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悪役令嬢は異世界をお望みではないようです。  作者: 竹の心
2章 ディバンカ王国 スパイ編
7/9

7トレンスチアに行こう!<前編>

枝豆の収穫時期などはスルーしてください(^人^)






翌日の早朝、空はトレンスチア村に入るための’’作戦’’を準備していた。


「ふっ…我ながら欠点のない作戦だ…」

目の前の華やかな布を見つめ、ニヤリッと呟いた。











「ソラ?入るよ。」

藤堂はいつまでも部屋から出てこない空を起こしに来た。

戸を開くと、机に座りながら髪を整える空がいる。だがいつもと決定的に異なる部分があった。


「あ、藤堂君。おはよう!」


「ソラ、早くしないt…」

藤堂の思考が一瞬停止した



「どうしたの藤堂君〜?もしや私の愛らしさに見とれちゃった?」


空は女装をしていた。いや、’’元の姿’’に戻っていた。


「な、なんでそんな格好…いや、もしかして…」


「理解が早いね。そう!私はこの格好でトレンスチアに潜入するのだ!!」

わっははは!と笑う空に藤堂はさらに困惑する。


「何言ってるんだ…あの村に女装だけで入れるとは思えない!危険だぞ…」


「大丈夫だよ!心配なら藤堂君も女装して潜n「断る!」


「それより、今日の仕事はどうするんだ…まさか先生に何も伝えずトレンスチアに行くつもりじゃないよね?」


「大丈夫!それに関しては先生に数日休暇をもらうよ!」


「全く…」

藤堂は頭を悩ませながら空と共にセオドールの元へ向かった。








「先生、失礼します。」

藤堂はガチャッと扉を開ける。


「おや、おはよう2人共。今日のソラは面白い格好をしているね。」


「まあ、はい…」

藤堂は気まずそうに答える。


「先生!その件でお願いしたいことがあるの!!」


「なんだい?」


「私、数日トレンスチアに行きたいから休暇取るね!」


「トレンスチア?なんでそんなとこ…」


「ふっふっふ…見つけたからだよ。大豆をね!!」


「ああ、例のダイズか…ソラはそれを手に入れたいんだね?」


「はい!絶対!!」

大声で伝える


「…いいだろう!私も植物を研究している身として気になるからね。」

微笑んで伝えると、藤堂が心配そうにため息をつく。


「やった!!じゃあ、大豆が取れたら先生の元に持って帰ってくるね!」


「ああ、お願いするよ。」

ただし、とセオドールは続ける


「あの村は森の奥深くにある。途中まで送っていくし、ソラが帰る時も迎えに行くからね。」

それには藤堂も納得のようでうんうんと頷く。


「わかった!じゃあみんなの準備が整ったら出発しよう。」


そうして空のトレンスチア行きが決定した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






日が当たらない森の中、空はセオドール、藤堂と共に歩き続けていた。




「うぅ…さむ…予想以上に寒いぃぃ」


「そんな薄着で来るから…」

藤堂はそう言うと自分の着ていたフード付きのマントを空に被せた


「ありがと…あぁ、早く着かないかなぁ…」

空は寒さに弱い。手に息を当てながら進み続けた。


「お、見えたよ。あれがトレンスチアの入り口だね。」

セオドールがそう伝えると、藤堂は空の手を守るように握る


「ソラ、危険なことが起こったらこの門から真っ直ぐ走って森を抜けるんだよ?」


「わかった…」

藤堂は心配そうに手を離した後セオドールの側に戻った


「迎えに来るから。気をつけてね。」


「うん。じゃあ2人共。またね!」

帰っていく二人が見えなくなるまで手を振った後、ソラは門の近くに駆け寄った。


トレンスチアの門の近くには、戦いに強そうな女性2人と腰に剣を差した青年が揉めていた。



「あんた男だろォ?だったらこの村には入れねェっつてんだよ!」


「俺は天から命令された勇者だ!魔王を倒すために冒険をしている。ここに入れさせてくれ!」


「そんなの関係ないね!外で野宿でもしてなッ!」


「もうしばらく食べ物を口にしていないんだ…」

男が地面に手をつけて呟く。


「お兄さん、大丈夫?」

空は青年に声をかけた。


「き、君は?」


「私は空。ここのうぇんば豆(枝豆)を見に来たの」

青年に手を差し伸べて立たせた後、女性2人から声をかけられた。



「ん?アンタも村に入りたいのかい?だったら女である証明をしな」


「証明?」


「ああ、ここで下の服を脱ぐんだ」


「なるほど…」

こうして村に男を入れないようにしているのか。と納得して着物の裾に手を掛ける。



「そこの勇者はあっち向いてな」



空は服の中を見せてから裾を綺麗に戻した。


「うん。正真正銘、女だね。入っていいよ。」


「ありがと。」

空は振り返り青年に声を掛ける。


「夜になったらお兄さんに食べ物を何か持ってくるね。我慢できる?」


「いいのか!?すまない…お願いしたい」


「わかった。じゃあまた夜に会おうね!」

軽く手を振って門を通る。枝豆に期待を寄せながらトレンスチアに入村した。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





村の中には畑や木で作られた小さな家が並んでいる。その中から空は農作業をしている少女に声をかけた。


「こんにちはお姉さん。」

すると少女は振り返って返答をする


「こんにちはお嬢ちゃん。どうしたの?」


「実はうぇんば豆が見たくてこの村に来たの。どこで育ててるか知らない?」


「こんなに小さいのに1人でここに来たの?ウェンバ豆なら丁度ここで育ててるのよ。」

偶然にもこの少女が立っていたこの畑で枝豆を育てていたようだ。


「えっ!本当!?見てもいい?」


「ええ、いいわよ。今日収穫しようと思っててね」

空はしゃがんで枝豆を見つめる。鮮やかな緑と大きなさや、バランスも良い。じつに品質の良い枝豆であった。




「お姉さん!このウェンバ豆、今日収穫って言った?」


「え?ええ。そうよ?」


「じゃあ、お願いがあるんだけど…」

これで大豆を作ったら色々なものができるだろう。今収穫したらもったいない。


「ここの一角だけでいいから、まだ収穫しないでくれないかな…?」


「え?なんで?今日収穫しないと食べれなくなっちゃうし…」


「お願い!今日収穫しなくても食べれるものができるから!!」


「ま、まあ私の育ててるものは市場に出すものでもないし…いいわよ。」


「ほんと!!ありがとう!」

ニコニコしながら飛び回る空に少女は条件をつける。


「じゃあ代わりにここの一角以外の豆の収穫を手伝ってくれないかな?」


「もちろん!」

空は刃物を受け取って枝豆のさやを枝から切り離し始めた。









少し日が沈んで外から人が少なくなった頃、空は枝豆がいっぱいに入った籠を両手で抱えて少女の自宅へ入った。


少女はメメというらしい。この村で姉と暮らしているそうだ。


「お邪魔しまーす…」

家の中には長い髪の少女が立っていた。おそらく彼女がメメの姉だろう。


「いらっしゃい。メメのお友達かな?」


「ココお姉ちゃん。この子ソラっていうの。さっきまで豆の収穫を手伝ってもらってたのよ!」


「まあ!ありがとうね。お礼に今日はここに泊まっていって!もう少しで晩御飯もできるからね」


「やった!ありがとう!」

空は2人から晩御飯をご馳走になった後、パンとスープを門の外で出会った青年に届けることにした。







「夜は寒いなぁ…」

藤堂から借りたマントに身を包み、手に明かりと食料を持って歩く。


門を出たすぐそばに青年は焚き火をしてうずくまっていた。


「お兄さん。大丈夫?」

空が声をかけると、青年がこちらに顔を向けた。


「君は…食べ物を持ってきてくれたのか…!!」

はい。とスープとパンを渡すとよほど腹を空かせていたのか、すぐに無くなってしまう。


「もっと持ってきた方が良かったかな?」


「いや、とても助かった!君はなんて素敵な女性だろう!!名前はなんというんだい?」

青年は空の手を握る


「私?空だよ。お兄さんは?」

青年の手を振り払って焚き火の近くに座る


「ああ、俺はヴィアン。ここから少し遠くにある村から来たんだ。」

ヴィアンは聞いてもいないことを語りだす。


「実はある日突然、天から勇者となって魔王を倒せとのお告げがありここまで来たんだ。」


(この世界って魔王とかいるんだ…)

空は黙って話を聞く


「仲間を招き入れて冒険をしたいんだが、やはり勇気のあるものがなかなか居なくてな。ここまで1人で来たんだ。」


「それってマズイんじゃないの?」


「ああ、魔王は強いと聞くからな…さらに魔王を倒した暁には神が1つだけ何でも願いを聞いてくれると聞いたからには絶対に倒したいんだ…」


「へぇ…」

空はニヤリと笑った。

いいことを聞いた。つまり空が魔王を倒せば元の世界に帰れる可能性があるということだ。


「ふっふっふ…」

空は悪そうな声で笑う


「ソラ殿?どうしたんだ?」


「いやあ?何でもないよ〜。じゃあ私は村に戻るね?」

ニヤニヤとしながら空はメメ達の家へ戻っていく。


「はあ…やはり素敵な女性だ…」

顔を赤らめながら空殿…と呟いた後、勇者ヴィバンは眠りについた。






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