表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通人転生-だけど前世知識で世界を変える-  作者: NOVENG MUSiQ
王都潜入戦 -影雷のラスト・レゾナンス-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/60

王都南門、影潜りの夜明け

夜の帳が薄れはじめる頃、王都アウル=グラドの石塀は墨を溶かしたような闇に沈んでいた。城門を守る禁衛隊はまだ眠りの中、商人や農夫の足音が静かに城下を満たしている。そんな氷と硝煙の匂いが交錯する薄明の街角で、ノーランたち七人は“ただの行商人”を装い、王都潜入の第一関門へと挑もうとしていた。胸躍る緊張と微かな希望を胸に、彼らは今まさに異世界を変える一手を打とうとしている──。

 夜の終わりと朝の始まりを分かつ瞬間――王都の石壁は墨を溶いたような闇に沈み込んでいた。

 しかし門前の泥道には、夜営明けの行商人や農夫が静かに列を作り、微かな松明の灯にかざされた積荷の影が、ゆらりと白霧に溶け込む。その列のほぼ中央――ノーランたち七人は、誰より慎重に息を潜めていた。


 「雷感知石は夜露に弱い。夜明け直後のこの霧なら反応を一段落とせる」

 ノーランは荷車に積んだ木箱へ背を預け、霧石で指先を冷やしながら呟く。

 霧石の淡青い粉を混ぜた水は、冷気と共鳴すると白いヴェールを吐き出す。フレイヤは農婦の粗衣の下に胸甲を隠しつつ、その粉を路面にさらりと撒き、轍に沿って人為的な霧筋を描いた。胸甲の革紐が動くたびに僅かな甲冑の擦過音が響くが、彼女はあえて咳払いでかき消す。


 「見た目より重い荷だな」

 王都禁衛の検問兵が荷車を叩き、首を傾げる。

 クロエは瞬時に笑顔を作り矢羽を兵の肩へ軽く触れさせた。

 「市場へ運ぶ乾燥薬草よ。夜露を吸うと価値が落ちるから、早く通してくださらない?」

 短い睫毛の奥で淡紫の瞳が揺れる。兵士が思わず視線を泳がせた次の瞬間、イヴが背後から狼尾で鍵束をそっと絡め取った。尻尾の毛先にまとわりついた霧粒がきらりと光る。


 門扉の鎖鍵を抜き、ハルトが袖口から小型の転位刻印を滑らせると、鉄製閂の内部機構が微かに弛んだ。

 だが――油断は一瞬で裏切る。門楼の陰、氷晶の感知器がほの赤く点滅した。トカリヤの背中の雷紋が霧を通して共振してしまったのだ。兵士が「異常探知!」と叫び、視線が集中する。


 ノーランは瞬時に行動した。霧石の粉袋を割り、霧のヴェールを濃く噴出させると同時にトカリヤへ囁く。

 「稲妻を“逆相”で流して! 閃光は抑え、空気だけ震わせるんだ」

 トカリヤは恐怖で震える喉を押さえ、それでも首肯。掌から放たれた紫電は霧中で無音の電位差を作り、感知石の発光を相殺した。


 霧のカーテンが視界を奪う十数秒、荷車は静かに影へ沈む。フレイヤがくぐもった声で合図を送った。

 「全員、生きてるわね。二回、揺らすわ」

 荷車が左右に二度ぎしりと揺れ、ノーランは胸を撫で下ろす。――王都潜入戦、第一の関門突破。


 がらんどうの裏路地で足を止めた瞬間、トカリヤの肩が小刻みに震えた。

 「ごめん……視線を感じたら雷が勝手に……」

 ノーランは首を横に振ると、彼女のローブの裂け目をそっと庇い、低く囁く。

 「君の雷を責める人間がいたら、まず僕が感電させてやるさ」

 蒼い霧が薄れ、東空が藍紫から薄桃へ染まりつつあった。朝焼けは、まだ誰も知らない王都の嵐を仄めかす。

 ――潜入の次なる舞台は、地底の〈潮汐下水道〉。夜明けの鐘が鳴る前に、双雷の鍵を解かなければ。

彼らが駆け抜けた門前の闇は消え、いまや王都の大路は鈍い朝光に照らされています。だが、静かな商人の列の裏で刻まれた深い足跡は、まだ誰も気づいていない決意と連携の証――夜明け前に潜り抜けた七つの影が、いま、冷気と雷と共鳴する地下水路へと足を踏み入れようとしています。邂逅するは古代の潮汐機構。前世の記憶を明かさぬまま、彼らは未知の深淵に挑むのです。次章では、霧の下へ潜む罠と、双雷の鍵を巡る激闘が幕を開ける――。どうか、この先の暗闇と閃光をお見逃しなく。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ