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11.魔法陣の異変

話の区切りが悪くなるため、午後10時には3話投稿します。

「――ただの、清らかな力に敏感なだけの聖女よ」


 エリザベートは、何の感慨もなく言ってのける。


「……本当にそれだけ?」


「そんなに気になるというのなら、調べてみればいいわ」


 探るようなヴィクトルの視線に、エリザベートはフッと笑うと、もと来た廊下を引き返していった。


(調べても無駄とでも言いたげだったが……知られてもいいと言っているようでもあった……)


「……本当に何者なんだ……?」


 一人きりの廊下に、ヴィクトルの独り言が響いた。



「遅かったわね」


 クリスティーナは、部屋に入ってきたヴィクトルに、思わず呟いた。


「そうかな?まぁ、色々準備があったからね」

 

 そう言って、ヴィクトルは大きな鞄を手で示した。古びた鞄は、彼がとても大事にしている物でもあった。


「……そんなに必要なの?」


「念には念を入れなきゃ。王都の情報がほとんどないんだし」


「……それもそうね」


 などと話していると、西領の偵察に行っていたアイリスが帰ってきた。


「ただいまです!……ところで、これはどういう状況でしょうか?」


 そこで、クリスティーナは経緯を全て話した。


「大体わかりました。それでは、これからセト様は王都に行くのですね」


「うん。でも、僕ならだいじょーぶ。クリスはエリザベートと今後についての話し合いでもしてて」


「えっ、エリザベート様と?」


 そこで何故かエリザベートの名が出て、クリスティーナはきょとんと首を傾げる。


「うん」


 笑顔で頷くヴィクトルは、エリザベートに視線を注ぐ。つられてクリスティーナも視線を移すと、エリザベートは面倒くさそうにしながらも、口を開いた。


「……東領のことは聖境司に任せてあるから、私は暫くの間西領に居させてもらうわ」


「!そうなのですね」


 クリスティーナは、エリザベートの頼もしさに、ヴィクトルが少しの間西領を離れる不安が紛れるのを感じた。


「あれっ?わたくしには何も無いのですか?」


「アイリスなら何とかなるでしょ」


 一人だけ何も触れられず、アイリスは少し焦ったように言ってみるが、ヴィクトルに流されてしまった。


「……ということで、3人とも、仲良くやってね」


 にこやかに微笑むヴィクトルの言葉に、


「はいっ」


「別に、あなたに言われなくても……」


「仲良くする必要はないわ」


 三者三様の言葉が重なったのだった。



 それから、何とか話をまとめ、今日中に西領を発つというヴィクトルに、


「せめて、見送りくらいはさせて」


 クリスティーナはそう言った。ヴィクトルはもちろん、と頷き、4人で外に出たのだが……


「あれっ?」


「あれ……」


「あら?」


「えっ……」 


 4人は声を揃えて呆然とする。

 それもそのはず。


「魔法陣が、無い……?」


 誰かともなく呟かれたその言葉は、驚きと、疑問が表れていた。



 各領では、非常事態であるため、いつでも転移するための魔法陣が準備されていた。しかし、いつもは赤い光を放っているそれが、今日に限って無かった。



「どうしてかしら?」


「先程まではありましたのに……」


「もしかして、状況がさらに悪くなってるんじゃ……」


 難しい顔をして考え込むエリザベートに、クリスティーナもつられたように俯く。


「――尚更、僕が王都に行って確かめなくちゃね」


「え……」


 覚悟の籠もった声に、クリスティーナは顔をあげる。


西領(ここ)は幸い王都に一番近い領だからね」


「まさか、馬車で行くの?」


「いや?馬で行けば2日とかからずに行けるからね」


「それでも、危険だわ……」


「大丈夫、大丈夫。それじゃ、行ってくるね」


 3人からの気を付けて、に背中を押され、ヴィクトルは馬に乗って王都へと駆けていった。


 今後の波乱を知らずに――

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