25.被害が起こる場所
「そろそろ返事が届く頃かしら……」
クリスティーナは窓に視線を向け、仲間たちに想いを馳せる。
東領と南領、そして王都に手紙を送ったのはもう2週間近く前のことだ。
往来だけであれば2、3日で済むが、色々と調べてもらうことがあったため、クリスティーナはある程度の猶予を与えていた。
その間、王都からはいつも通りというべきか、近況報告が書かれた報告書は届いていたが。
だが、それにしてもかなりの時間が経過している。
「ちゃんと届いているのかしら……」
クリスティーナが不安になったのも束の間、アイリスによって勢いよく扉が開けられた。
「ア、アイリス!?」
「クリス先輩!返事が来ましたよ!」
「本当!?」
息を弾ませるアイリスの言葉に、クリスティーナは喜びの色を表情に浮かべた。
「はいっ!今、たまたま外に出てみたら遣いの人がいらしたので受け取ってきました!」
「あら、そうなのね。ありがとう」
アイリスはクリスティーナに報告書を手渡した。
クリスティーナが出した手紙は3通。だが、それに反し今この場には2通しかなく、クリスティーナは首を小さく傾けた。
「あっ、王都からはきっと来週分の報告書で来ると思います!」
クリスティーナの不思議そうな表情に、アイリスは慌てて付け足した。
「そっか……そうよね。とすると、あと数日ね」
「ですね。とりあえず、東領と南領の報告書を見ましょうよ!」
「そうね」
クリスティーナはまず、重ねられた2通のうち、表側の東領――フローラからの報告書の封を切った。
「被害は王都に近い都市で多発……、……あら、これは……?」
クリスティーナはさっと目を滑らせ、気になった文を読み上げる。
そして、2枚目に移ろうとしたところで、間に挟まっていた紙がひらりと舞った。
それを受け止め、見てみると、簡単な地図だった。東領を主に描かれているが、王都や他の領も僅かに描かれている。
そして、その地図に赤、黒、青の3色の点が散っていた。
地図の端に書かれている説明書きによると、週ごとの魔物の被害に遭った地点が表されているらしい。
赤が2週間前、黒が先週、そして青が今週の現時点での状況だ。
赤い点はややばらつきがあり、東領の中部から西部にかけて満遍なく散らばりがある。
しかし、黒い点を見てみると、中部での被害が減り、その分西部での被害が増えているように見える。
更に、今週になるともうほとんど中部での被害は無くなり、西部に集中している。そして、数も圧倒的に増えていた。
「段々、王都付近の都市での被害が増えている……?」
これは果たして、偶然なのだろうか。
「クリス先輩、そもそも、魔物がどうやって生まれるかわかってないんですか?」
「え?……確かに。負の感情に誘われると聞くけれど、それは既に存在していることが前提になるのよね……」
「そうなんです!それに、王都付近にまで他国から魔物が侵入してくるのはおかしいという話をしたの覚えてますか?」
「え、ええ」
「だから、わたくしはこう思ったのです。――被害に遭っている都市で魔物が発生しているとしたら……?」
「……っ!それは、大いに考えられるわね。ただ、そうすると何が原因で魔物が生まれるのか調べたほうがいいわね」
「そうですね。ですが、一応エリザベート様の報告書でもそういった傾向が見られるか確認しましょう!」
「そうね」
クリスティーナは頷きながら思った。
(アイリスは本当に視野が広いのよね。とても11歳とは思えないわ……)
そこには、純粋な尊敬や感嘆、そして、少しの懐疑心が含まれていた。




