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5.眼鏡が壊れた理由

ようやくヒーローの登場です……!?

「ただいま戻りました!」


 クリスティーナは自宅につくと、大きな声で兄に挨拶する。


 クリスティーナの実家、セランドラ家は聖境司や聖女を多く輩出する名門で、貴族の様に豊かな暮らしを送ってきた。それ故に館と言っても差し支えないほどに大きな家で暮らしているが、兄とクリスティーナの2人きりだ。


 ところで2人の両親はというと、隠居すると言ってアムールデース南部の田舎町へと移り住んでしまった。


「お帰りクリス。準備は整えておいたよ」 


「ありがとう!直ぐに部屋に行くわ!」


 クリスティーナは制服から簡素なワンピースに着替え兄の部屋に向かう。


「お兄様、今日は何をするの?」


 兄の部屋に来たクリスティーナは机の上に自分が掛けている眼鏡と同じ物が置いてあるのを見つけ、目を丸くする。


「今日は膜を光の力で破壊できるかについてだ」


「光の力で……?」


「あぁ。入学初日、眼鏡が壊れただろう?あれが闇の力が関係ないしていない可能性が出てきてな」


 そう言って兄は眼鏡を取った。眼鏡にはやはり膜が張られていた。


「それでは、光の力でも壊せるということ?」


「あぁ。――例えば光の力に対して光の力で攻撃したとしよう。この時、どちらが勝つと思う?」


「力が強い方かしら?」


「そうだ。あの日は結界を張る場所、つまり強力な神聖力が満ちている場所に行ったため膜が破壊されさかもしれないんだ」


「なるほど!それでは今から光の力を注ぐの?」


「そうしたいところだが、俺は光の力を扱えない。だから最も系統の近い風の力を使う」


 そう言い兄は目を閉じ、手に力を集める。サァァという音とともに風が生み出され、膜を貫いた。


 パリンッ。


 硝子が割れる様な音を立て、眼鏡に張られていた膜が壊れた。


「きゃあっ!?」


 クリスティーナは目の前の光景に驚きの声を零す。

 机に置かれた眼鏡だけでなく、クリスティーナが掛けている眼鏡の膜にもひびが入っていた。


「すまない。魔力が強すぎたみたいだ」


「ううん。大丈夫」

 

 兄はクリスティーナの顔に手を伸ばし眼鏡をそっと外した。


 トントントン。


 クリスティーナのぼやけた視界が鮮明さを取り戻す前にノックの音が聞こえ、部屋の扉が開く音が聞こえた。


「リシュアン、入るよ」


 若い男の涼やかな声がに聞こえ、リシュアンが立ち上がる。


「……早かったな」


「悪いかい?」


 珍しい兄の不機嫌そうな声にクリスティーナはどんな人が相手なのか興味を抱き視線を移す。


「あっ……!」

 

 爽やかな佇まいに、揺れる黒髪。――そこには先日ぶつかった男性が立っていた。


「クリス?珍しいね」


 何故か名前を呼ばれクリスティーナは首を傾げる。


(この人と知り合いだったっけ?)


「直ぐ行くからいつもの部屋で待ってろ」


「はいはい。邪魔者は消えますよー」


 兄は会話を打ち切り男性を追い払うと再びクリスティーナに体を向けた。


「悪いが俺はアイツのところに行ってくる」


「うん。実験は上手くできたし、片付けは私がしておくね」


「ありがとう」


 兄はクリスティーナに新しい眼鏡を掛け、部屋を出ていった。


(結局誰だったのか訊けなかったな……。――でも、光系統の魔法で膜を壊すことができるなんて……!)


 クリスティーナは後で訊こうと結論付け自室へと戻った。



「にしても、どういうつもり?()()()()を行うなんて」


「……あの子は()()を知らなくていい。というか()()()()此処に居た」


 応接室と執務室を兼ねた様な不思議な造りの部屋で男とクリスティーナの兄、リシュアンは話し合っていた。


 ソファに我が物顔で座る男、ヴィクトルは不思議でならない、という表情を浮かべ、眉を顰めるリシュアンに問いかけていた。

 

「え〜っと入学初日に眼鏡が壊れた、とか話してた時かな?」


「……」


「それでクリスはあの日眼鏡掛けてなかったんだね」


 沈黙が満ちた部屋で、ヴィクトルは不気味なほど明るく話しかける。


「そんなことはどうでもいいだろ。とにかくあの子が……クリスが自分の()()を知った時、俺たちでは手がつけられなくなる。だからできる限り隠しておいた方が良い」


「……でも、だからこそ僕を聖境司に推薦してくれたんじゃないの?」


「あぁ。若しもの事があれば、お前は頼りになるからな」


「フフ。そうだね。なんて言ったって僕は()使()なのだから」


 いつの間にか暗くなった部屋で、リシュアンの青い瞳が煌めいた。

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