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22.3人の朝

 その日、アイリスが帰って来たのはクリスティーナたちの話し合いの一区切りがついた、夜遅くだった。


「遅くなってしまい、申し訳ありません。……今日は、疲れたので、休ませていただきます」


 そう言って与えられた自室に引きこもってしまったため、アイリスが何をしていたのか尋ねることはできなかった。



「クリスティーナ、昨日聞きそびれたのだけれど、ケイティからの報告書には何が書かれていたの?」


 翌朝、エリザベートはクリスティーナと顔を合わせるなり、問いかけた。それに対してクリスティーナは、こちらです、と封筒を差し出しながら、内容を要約した。 


「……全国的に、魔物の被害件数が増えているそうです。あ、それから、フローラ様から聞いた話だと、東領では特に被害が深刻らしいです」


 まだ若干寝ぼけている頭を無理矢理働かせ、クリスティーナは語った。


「……そう」


 すると、そこで目覚めたらしいアイリスが姿を現した。

 朝から元気いっぱいで、見ているこちらも元気が出そうなほどだ。


「皆様、おはようございます!昨夜は心配をお掛けしてしまい、失礼いたしました」


 ぺこりと頭を下げるアイリスに、クリスティーナは苦笑しつつ、椅子を勧めた。


「気にしなくていいわ。それより、何をしていたの?」


「西領の巡回をしてました!しばらくそんな時間も取れていなかったので」


「確かにそうだけれど……一人で全て巡回したの?」


 西領の巡回と言っても、決められた地点がいくつかあり、それらを重点的に見て回るのだ。だが、全ての地点を一人で、しかも現役の聖女でもないのに行うことは、かなりの重労働だ。


「はい!クリス先輩とエリザベートさんの役に立ちたかったので!」


 アイリスは無邪気な笑みを浮かべて、当たり前のことのように言ってのけた。


「アイリス、ありがとう。助かったわ」


「いえいえ!あ、わたくしもケイティさんからの報告書を見たいのですが……」


「ええ、勿論よ」


 クリスティーナはエリザベートから返された報告書を、今度はアイリスに手渡した。


 アイリスが報告書を読んでいる間、クリスティーナはいつも通り隠されていた文章についてエリザベートに話しか

「……あの、エリザベート様、今回の〝かのじょがこわした〟というのは、裏切り者のことを指しているのですよね」


「ええ。恐らくは」


 そう言いながらもなにか考えている様子のエリザベートに、クリスティーナは首を傾げた。


「どうかされましたか?」


「いいえ。何でもないわ」


 エリザベートはそう言ったが、まだ何かなやんでいるようであった。


「読み終わりました!ありがとうございます」


 丁寧に両手でクリスティーナに手渡すところを見るに、育ちの良さが垣間見える。


 ――だが、本当にそれだけなのだろうか。


 クリスティーナは時々、アイリスについて不審に思うことがある。


 顔つきも、体格もまだまだ幼さを感じさせるのに、妙に大人びた表情や仕草を見せたり、時にクリスティーナよりもずっと年上の、堂々とした威厳を感じさせたりするからだ。


(さすがに考え過ぎだとは思うけれど……)


「クリス先輩?」


 今度はどうやら自分の方が考え込んでいたらしい。クリスティーナは笑顔で誤魔化しながらも、アイリスに対する疑念は深まったままなのであった。

10分後にはもう1話更新します(汗)

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