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普通人転生-だけど前世知識で世界を変える-  作者: NOVENG MUSiQ
焦熱に沈む罪と赦しの迷宮

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23/60

激突! 王家の実験施設

 紅蓮の遺跡で死線を越えたノーラン一行は、王家が遺産と魔物を兵器化する極秘「研究施設」へ奇襲を敢行する。ハルトの過去とイヴの復讐心が交錯し、フレイヤの剣、トカリヤの雷、仲間たちの知恵が夜闇に火花を散らす──。深奥には改造オートマタと将軍級の猛敵、そして血塗られた実験の残骸。真実を暴き、施設を炎上させるまでの息詰まる潜入戦が、ここから始まる。

 王家の「研究施設」があるという山間の地域へ向かうため、俺――ノーランたちは小さな村を出発した。紅蓮の遺跡での大きなダメージから何日か休息をとり、トカリヤもほぼ回復。フレイヤ、クロエ、エリー、イヴ、そしてハルトも、それぞれ準備を整えている。

 「研究施設……。王家が何をやっているのか、ここで決着をつけましょう」

 フレイヤが剣を揺らしながら低く呟く。隣でクロエは弓を確認、エリーはローブを新調して魔力増幅の準備を万全にしている。イヴは毛皮を整えながら「傭兵としての経験上、ああいう施設は警備が手強い」と警戒心を口にする。ハルトは深刻そうな表情で地図を見つめ、「やはり辺鄙な場所にあるな」と複雑な顔を見せた。


 その施設は王国領の辺境に位置していて、表向きは軍の倉庫か駐屯地のように偽装されているらしい。実際には、遺産や魔物の“改造実験”を行っているとされる極秘の研究所だ。王家が紅蓮の力の一部を持ち帰ったなら、そこですぐに兵器化の実験を始めるはず……とエリーが推測している。

 「今回ばかりは、真正面から殴り込むことになるかもしれないわね」

 トカリヤが杖を握りしめ、雷の気配を纏いながら言う。その声にはまだ痛々しい疲労が残っているが、決意ははっきりとしている。「もしあの施設で更なる遺産の研究が進められているなら、止めなくちゃ」


 俺たちは途中の町で最低限の情報を仕入れ、研究施設へ繋がる細い山道を見つける。警備兵が何人か見張っているようで、普通なら簡単に通れないが、フレイヤとイヴが夜陰に紛れ、短時間で警備を無力化。どうやら王家の偵察兵だったらしく、細かい防衛システムがあることを漏らしたという。

 「ハルト、あんたの道具は役に立ちそう?」

 フレイヤがささやくと、ハルトは魔道具の数々を見せながら小声で答える。「結界破りや罠解除に使えるものはあるけど、相手も手の内を知ってるかもしれない。慎重に進もう」


 やがて夜の深さが増すころ、俺たちは研究施設へ最接近する。谷間に架かる石橋を渡った先に、灰色の壁で囲われた施設があり、上空には王家の紋章が掲げられた高い塔が見える。

 「かなり大きいわね……まるで砦みたい」

 エリーが息をのむ。その周辺には人影がうろついており、どうやら兵士だけではなく、魔道士や改造された魔物らしき姿もあるらしい。俺は震えそうになるが、何とか踏みとどまる。


 「作戦は単純よ。正面から入って兵士を引きつけ、ハルトとエリーが内部へ潜り込んで施設の核心を突く。トカリヤ、ノーラン、クロエ、イヴがそのフォローって形になるわね」

 フレイヤが低い声で手早く作戦を示す。みんなが緊張の表情を浮かべる中、トカリヤは「派手に雷を使うと、すぐにバレそうだけど……仕方ないわね」と腹を括る。イヴも「兵士を減らすのは得意だし、あたしに任せなさい」と爪を光らせる。


 こうして夜陰に乗じて進撃が始まった。まずフレイヤが施設の門をこじ開けるように剣を構え、イヴが瞬間的に衛兵を排除。クロエが遠距離から矢を放ち、トカリヤが雷の一撃で門番らしき魔物を吹き飛ばす。ハルトとエリーは隙を突いて施設内部への通路を探す。俺は、皆の後ろで注意を払いながら応戦。

 「くそ、結構な数がいるじゃないか……」

 フレイヤが悪態をつくほど、兵士や魔物が次々と現れる。王家の研究によって強化された個体も混じっているようで、普通の兵より頑丈だ。俺は必死で味方を支援しつつ、邪魔にならないよう動き回る。


 施設の中庭に踏み込むと、そこには金属質の不気味な魔物――いわゆる“オートマタ”のような改造生物が待ち構えていた。無表情な顔を持ちながら腕が刃に変形し、こちらを襲ってくる。

 「こいつは……っ!」

 クロエが矢を放つが、装甲が硬くはじかれる。フレイヤが横から切りつけると、多少のダメージは入るが再生するように復活してくる。イヴが背後を取って爪で切り裂こうとするが、油断していたら尻尾を掴まれかけて慌てて離脱。

 「しつこいわね、こいつ!」

 イヴが毒づくと、トカリヤが「雷で動きを止められれば……」と呪文を詠唱。雷撃がオートマタに命中すると、金属がショートしたように火花を散らすが、それでも完全には止まらない。


 「ノーラン、少しあたしを援護してくれ!」

 フレイヤが俺に呼びかける。指示された通り、俺はハルトから借りた魔道具でオートマタの動きを遅くする結界を発動。フレイヤはその隙に剣を振り下ろし、オートマタの頭部を真っ二つにする。ようやく動きが止まって崩れ落ちた。

 「ふう……なんとかなった」

 みんな汗だくで、既に疲労を感じる。施設の奥へ向かう通路を見つけると、そこから再び敵が飛び出してきたが、ハルトとエリーが罠を解除して突破口を開いてくれているらしい。


 遠目で見ると、ハルトとエリーが術式でドアの封印を解いており、その先の階段を駆け下りていく様子が見えた。フレイヤが「あっちが本命かもしれない」と言い、ノーランたちも急いで後を追う。クロエとイヴが警戒しながら最後方をカバーし、トカリヤは雷を少しセーブしつつ結界をサポート。

 地下へ続く階段の先は、研究施設の核心部だろうか。薄暗い廊下を進むたびに、魔物がガシャガシャと鎖を引きずる音が聞こえ、金属の扉の隙間からは不気味な光が漏れている。

 「こんなところでいったい何を……」

 俺は震える声で呟くが、ハルトは「俺も全部を知ってるわけじゃないが、魔物の改造や遺産の兵器化の実験をしてるはずだ」と返す。エリーは眉をひそめ、「許せないことをしてるのね、王家……」と憤る。


 地下の最深部と思われる扉を開けると、そこには広い実験フロアが広がっていた。そこかしこに並ぶ魔法器具や奇妙な薬液の入った管、そして何匹もの魔物が拘束されたまま改造されている。血なまぐささに吐き気を覚えるほどだ。

 「……人間のやることじゃないわ……」

 フレイヤが蒼白になり、イヴは怒りで声も出せない。クロエとトカリヤは顔を背け、エリーは絶句する。俺もショックを受けるが、同時に強い憤りがこみ上げる。


 「よくもここまでやりやがったな……!」

 ハルトが奥に駆け込もうとすると、ドアの向こうから兵士が出現。先頭に立つのは王家の将軍級と思しき男で、鋭い眼光を放っている。

 「貴様ら、勝手に入り込んで……その研究は王家のために行われているのだ。おとなしく帰るがいい」

 傲慢な態度で睨みつける将軍に、フレイヤが剣を構える。「こんな非道を見逃すわけないでしょう!」


 こうして、施設の深部で最終戦闘が始まる。兵士と改造魔物が襲いかかり、フレイヤとイヴが前衛で迎え撃つ。クロエとエリーは後方から矢や魔法を放ち、トカリヤが雷の火力をサポート。ハルトは罠や仕掛けを封じながら将軍を狙う。俺はみんなの隙をカバーしつつ、懸命にサポートする形だ。

 「くっ……なんて硬いんだ!」

 フレイヤが将軍と打ち合うが、相手の鎧は特別製で、普通の斬撃では太刀打ちできない。イヴが背後を取ろうとするが、魔物が邪魔をしてなかなか近づけない。クロエの矢も厚いプレートに阻まれる。


 そのとき、ハルトが「みんな、下がれ!」と声を張り上げ、手にした魔道具を起動。空間が歪むように光が収束し、将軍の鎧にヒビが走る。どうやら結界を逆利用して外側から圧をかけたらしい。

 「よし……イヴ、頼む!」

 フレイヤが鋭く叫ぶと、イヴが素早く跳躍し、爪で将軍の鎧の隙間を切り裂いた。血が飛ぶかと思いきや、将軍は苦痛の声を上げつつも、何かの呪文で自分を強化。下がろうとする。


 「研究施設が崩れたら元も子もないわ。クロエ、通路を押さえて!」

 エリーが指示し、クロエが弓で兵士をけん制。トカリヤが雷を高出力で放つが、将軍は寸前で魔法障壁を張って逃げ道を作り、「貴様らの勝利は一時的なものだ」と捨て台詞を残して撤退していく。

 「逃がすか……!」

 フレイヤが追撃しようとするが、崩落しかけた天井から破片が降ってきて、身動きが取れない。俺が慌てて後ろから支え、なんとか被害を免れる。


 周囲の壁や床が罅割れてきた。どうやら施設の核となる魔力が暴走しているらしく、そこかしこで爆発音が聞こえる。実験用の薬液や改造魔物たちも破壊され、混乱が拡大する一方だ。

 「もう時間がない。ここを脱出しよう!」

 ハルトが叫ぶと、イヴやフレイヤも「そうね」と同意。エリーは「実験体を助けられないの?」と悲痛そうに言うが、とてもそんな余裕はない。クロエが「ごめん、今は私たちが逃げるのが精一杯……」と歯噛みしながら答える。トカリヤも「ごめんね……」と呟き、逃げ道を確保するため雷撃で扉を破る。


 激しい揺れと炎の爆発をかいくぐりながら、一行は施設の入口へ一気に駆け戻る。先ほどの中庭は既に崩壊し始め、外壁にも亀裂が走っている。兵士たちの姿はほとんどなく、みんな逃げ出したのだろうか。

 「ノーラン、急いで!」

 フレイヤが手を引いてくれ、俺は転びそうになりながらも走る。イヴとトカリヤは後方を見張り、クロエとエリーは道具を使いながら瓦礫を避ける。ハルトは先頭で結界を発動し、落石を一部弾いてくれている。


 ようやく外へ飛び出し、夜空に星が瞬く下で振り返ると、施設全体が凄まじい炎に包まれて崩れ落ちていた。瓦礫の間から火と煙が噴き上がり、建物の奥深くまで音を立てて崩壊していく。そこからしばらくして、大きな爆発音が響き渡った。

 「……終わった、のかな」

 クロエが息を切らしながら崩壊する建物を見つめる。フレイヤは地面に膝をついて苦しげに呼吸。イヴは大きく尻尾を揺らして「研究施設……全部壊れたわね」と独り言のように呟く。

 トカリヤは杖をつき、エリーは魔道書を抱え、ハルトは荷物から水を取り出してみんなに渡してくれる。俺は膝に手を当てたまま呼吸を整えつつ、崩落する建造物を見つめていた。


 「王家の計画……少なくともここで進めていた兵器化は止まったはず」

 ハルトがそう言うが、その表情は複雑だ。これで全てが解決したわけではないだろう。将軍は逃げ出し、兵士たちも撤退した。だが、この施設を破壊した意義は大きい。改造魔物や遺産の悪用は一旦ストップできただろう。

 「でも、王家自体を完全に倒したわけじゃないし……戦いは続くわね」

 フレイヤが疲れた声で言う。イヴは無言で頷き、クロエは「それでも大きな前進よ」と微笑む。トカリヤは半笑いで「私たち、生き延びてよかった……」と安堵の言葉。エリーは燃え盛る施設を見ながら、「どれだけ非道な研究が行われていたのか、気になるわね……」と切ない眼差しを向ける。


 王家の陰謀はこの先も残る。だが、ここで大きな一石を投じたことは間違いない。ハルトの告白を経て、イヴの怒りもやや落ち着き、何より俺たちパーティはかけがえのない絆で結ばれつつある。

 「……行こう。いつまでもここにいても崩落に巻き込まれそうだ」

 フレイヤが先に立ち上がり、皆で火の粉が飛ぶ施設を背に、夜の山道を進み出す。闇の中でも不思議と心が折れないのは、仲間がいるからだ――俺はそう強く感じながら、一歩一歩を踏みしめた。

 王家の研究施設は崩落し、遺産兵器計画は大きく頓挫しました。しかし将軍は逃走し、王家本体は健在。ハルトは罪を背負い、イヴは怒りを抱えたまま――それでも仲間たちは互いを信じ、一歩ずつ前へ進みます。紅蓮に続く闇はまだ深く、次章では王都を揺るがす陰謀と、獣人の里を巡る新たな衝突が待ち受けるでしょう。燃え落ちた研究施設の残火を背に、ノーランたちの戦いはさらに加速していきます。

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