5準備しよう!
「ただいまー」
男に追いかけられ、少年に助けられた後。スカイは屋敷に戻った。
「お嬢様!こんな時間になるまで何をしていらっしゃったのです!?」
使用人が声を荒げてスカイを叱る。
「ごめんって!ちょっと人助けしてて」
「人助ですか…全く。お嬢様は高貴な方なんですから。勝手に1人で出歩いたら危険です!」
「そうだ…。それに関することなんだけど調べて欲しい人がいて」
スカイは使用人に叱られるのを無視して男を調べてもらうことにした。あんな狂人が街に野放しにされていたら危険だと考えたからだ。
「お嬢様!しっかりお話を聞いてください!」
「まあまあ、落ち着いて。お嬢様も反省…はしてなさそうだけど。」
別の使用人が落ち着かせる。
「…はあ。調べたい方ですか…。では特徴などを教えていただいても?」
「うん。あ、そいつ見かけたらとっ捕まえといてね。」
え?という顔をした使用人に特徴や出会った街など色々なことを話していく。
「了解しました。見かけたら騎士団に捕獲してもらうよう連絡しておきます。」
男が捕まるのはしばらく時間がかかりそうだ。
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そんなこんなで時間はどんどんと過ぎて行き、ついには敵国に乗り込むのも残りあとわずかとなった。
「さて、敵国では男装をしなきゃいけないからここで必要になるのは…」
スカイは机の上にたくさんの落ち着いた色の布を出した。
「男性用の和服、だよね!」
気分が上がり、目を輝かせて服のデザインが書かれた紙を見つめる。
「まずは礼装、準礼装、略礼装と普段着だよね〜。よーし!たくさん作っちゃうぞ〜!」
倉庫の奥に置かれていたミシンを使い、縫われていく布を見ながらうっとりとしている。
(そうだ、袋物とか足袋も作ろ!)
袋物を作ったら外出する時に便利になるし、余った布で足袋を作るのも楽しそうだ。
スカイの妄想は止まらない。
(ああ、集中してたらなんだかお腹すいてきたなあ。)
布を動かす手を止め、つぶやいた
「…味噌汁が飲みたい」
スカイは少し休憩して味噌汁を作ることにした。
(台所に来てみたけど…)
「やっぱりないよね…味噌。」
これでは味噌汁が作れない。
「そもそもこの世界で日本の調味料作れるのかな?」
時間はかかるだろうが、スカイは絶対に日本の調味料を作りだすと決意した。
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服を作っていて気がついたことがある。日本には四季があるが、ヘリストが存在する大陸には夏や春などの気温が上昇し暖かくなる季節が存在しないのだ。
(寒いのは苦手だからなあ。冬に備えて暖かい服装もたくさん作っておこう)
スカイは元の世界が恋しくなった。
そして数十時間…男性用の和服がすべて完成した。
「んあぁ〜!疲れた〜っ!」
こんな大量の服を一気に作ったのは初めてだった。疲れもあるがその分、有意義な時間を過ごすことができた。
その時、コンコンコンと扉を叩く音が聞こえた。どうやら使用人が来たようだ。
「どうぞ〜。」
入室を許可するとメイドが入ってくる。その手にはトランクケースを持っていた。
「お嬢様、ディバンカへ荷物を持っていく際はこちらをお使いください。」
ちょうど服が完成したところだ。スカイは荷造りをすることにした。
「わあ!ありがとう!じゃあ今から荷造りするよ!」
メイドはにっこりと微笑み、退出していった。
「よし。じゃあ服と、靴と、日用品と…」
どんどんと物を詰め込み、蓋を閉じた。
「はあ、ギリギリだな。小柄で身につけるもののサイズが小さくて良かった」
こうしてスパイをする準備は整った。
次回からスパイ編です。