3.聖女の祈り
毎週月曜日、午前0時と午後10時の2度、更新していく予定です。
聖女は必ず、10年ごとに授かる神託によって選ばれる。選ばれるのは10歳から20歳の少女で、5人だった。
次期聖女に選ばれた少女は直ぐに聖女になる訳ではなく、神託から5年後に行われる聖女の引き継ぎまで聖ルシア学園や聖女のもとで結界や光の力についてを学ぶことになる。つまり、神託から5年経ってから聖女を引き継ぐのだ。
また、聖女の仕事を補佐する聖境司も10年ごとに選び直され、次期聖女と行動を共にする。そのため必然的に聖境司も聖ルシア学園に入学することになる。
クリスティーナが聖女に選ばれたのは聖女の引き継ぎが行われてから5年、つまり現在からいえば次期聖女を選ぶ神託によってだった。
神託は10年ごとに行われ、大抵の場合では5人だったが、それを覆す事が起こった。
――聖女が4人しか選ばれなかったのだ。
そこで、もともと選ばれていた聖境司が聖女の代わりとして結界の維持に努めていた。だが、本来であれば聖境司は聖女が結界に力を注ぐことを補佐する役職だ。当然限界を迎えるのも早かった。
そんな時だった。
――皆が期待を寄せた神託で6人の少女が選ばれたのは。
前例のない話に人々は動揺したが、魔術師達はその中の一人を現聖女に仕立て、5人目の聖女にしてしまった。
混乱を招くかと思われたが、5人目の聖女の存在は社外に安寧を齎した。
――だが、その安寧はあくまでも仮初のものでしかなかった。
聖女に選ばれた少女は、名ばかりの聖女だったからだ。光の力を持っておらず、魔術を扱うこともままならなかった。彼女は直ぐに無能と呼ばれ、人々には再び不安が漂いはじめた。
それまで、聖女として選ばれる者は光の力を持つことが絶対条件だと思われていた。だが、彼女は光の力を扱えないにも拘わらず聖女に選ばれた。このことは聖女を目指していた者達の反感を買う事になってしまった。
そのため光の力を持つ者が集う学園でクリスティーナは邪魔な存在だった。
(こうなることはわかっていたけれど、いざ体感すると堪えるわね……)
クリスティーナはあからさまに避けられている現状に、溜め息をついた。
――クスクス。
溜め息をつく、一人のクリスティーナに嘲笑と哀れみの視線が向けられる。
(……これでも一応聖女なのだけど)
6人目の次期聖女として選ばれたクリスティーナだったが、現聖女として結界を維持する事になった。
けれども5年間の学ぶ時間を得られないという不利な状況の中、いきなり維持に協力するというのも無理な話だ。そこでクリスティーナは昼は学園に通い夕方には結界維持に力を尽くした。
ところで光の力を持たないクリスティーナがどのようにして維持に役立っているのかというと。
――聖女の祈り。
それは国民ならば誰もが知る言葉。
国史にも残る、数多の聖女が行ったこの行為には神にも通ずる凄まじい力が宿るのだ。
それは光の力を注ぐも同じこと。
(……詳しい事情は知らないけれど)
どのような仕組みなのかは誰も証明することはできないが、確かにその〝力〟は存在してきた。
――キーンコーンカーンコーン。
鐘の音に、クリスティーナは席を立つ。
(時間だわ)
午後の授業が始まる前にクリスティーナは他の聖女達の集まる教会へと足早に向かった。




