34.予感
執筆時間が取れていないため、午後の更新は取り消します。
迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません(汗)
とはいえ、今後も執筆時間が取れない日が続きそうですので、更新が変則的になってしまうかもしれません。
「1、2、3……全員で9人か」
ヴィクトルは、道の上で寝息を立てる少女たちを数えていた。
少女7人、少年2人で、噂に聞いていたとおり皆見目の整った者ばかりであった。年は20歳前後といったところだろうか。見たところ、やはりというべきか、生気が失われている者が多かった。顔色が悪く、苦悶の表情を浮かべている。
ヴィクトルは深刻そうな3人の少女と少年の額に手をかざし、魔法を使う。喪われた生気を、補うためだ。とはいえ、魔法での治療は現在魔法への適性が下がりつつある国民の体には毒になることもあるので、やむを得ない状態の者にだけ施した。
「にしても、ここまで上手くいくとは……」
――何者かの手の上で踊らされているような気がしてならない。
大体、力を集めようとしている魔物がこうもあっさりと手を引くなんてことが信じ難い。
「いや、まさか……既に力がほとんど集まっている……?」
そうだとしたら、非常にまずい。もとから魔物を祓うために王都へ来たというのに、これでは流石にヴィクトルの分が悪い。
だが、もし力が集まっていて、これ以上力を集める必要がない、と魔物が判断したとしたら……?
そうすると、魔物は今すぐにでも王都を襲う可能性がある。それでは、勝ち目がない。せめて、結界が作り出せたら……
「いや、結界を作ったとて国民が犠牲になることに変わりない」
ヴィクトルが頭を悩ませていると、後ろで人が動く気配を感じた。
「ここは……どこ……?」
ヴィクトルが背後を振り返ると、1人の少女が体を起こしていた。小柄な少女だが、年は少女たちの中で年長のようにも見えた。
「目が覚めたんだね。ここは、教会近くの道だよ」
「教会近くの……?っ!そうだわ、私……」
ヴィクトルが軽く説明すると、少女は思い出したように息を呑んだ。その様子を見て、ヴィクトルは察した。
「おや、もしかして君がソフィアかい?」
ヴィクトルがそう問うと、少女は驚いたように目を見開き、数度瞬きすると呆けたよあな表情を取り繕い、頷いた。
「え?……え、ええ。そうよ。私の名前はソフィアよ。あなたは?」
「僕はヴィクトル。実は、君の養父……アントワーヌさんから話を聞いていたんだ」
アントワーヌの名を出すと、少女――ソフィアは強張っていた顔を綻ばせた。よほど、アントワーヌのことが好きなのだろう。ヴィクトルからしたら、そのような感情は到底理解できるものではないが。
「まあ!それじゃあ、あなた、もしかして私を助けてくれたの?」
「まあ、そうなるね」
純粋な尊敬を宿した瞳に何だかいたたまれなくなり、視線を逸らす。
「ありがとう!!……それで、この子たちも、もしかして……」
ソフィアは次いで周りで眠ったままの少女たちに目を向けた。
「ああ、そうだよ。君と同じく魔物の被害に遭ったんだ」
「!やっぱり、魔物だったのね。その、お父さんは元気かしら?」
心配の色の強いその表情に、一瞬お父さん?とヴィクトルの脳内に疑問符が浮かぶ。つい、アントワーヌがお父さんと呼ばれることに違和感を感じてしまうのだ。まして、あの頑強な老人を思うと、あまり素直に心配できないような……
「うん。元気そうだったよ。家で待っているはずだから早く行ってあげな」
「ええ、そうするわ。でも、あなたにお礼がしたいし、この子たちの様子も気になるから、一緒に家に寄っていかないかしら?大したもてなしはできないけれど……」
ヴィクトルはソフィアと周りで眠る少女たちに目を向け、頷いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」




