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いつかの日か見た夢

2章が始まり、10話まで到達致しました!

ということで、番外編です。


《天の記憶》


女神の五大使の()()()()()()が保っている、生前の記憶を指す。天の記憶を有する者は王家に次ぐ高貴な者とされ、主に王族や公爵家と婚約する決まりがある。これまでに2人の天使の生まれ変わりが確認されている。


《女神の五大使》

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 嫌な、夢を見ていた。 

 悪夢でしかないのに、起きたときには冷や汗をかいていて、なのに何も覚えていなかった。

 そんな夢を、見ていた。わたくしは何処か他人事のように、ただただ呆けたように立っていた。

 その夢は、突然こんな場面から始まった。


「__!話があるんだ」

 

 そうやって婚約者に呼び止められたのは、パーティーが行われている城にある、小さな庭だった。


「__様?どうしたのですか?」


 彼は焦ったような、怯えたような、悲しいような……複雑な表情をしていた。

 そんな彼が紡いだ言葉は、信じられない――否、信じたくないことだった。


「……ごめん。僕との婚約を無かった事にしたいんだ」


 瞬間、私は文字通り目の前が暗くなったように感じた。


「__様!?どうしてっ……」


「実は……君の妹__の()()()()が本物だということがわかってね」


 私の妹に天の記憶があるかもしれないとわかったのは、数日前のことで、それが本当なのかはわかっていなかった。

 しかし、本当だとわかった今、__との結婚は免れないだろう。


 ――何故なら、現在王族もしくは公爵家において、妻帯していないのは、彼だけだからだ。


「そんな……だからって……!愛してると仰っていたではありませんかっ!」


「君を愛する心は変わりない。でも、これは決まりなんだよ。国を……………者としての」


「ですが……っ」


「ごめん。もう、君と居たくない」


 突き放した言い方に、私は愕然とした。


「っ……!そんなっ……どうして?愛してるのではないのですか!?」


「君にこんな気持ちにさせてすまないと思っている。……だけど、これ以上君といたら僕は……君を何としても手放したくなくなってしまう……!」


 彼の悲痛な叫びを、私は聞きたくなかった。――だから、こんな気持ちが芽生えてしまったのだ。


「それで……それで良いじゃないですか」


「え……?」


 突然雰囲気の変わった私に、彼は戸惑ったような声を漏らした。

 そんな彼に気を良くした私は唇を歪ませるようにして笑った。


「私だけを見て、私だけのものになってください。あぁ、別に逆でも良いのです。私があなた様のものになっても。――ただ、私はあなた様さえ居ればいい。__も、家族も友達も……何もかも要らない。だから……私と……」


 縋るように溢れた言葉は、決して彼に届くことはなかった。


「ごめん、__。君の気持ちには応えられない。()()()()()()()()訳にはいかないんだ。――それでは、さようなら。貴女のこれからが幸せに溢れるものになるよう祈っているよ」


「__様!!待って……!行かないで……!」


 私を振った男は、引き止める言葉に耳を傾けず

私に背を向け去っていった。


 脚から力が抜け、外ということも忘れて私は地面にへたり込んだ。


「__様!__様!……うぅっ……うわぁぁぁぁっ」


 瞳から大粒の涙が溢れ出し、地面の色を濃くしていく。


「私は!私は!あなただけだったのに……もう、過去と仰られるのですのね……」


 脳内に先程の言葉が反響し、私は耳を覆った。

 彼の最後見せた表情には、静かな諦めだけがあった。その表情が、全てを物語っていた。


「よりにもよって何で妹と……!」


 私は己の不運さを呪い、嘆いた。


「嫌よ……嫌よ!絶対に__と__様を婚約させる訳にはいかない……!」


 私の心に炎が揺らめくかのように芽生えた真っ黒な感情は、留まることを知らずに燃え上がっていった。

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