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14.忘れ去られた王国の話

 女神が結界を張ったことで再び平和が訪れた聖地は、益々栄えていった。国が築かれ、王が即位すると、人々はより一層安定した生活を手に入れた。


 ――しかし、繁栄には何かしらの犠牲が付きまとうものである。


 アムールデースは富と平和を手にしたものの、他の国々はそうではなかった。アムールデースで大量に発生していた魔物が、隣国をはじめとした近隣国を襲い始めたのだ。


 もともと、強い神聖力が溢れていた聖地に生まれた魔物は他の魔物とは比べ物にならない程強く、当時の人々に大きな被害を与えたのだろう。


 ――そして、その魔物たちは、現代にも生き残っているものがいるという。


 アムールデースは、聖地ではあったが、清らかな力を好む一部の魔物に狙われていた土地でもあり、結界に阻まれた今、魔物たちは他の国へ移らざるを得なくなったのだ。

 ――とはいえ、その頃はまだ良かったのだ。大陸全土で聖女が活躍していた時期は。

 

 神聖力や光の力が欠如した世界では魔法を操るものが減っていった。そんな中職業にするなど、以ての外で、聖女という役職も国々から消えていった。

 しかしそれは、魔物に対抗する術を失うも同じことだった。小国はあっという間に滅び、大国に属国化、植民地化されていった。



「そういえば、確かマリネフィアもアムールデースの属国だったんですよね。それって……」


「そうよ。国民も王家もほとんどが滅びたから、その状態だったネフィアも簡単にアムールデースが属国化できたのよ。今でこそ、アムールデース領になったけれど」


 痛まし気な表情のエリザベートに、クリスティーナは疑問を抱く。


「領になることにそんな意味があるのですか?」


「……あなた、マリネフィアのことを知っていてそんなことを思うの?」


 呆れたような、驚いたようなエリザベートの目に、物知らずさを痛感し、クリスティーナは体を縮こませる。


「マリネフィアは、もともとアムールデースと繋がっていたけれど、マリネフィアを含む、周辺地域は結界に含まれていないの。その理由がわかるかしら」


「えっと……結界はアムールデースだけを覆っていますものね。あら?でも、聖地と呼ばれていた頃からアムールデースの範囲は全く変わっていないのですか?」


「……ええ、そうね。先程話した通り結界は聖地だけを覆ったもので、それがそのままアムールデースになったからね」


「あ、そういうことでしたか。ですが、聖地には明確な範囲があったのですか?」


 そう尋ねると、エリザベートは苦々しい顔つきになり、言いづらそうにしながら口を開いた。


「ええ、そうね……聖地は、お互いに都合の良い範囲で境界を引かれたのよ。聖地の周辺に住む先住民族と、聖地に住む人々は折り合いが悪かったみたいでね。だから、争いを起こさぬようにする壁みたいな役割もあったのよ」


「壁ですか?」


「物理的に意味はなさないけれど、区切りのようなものができたからそう言われているわ。……結果的に、アムールデースは繁栄を極め、他の国々は衰えっていった。マリネフィアも実権をアムールデースが握ってはいたものの、いい加減な支配をしていたから、ある程度の自由が利く〝領〟という立場は大分良いものなのよ」


「そう、だったんですね……」

 

 深く頷きながら、クリスティーナの頭に新たな疑問が生まれる。


「あの、先程の話で、他の魔物より強い魔物が今も生きていると仰っていましたが……」


 クリスティーナは、推測の域を出ない発想に、躊躇いながら口を開いた。


「――結界はそれを聖地内に閉じ込めて、他の国に移らないようにする、()()のような意味もあったのではないですか?」

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