビッグエアーです・・・。」

 「ビッグエアーってなんすか?」

 「若者に人気の有名ブランド名だ。」

 「それを身につけている人が、標的にされています・・・。」


 数多ある、多数の血だまりに落ちている遺留品を観察し、目の前で死んだ者の共通点を探し出した青木。錯乱しつつもBRAINの能力の被害者の共通点を導き出した。

 

 「おい!そこの警官!スクランブル交差点内に人を入れるな!」

 「え!?」

 「これはBRAINの仕業だ!救急隊や警官は標的にされない!とにかく一般人を退けろ!」


 黒木が大声で警官に指示を出した。

 

「ハジメ!まだか!」

「しらみつぶしに見てるんです!でも、あと、もう少しです!」


緊迫した状況下で白中は何もできない。

とにかく青木の背中をさすり、落ち着かせようとしている。

警官によって無理やり規制線が張られ、スクランブル交差点内から人がだんだんと減ってきていた。

救急隊は、雑踏によって転び怪我をしたものをスクランブル交差点から運び出している。

役割を把握して今起きている惨劇に対処すべく各々が全力で取り組んでいる。

混乱した人たちは、徐々にスクランブル交差点の外へと出ていき、囚われる人も少なくなっていたが、最後の最後まで、囚われ圧縮され殺害されてしまう人は出ていた。


―――――


「おいおい。何やってんだよ!都会でブランドもので着飾って粋がってるやつなんていらねぇだろ。全部、我慢して、我慢して、我慢して、我慢してきたのに!」


そう。この大量殺戮の張本人。微風(そよかぜ)タイキは、人生の全てを勉強に費やし、勉学に励んでいた。欲しいもの我慢し、同世代が遊ぶのを横目に、ひたすら勉学に人生を費やしていた。

しかし、結果というのは、努力に比例しない。人生初めての成功体験が失敗に終わった。

彼に取っては、すべてが水泡に帰し、意味のない時間となってしまった。それだけこの瞬間に賭けていた。次の機会に再チャレンジする選択肢が脳裏でちらつくが、途方に暮れ、現状が受け入れられない。


その心の穴を埋めるように、フードを被った少年が彼に話しかけてきた。


「ねー。なんか人生終わったみたいな顔してるねー。」

「誰だよ、君。」

「僕はただの通りすがりのBRAINだよ。」

「君もBRAINなのか?」

「そうだよ。お兄さんもBRAINでしょ?」

「この通り、手から微風を出すくらいしかできない何の意味のない能力だけど。」

「そんなことないよ!それがあれば世界をひっくり返せるよ!」

「馬鹿言うなよ。何に役に立つっていうんだよ。」

「ちょっと手貸してくれる?」

「え?まあ、いいけど。」

「お兄さんに一つ教えてあげるよ。BRAINの能力を簡単に人に教えちゃいけないんだよ。」

「は?」

「だって僕の能力は・・・。」


微風(そよかぜ)タイキは、ブラックアウトした。


そして、性格が激変し、スクランブル交差点の見渡せるビルの屋上から、楽しそうにしている人間で条件にあった者を手あたり次第に虐殺していた。

そこには、罪悪感や背徳感も何も感じず、全ては自分の失敗の憂さ晴らしのために、狂気的な行動に出ていた。

そもそも罪悪感や背徳感など、何をもって身につけられるものなのか。勉強していたら身に着くものでもない。その知らず知らずに培われているはずの暴力や倫理観が自分で制御できず、止められない。

止めようとも思い至らない。

その外れてしまった性格の暴力性とBRAINとしての能力の覚醒が相まって、このスクランブル交差点の惨劇に至る。


―――――


「黒木課長!怪しい人がビルの屋上にいます!」

「ハジメ、場所はどこだ!」

「もうスマホに共有してあります!」

「ありがとう!白中、青木向かうぞ!」

「サキちゃん、行ける?」

「大丈夫です・・・。何が何でも止めないと。」

「確かに、人を殺し過ぎだ。なんとしても制圧して確保するぞ。白中、準備しておけ。」

「うっす。」


急いで、ハジメが共有したビルの屋上へと向かう。

スクランブル交差点内は、ほとんど人がいない。しかし、規制線越しに野次馬たちが大勢、血だまりのスクランブル交差点を見ている。

潰れて肉塊となった人間の残骸に、救急隊と警官たちはビニールシートを掛けて周りから見えないようにしている。しかし、あまりに犠牲者が多すぎて、隠しきれない死体もいくつか存在している。

それを、珍しいものをみるように、スマホ片手に写真を撮っている者はほとんどだった。

その狂気じみた好奇心が白中には、気味悪く感じられた。


「白中、当事者じゃなければあんなもんだぞ、人間というのは。」

「こんなに人が死んでんのに写真や動画を取っている余裕があるなんて考えられないっす。」

「今はそんなことどうでもいいです!とにかく犯人を捕らえないと!」


屋上へ続く階段を勢いよく駆け上がる3人。

屋上には、目を見開き天を仰ぎ、一瞬にして常軌を逸していることがわかる男がいた。


「白中!青木!制圧の後、確保だ!」


黒木が叫んだ。

微風(そよかぜ)タイキは振り返り、頭を掻きむしって今の状況を理解した。


「あぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁああ!なんで!なんで!なんで邪魔ばっかりすんだよおおお!」


絶叫とともに、微風(そよかぜ)タイキの周りに暴風が巻き起こった。


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