32.ヴィクトルの魔法
申し訳ありませんが、時間の都合上1話しか更新出来ませんでした。
明日、1話更新します。
「ねえ、これから更に何か起こるというの?」
恐る恐るクリスティーナは尋ねるが、ヴィクトルは相変わらず難しい顔をしたまま言った。
「否定したいところだけど、女神様の使い魔が襲い掛かかってくるんだよね……」
「……そう言うってことは、前回体験したの?」
「うん……」
ヴィクトルの苦虫を噛み潰したような表情から察するに、かなり厄介な事のようだ。
「使い魔から逃れるにはどうすればいいの?」
「……前回は、図書館の秘宝があった場所の本棚に刻まれていた魔法陣で脱出したんだけど……」
「それは難しそうね」
――此処はかつて使ったあの本棚の近くでは無いのだから。
「ん……どうしよう……」
ヴィクトルは辺りを見回し考える。
だが、そうしたところで何も状況は変わらない。時間が過ぎていくだけだ。
そして、最悪な事態とは時を待ってくれない。
――侵入者ヲ発見シタ。
「!?使い魔っ……」
「クソッ……もう来たのか」
迫りくる使い魔の姿を想像し、クリスティーナは恐怖を覚えた。
「もし使い魔に捕まったらどうなるの……?」
「排除しようとするらしい……出来れば避けたいんだけど、どうすれば……」
ヴィクトルは必死に前回来た時の記憶を――女神との会話を思い出した。
そう、あれは――女神と侵入者を使い魔が間違えるのか、と言った時。
女神は何と言ったか。
「確か……」
「どうしたの……?」
心配気にクリスティーナがヴィクトルを見つめるが、それすらも気にならない。
「……そうだ」
――契約してから時間が経っているし何より外見が違う。
女神は確かに、そう言った。
「……!」
「ねえ、どうしたの?」
「クリス、いけるかもしれない。少し魔法をかけるけど、いい?」
「……?それでどうにかなると言うのなら、いいけれど……」
「ありがとう!」
ヴィクトルは顔を輝かせ、素早く魔法を使う準備をする。
魔法を使う事について再度確認した後、ヴィクトルはクリスティーナに向けて手をかざした。
――パアアア。
辺りに眩い光が溢れ、薄暗さに呑まれていた本棚を浮かび上がらせた。
――アソコダ!
刹那、使い魔の声が上がり、こちらに向かって来る気配を感じる。
「気づかれたか……」
それはそうだ。これだけ派手に魔法を使ったのだから。
「ヴィクトル……これは……?」
クリスティーナは戸惑った様子で自らの腕や脚を見ていた。
クリスティーナの姿は一変していた。
元々着ていたブラウスとジャンパースカートは純白のドレスへと変化し、また、桃色の髪は、輝くような金色の髪になっていた。そして晴れ渡る空のような碧眼は、この世のものとは思えない、深い碧色だった。
何処か神秘的な雰囲気を醸し出す、その姿は――。
「女神様の姿だよ」
戸惑い気味のクリスティーナに対し、落ち着き払った様子でヴィクトルは答えた。
「女神様の……?」
「そう。話によると使い魔の主は女神様みたいだからね」
「つまり、私に女神様の振りをしろってこと?」
「そゆこと」
ヴィクトルは片手の親指を立てグッドサインを作り、片目を瞑って見せる。
「でも……私、女神様のことをよく知らないし……」
「う〜ん……大丈夫じゃない?使い魔たちにとっても女神様と契約してから結構経ってるんだし……」
「待って。使い魔って複数居るの!?」
「あー、うん。言ってなかったっけ」
いつか、こんなやり取りをしたな、と遠い目になりながらヴィクトルは答えた。




