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9.並べられた言葉

 クリスティーナは、聖女の中に裏切り者が居て、その者が結界を崩壊させ、結果的に何かが逃げ出したのではないかと推測し、エリザベートに語った。



「そこまで考えたのね」


 やるじゃない、と言いたげなエリザベートの視線に耐えきれず、クリスティーナはポツリと零す。


「聖境司のヴィクトルのお陰でもあるのですけど……」


「あら、そう」


 エリザベートはクリスティーナの後ろに控えているヴィクトルを一瞥し、またクリスティーナに視線を戻した。


「……エリザベート様はどう思いましたか?」


 とにかく話題を変えたくて、クリスティーナは緊張しながらも、自ら口を開いた。


「――私はあなた達とは違う視点ではあるけれど」


 そう言うと、エリザベートは何やら文字が書かれている紙を取り出した。


「こちらは……?」


 いくつも空欄のある文字列に、心当たりのないクリスティーナは首を傾げる。


「ケイティが送ってきた文を縦書きのまま並べたものよ」


「どういうことですか?」


「まず、私はそれぞれ隠された文が法則性もなく様々な位置にあることに疑問を持ったの」


「あっ、それは、私も思いました」


「それで、その文があった位置を()()()()()()()()()の」


 そう言って、エリザベートは手元の紙を指さした。確かに、縦に見れば報告書と同じ分が書かれている。そして、空行が10行程あった。


「あっ……!」


 クリスティーナは、エリザベートの言いたいことを察し、思わず声をあげる。


「つまり、文が揃うと新しい一文が現れるってことですよね」


「ええ。残念ながら、それが何なのかはまだわからないけれど」


 ―― つ いはといては   い う  


「報告書と同じ19行分あるとすると、あと11回は報告書が届くことになりますよね」


「そうなるわね。……今はまだ何とも言えないけれど」


 肩を竦めるエリザベートの緊張感の無さに、クリスティーナは思わず声をあげる。


「ですが、急がなくては取り返しがつかなくなってしまいます!」


「わかってるわ。ケイティが時間稼ぎをしてくれているだろうけれど……」


 言葉に詰まるエリザベートに、クリスティーナは、顔を上げ、思わず尋ねていた。


「……私たちで王都に行ってはいけないのですか?」


「っクリス!」


 背後からヴィクトルの咎めるような声が聞こえるが、クリスティーナは気にせずにエリザベートの瞳を見つめた。


「……ケイティがこうして止めているとうのに、それを聞かないというの?」


 少しは自分のことを認めてもらえたと思っていたクリスティーナは、エリザベートも賛成してくれると思っていた。だが、眉を顰めたエリザベートに、クリスティーナは悔しさを瞳に滲ませた。


「ですがっ……!」


「一度、冷静になったほうが良いわ」


 切り捨てるように言い放つエリザベートに、クリスティーナは我慢できず大きな声を上げてしまう。


「仲間を見捨てることなんてできませんっ」


「自分が足手まといにになるとは思わないわけ?」


 対抗するように冷たく言うエリザベートに、クリスティーナは言葉に詰まってしまった。


「っそれは……!」


「――2人とも、落ち着いて。今はこんなことで言い争っている場合じゃない」


 睨み合う2人に、ヴィクトルは一歩前に出て厳しさを含んだ言葉で告げた。


「でも……」


 尚も引き下がらないクリスティーナに、ヴィクトルは、困ったように笑い、折衷案を提案するのだった。

午後10時には番外編を1話投稿します。

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