13.女神の罪
女神が生まれるよりも昔――人類が魔法を使いはじめた頃の話。
大陸には聖なる力、一般に言う光の力が溢れていた。そのため、人々は光の力や光から派生した魔法を使い、暮らしていた。しかし、人々の間で争いが絶えない時代に移ろうと、光の力は薄まり、反対に魔素や魔物が広まっていった。人々は剣を取り、植物は枯れ果て、天候不順が続き、大陸、そして世界中に絶望が溢れていた。
――そんな時であった。女神が後の五大使と呼ばれる、5人の天使とともにとある地域に現れたのは。女神の清らかで美しい力に、たちまちその地は蘇ったという。
女神が現れたこと、そしてそのために救われたその土地は、今ではアムールデースと呼ばれている、王国である。
女神が現れたその土地は、もともと光の力が多く、魔法を使う職業に就いていた者からは〝聖地〟とも呼ばれる場所であった。
そして、その聖地に女神は腰を据え、大陸の光の力のほとんどを使い、聖地だけを覆う結界を生み出した。
このことにより聖地は守られ、今もなお脈々と歴史を紡いでいるのである。
そうして、女神は聖地に住む者から聖女と崇められ、その後は五大使が聖女の座に就き、女神自身は忽然と姿を消した。
だが、初代聖女としても名を残した女神は、今でも自分の聖地を見守っているという。
そこまでを話し終えたエリザベートは、悲しげな瞳し、簡単に話をまとめた。
「女神様は、聖地を守るために、他の国を蔑ろにしたのよ」
「!そんなっ……結界は、修境記を使って作ったのでは無いのですか……?」
「それは、事実を隠すために作られた嘘よ。結界をつくる際には、五大使が今で言う聖女の祈りを捧げて光の力を集めたと言われているわ」
「あ、あのっ、女神様と初代聖女様は同一人物ということですか?あと、五大使が聖女になったてどういうことですか?」
勢いのままにクリスティーナが質問すると、エリザベートは少し笑いながらも説明した。
「順番に答えるわ。五大使はその後姿を隠した女神様の代わりに聖女として治めるようになったの。天使には性別がないから、当時の文献には男性と女性の姿をした天使の姿が描かれてるわね。それから……端的に言えば、女神様と初代聖女は同一人物よ」
教会にある像を思い出して欲しいのだけれど、とエリザベートに言われ、クリスティーナはいつも自分が感謝を述べていた女神像を思い浮かべた。
「結界の維持を行う場所ならば、普通に考えれば初代聖女の像を置くはず。けれど、女神像が置かれているのは、2人が本当は同じ人物だからに他ならないわ。……女神像と呼ぶのは、初代聖女と女神のことがまだ知られていた頃からあるものだからよ」
「そう言えば、結界が作られたのもあの教会でしたね。あの像は初代聖女様が女神様として認識されていた時代からあったのですね……あ、あともう一つ質問です!」
「何かしら?」
クリスティーナの興奮とは対照的に、エリザベートは優雅に紅茶を啜っている。
「聖女の祈りで、光の力が集められるのですか?」
「……ええ。だから、聖女の祈りをすることが光の力を使うことと同じだと言われているのよ」
「!それって、つまり……私も、光の力を集められていたってことですか……?」
「そうよ。……だから、あなたが聖女になってから結界の維持が楽になったのよ。フローラも言っていたでしょ?」
「そういうことだったのですね……って、フローラ様のその言葉を聞いていたって……」
クリスティーナは、その時話していた話の内容を思い出し、青褪める。
「聞いていたけれど、別に気にしてないわ。フローラは私にあたりが強いから」
「えっ!?そうなのですか?」
フローラの穏やかな雰囲気とかけ離れたその言葉に、クリスティーナは驚きの声を漏らす。
「私だけじゃなくて、優秀な女性に対してはフローラも少しは人間らしくなるわね。先輩の聖女とも何かあったみたいだし」
「え?でも、どうして……?」
「その話は後よ。この国の歴史について、まだ言い終えてないもの」
「あっ、すみません。続きをお願いします」




