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6.次期聖女

 そして、2人の前に現れたのは――


「こんにちわ!クリスティーナ様にヴィクトル様ですね」


 可憐な花が綻ぶ場面を思わせる笑みを湛えた、愛らしい少女だった。



 にこりと笑みを浮かべる目の前の少女は幼いながらにとても顔立ちが整っていた。

 そんな顔立ちの中に誰かの面影を幻視し、クリスティーナの中で既視感が首をもたげた。


「――アイリス・ロシュフォールと申しますわ!」


 語尾に感嘆符がつくような、元気の良い挨拶をしたかと思えば、名家のお嬢様のように美しいお辞儀を見せる。


(ロシュフォール……?それって……)


 クリスティーナの中で既視感が確信に変わりかけたが、自分が名乗らないのは失礼だと思い、咄嗟に頭を下げる。


「クリスティーナ・セランドラと……」


「ヴィクトル・レイモンド、だよ」


「ええ!勿論お名前は知ってますわ!」


「あの……それってもしかして……」


「あっ、はいっ!フローラ・ロシュフォールの妹ですわ!おふたりのことはお姉様――姉から伺っていますの!」


「……!いつもお世話になっています」


「いえいえ、こちらこそ!姉がいつもクリスティーナ様のことを責任感が強くて結界の維持でもとてもお世話になっていると言っているのですよ」


「そうなのですかっ!?少し……恥ずかしいですわ。ところで、アイリス様は次期聖女ということですよね」


 クリスティーナは届いたばかりの報告書に記されていたことを思い出し、アイリスに訊く。


「はいっ!あっ、それで様付けしなくていいですわ!まだまだ未熟ですし、聖女見習いとしてここにいるのですから、身分は関係ありませんもの」


 まだ11歳ということだが、流石はフローラの妹というか、才女の片鱗が既に見え隠れしている。


「わかりましたわ。ではアイリス、で良いかしら?」


「はい!あ、でも、敬語も必要ありませんわ!」


「そ、そう。わかったわ」


 公爵令嬢を敬称なしで話しかけることすら畏れ多いというのに、敬語も要らないと言われクリスティーナは躊躇う気持ちが強まったが、アイリスのキラキラとした緑の瞳に負けた。

 そして、少したどたどしい口調がとても可愛いらしく、クリスティーナはすっかり心を開いていた。


「その……先輩とお呼びしても良いですか?」


「勿論よ!後、クリスでいいわ」


「……!では、クリス先輩と呼ばせていただきますね!」


「ええ。そういえば、どの聖女のもとに行くのかってどうやって決まるの?」


「クリス先輩は経験してないのでしたよね。――大抵の場合は神官様が決められるのですが、わたくしはクリス先輩に教わりたくて、我儘を言ったのです」


「っ!でもどうして……私は名ばかりの聖女のようなものよ?」


「全然大丈夫です!わたくし、姉から話を聞いてクリス先輩に教わりたい気持ちが強くなっちゃって……むしろお礼を言いたいくらいですわ」


「そう言ってくれると助かるわ」


 アイリスがお世辞を言っている可能性はあったが、純粋な瞳は真実だけを映しているように見えた。


「……ところで、ヴィクトル様のことは何と呼べば良いですか?」


「ん〜……何でもいいよ」


「――では、セト様と呼ばせていただいても良いですか?」


「……どうしてその名を?」


(セト様……?どうしてかしら?)


 心做しか、ヴィクトルの顔がこわばった気がしてクリスティーナは心の内で疑問を浮かべる。


「あっ、別に深い意味ではないのです。嫌でしたらごめんなさい。ただ……」


 そう言って言葉を一度切るとアイリスはヴィクトルの青の瞳を見つめた。

 

「わたくしの()()()()にヴィクトル様がとても似ていますので」


 そう言って微笑むアイリスは、今までとはまるで別人のように妖しげな美しさをまとっていた。

ヴィクトルの名字がついに明かされました……!

(特に重要性はないですが)


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