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32.3通の報告書

「ここが、最後の村ですね」


 先程の街からさらに北上したところに、その村はあった。


「ええ、今日見てきた都市の中では一番被害が少ない場所よ」


 フローラはそう説明したが、クリスティーナからすれば、十分魔物に荒らされていると言えた。


「家屋の被害は少なそうですね」

  

 クリスティーナが辺りを見渡してみると、他のどの都市よりも家屋の倒壊は見られなかった。


「ええ、そうね。でも、畑の被害がとても深刻で暫くは商売にならないと村の人が言っていたわ。家屋などの再建も必要ですし」


 フローラは悲しげに目を伏せる。


「そうですよね。そういった人たちの支援も忘れてはいけませんね……」


「ええ、そうなの。でも人手が足りなくて……」


 今後の課題が、また一つ増えた。クリスティーナは、結界が壊れたときには想像もしなかった事態が起こっていることを改めて感じた。


「そうですね……どうしたら……」


 クリスティーナは、どうすれば魔物被害に遭った人たちを助けられるのか考え込んだ。魔物が関係しているため、一般市民に任せきるわけには行かないだろう。だとすれば――


「あっ、学園に通っている生徒に来ていただくのはいかがでしょうか?」


「ルシア学園の生徒のこと?」


「はい!ルシア学園の生徒なら、初歩的な魔物の対処法はわかっているでしょうし、一般市民に任せるよりは効率的かと思うのですが……」


「なるほどね。それは確かにいい提案だと思うわ。王都のケイティさんに頼んでみましょうか」


「はい、それがいいと思います」


 話がまとまった後、クリスティーナ達は村を一周りし、用事が済むと屋敷のある東の方角へと馬を走らせた。結局、この村でも魔力の塊等は見られなかった。


 そして、今日訪れた3箇所の都市はそれぞれ、王都の近くに位置していた。

 


「クリス。あなた宛の手紙が届いているわよ」


 フローラに呼ばれたのは、屋敷に帰ってからまもなくだった。

 

「ありがとうございます」


 アイリスからだろうか、と思いながら、クリスティーナはフローラから手紙を受け取り、自室へと引き返した。



(やっぱり、アイリスからだわ。そう言えば、ケイティ様からの報告も一緒に入っているのかしら)


 封を開けると、一枚の便箋と、更に2つの封筒が入っていた。1つは王都からの、2つ目はどうやら南領からのものらしい。

 クリスティーナはまず最初に、便箋に目を通した。それは、アイリスからの近況報告であった。それによると、西領は相変わらず被害が少ないようである。時々魔物が現れるものの、都市で何かしらの損害を被ることはないようだ。

 安堵の息をついたが、まだ2つの封筒が残っている。

 クリスティーナは、王都からの報告書を開いた。そこには、魔物が現れた都市では、必ず黒い靄の目撃情報があったという。

 

(……やっぱり、黒い靄があるところで、それがもととなって魔物が発生するのね)


 クリスティーナは、わかったことをを便箋にまとめ、王都と南領へと送ることにした。


 そうして、次に南領からの封筒を開封した。やはり王都に近い都市で被害が深刻だということ、それに反して魔物の退治件数が少ないことなど、クリスティーナが東領で見てきた現場などが認められていた。

 そして、一通りの報告を見終え、手紙を送ろうとしたところで、クリスティーナはエリザベートからの報告書がもう一枚あることに気がついた。


 そこに書いていたのは――


「えっ……嘘……」


 クリスティーナは目を見開いた。

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