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33.使い魔とヴィクトル

《女神の五大使》

女神に仕えた五大天使の事。それぞれが強い神聖力を持ち、女神を支えた。現在では伝説上の存在。

 ――侵入者ヲ、見ツケタ!


 向き合っていたクリスティーナとヴィクトルはその無機質な声に、後ろを振り返った。


 振り返るとそこには艶のない黒髪の少女2人と少年1人が立っていた。


 だが、3人が人では無い事は明らかだった。


 黒黒とした瞳に光はなく、肌は異様なまでに白かった。


 ――侵入者ヲ排除スル。


 他の2人を先導する一人の少女ざそう言った瞬間、使い魔たちはクリスティーナとヴィクトルに向かって飛びかかろうとした。


 だが、それよりも少し先に、クリスティーナが声を上げた。


「――私を誰だと思っているの?まさか、忘れたのでは無いでしょうね?」


 玲瓏とした、鈴を転がすような声で紡がれたその言葉には妙な迫力があり、聞くものを圧倒させた。


 ――貴方ハ……マサカ、女神様!?


 ――シカシ、ソンナハズハ……


 ――ソレナラバ、誰ナノダ!?


 女神が現れた、という信じがたい現象をも正当化させてしまうクリスティーナは、本当に女神のようであった。


「――貴方たち、いい加減になさい。私達を早く解放して」


 クリスティーナは語気を強め、使い魔に命じる。

 思わず従いたくなってしまう声音に、ヴィクトルは目を見張った。


 すると、使い魔たちはそこでやっとヴィクトルの存在に気がついたようであった。


 ――オ前ハ誰ダ? 


 使い魔たちは表情こそ変化していないが、戸惑っているようだ。


 それもそうだ。姿を消している女神がこの場に居るという事だけでも信じがたいのに、そこに見知らぬ()()が立っているのだから。


 ――人間ダナ。


 かく言う使い魔たちは人ではなく、精霊に近しい存在だ。

 

 ――何故、人間ガ女神様と一緒ニ居ルノダ?


 ――人間ダロウト関係ナイ。排除スルノミダ。


 ……結局二人共排除される流れになっていた。

 とはいえ、それに従う二人ではない。


「待ちな――」


 クリスティーナは阻止しようと言葉を紡ぎかけ、ヴィクトルに止められた。


「ちょっと待ってて」


 そう言って微笑むと、ヴィクトルはクリスティーナの一歩前に踏み出し、()()()()()()を解放した。


 ――!?コノチカラハ……。


 ――マサカ、オ前〝セトエル〟カ……!


「御名答!さっすが。女神の使い魔なだけあるね!」


 ()()()()()()()ヴィクトルの声は今までに聞いた事のない程弾み、不思議な響きがあった。


(何?こんなヴィクトル知らない……。でも、いつだろう……こんな話し方を聞いたことがある気がする……)


 ――本当ニ存在シテイタトハ!


 ――俄ニハ信ジラレヌ。


「あっれ〜?もしかして、信じてない〜?」


 ――ソレハ、ソウダロ。伝説ノ話ダゾ?


「そっか〜。それじゃあ、これを見たら信じてくれる?」


 そう言ったヴィクトルは服の襟元を掴み、服をずらした。少なくとも、一歩後ろから見ているクリスティーナにはそう見えた。


 ――ソレハ!モシカシテ……。


「そう。これで信じてくれたよね!」


 ヴィクトルは無邪気にそう言い、喜び表すように体を揺らした。


(ヴィクトルはどんな表情(かお)をしているの……?)


 クリスティーナは段々ヴィクトルの事が怖くなってきた。

 声だって仕草だって普段より明るくて大袈裟だが、それ以上にこちらを少しも見ない、彼の事が。

 

「ヴィクトル……?」


 思わず零れ出た彼の名は、震えていて、とても弱々しかった。


()()()大丈夫ですよ!もう出られますから!」


 ヴィクトルは使い魔を騙すためにクリスティーナを女神として扱い、安心させるように囁いたが、相変わらずクリスティーナを見ていなかった。


「ね、これで解放してくれるよね!」


 ――ソウスルシカ、ナイ。

 

 ――仕方ガナイ。


「やった!ありがとね〜」


 ヴィクトルが感謝を口にした瞬間、クリスティーナが口を挟む間も無く、2人は外へと返された。

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