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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

亡霊機関車粉砕チョップ

作者: 幽霊配達員

 この辺りには廃線になった線路が、むき出しのままうち捨てられている。

 もはや駅には繋がっていないが、長い距離線路が敷かれたままにていた。特に立ち入り禁止になっているわけでもなく、昼間は子供達が電車ごっこをして遊ぶほど活気がある場所だ。

 そんな線路には夜中、どこからともなく機関車が煙を上げながら現れては走り去って行くって噂が流れている。

 子供が夜中に家から外へ出歩かないために聞かせるお話しとして有名で、幼い頃いい子にしてないと亡霊機関車に連れ去られるぞと脅されたものだ。

 言いつけを守って大人しくベッドでおやすみしていたオレだったが、高校生まで成長すれば当然、夜遊びなんかも増えてくる。

 怖くて堪らなかった夜中の線路も今となっては、あーはいはい。あったなそんな話。と軽く聞き流す程度になっていた。

 生まれてこの方、心霊体験なんて全くしていない。どうせ作り話なのだろう。地元じゃ有名すぎ怪談話の足しにもなりゃしない。

 そして男子高校生が募ればバカな事を仕出かす。もはや自然の流れと言っていいだろう。

 ある日、亡霊機関車の真相を確かめに行こうぜと夜中集まる事になる。

 写真に収めようとする者。横から乗り込んでやるんだと意気込む者。車掌を見てみたいと言う者。いろいろな意見があったがオレは、真正面からチョップをしてみたいと思った。

 どうせ相手は実体を持たない幽霊みたいな機関車だ。正面に立ってもすり抜けるだけだろう。怖くも痛くもない。タイミングが合えばチョップを放った瞬間に亡霊機関車は煙の様に消え去るかもしれない。まるでオレが一撃で倒したかの様な映像が脳裏に浮かぶ。

 やってみたい。

 ウキウキ気分で約束を交し、夜に待ち合わせして件の線路へ到着する。

 早めに着いたせいでまだ時刻は二十一時。おばけの直時間にはちょっと早い。

 今夜は徹夜をする覚悟だったから、暇つぶしの道具やおやつをたんまり持ち寄った。

 街灯もないもんだから、電池式のランタンも持ってきた。妙に雰囲気を感じてテンションが上がる。

 トレカで遊んで、協力プレイで巨大モンスターを狩って、自販機へ水分を買い出しに行って、ボドゲに妙にハマっては時間を潰していく。

 不意に肌寒さを感じ出す。元々夜中だったけど、グッと暗さが強調された様な感覚に襲われた。ランタンが消え、ポーっと線路の先から音が鳴りだした。

 時刻を確認すると零時を回ったところ。遂に来た。透ける黒煙を上げながら、進路先を照らして亡霊機関車が。

 スマホを構えて撮影しようとする者。怖じ気づき、腰を抜かして身動きできない者。線路の横で待ち構える者。

 様々な動きをする中オレは、線路の前に立ち塞がって右手を前に構えた。チョップの形だ。

 いよいよ走る機関車にチョップを決める歴史的瞬間が近付いてきた。

 大きくなる様に近付いてくる亡霊機関車に、恐怖で心臓をバクバクさせながらチョップを振り下ろす。

 次の瞬間、オレの身体は肉片となって粉砕された。ツレの慌てふためく叫び声が聞こえた気がした。

 おばけのクセして実体なんて持ってんじゃねぇよと、心の中で悪態すらつけなかった。


 亡霊機関車は技術の向上を恨んでいた。石炭を入れ、火力を調整し、黒煙を上げて走る事に誇りを持っていた。

 機関車こそが人を運ぶ頂点の乗り物だと自負していた。しかし時代が進み電車や新幹線が現れ出すと、有害な黒煙を撒き散らす機関車は淘汰されていった。

 一部の機体こそ丁寧に飾られているものの、人を運んで走るという存在意義は奪われてしまった。

 最先端の技術が憎い。無用の産物として機関車を捨てた人間が憎い。

 募り募った恨みは、人の生き血を吸う亡霊機関車を生み出した。噂が人を呼び、バカな人間の魂をあの世へ運ぶ。生き血で車体を彩りながら、車内が満員になるまで止まれない。

 そして今夜もまた、地獄行きの亡霊機関車は汽笛を鳴らすのだった。

これ、ホラーなんだろうか?

ちょっと不安。

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