31.3度目の正直
午後10時頃にもう一度更新します。
「可怪しい……?」
意味がわからない、といった様子で首を傾げるクリスティーナに、ヴィクトルは笑みを深くする。
「ここ、見てみて」
「……?」
ヴィクトルが指で示したのは、本棚に出来た隙間――の底。光がほとんど差さないこの部屋では薄暗さが満ちた隙間をはっきりと見る事は出来ないが、目を凝らすと薄っすらと埃が積もっているのが見えた。
「元からここに隙間があったらさ、こんな風に埃が積もってるなんてあり得ないよ」
そう言われ、クリスティーナは更に注意深く隙間を見てみる。すると、薄っすらと押し固められたような埃があった。
長い時間隙間があったとは思えない程、埃が積もっていなかった。
「確かに……!ということは、ここにはもともと一冊の本が入っていて、誰かが最近抜き取ったってことよね」
「そういう事。――元々積もっていた埃の上に日記が置かれたから、押し潰されて埃が平らになったんだろうね」
「なるほど。……あれ?」
納得しかけたクリスティーナだったが、な事に気が付き、視線を本棚に戻した。
「でも、それが日記とは限らなくない?」
「うっ……そうなんだよね……」
痛い所を突かれた、という風にヴィクトルは顔を顰める。
それを見て何となく気まずくなったクリスティーナは一つの仮説を立てる。
「――とはいえ、これだけ探しても見つからなかったぐらいなのだから……5階には無いと考えたても良いのではないかしら」
「……そうだね。それじゃあ、下りよっか」
「ええ。そうしましょう」
ヴィクトルが差し出したその手を、ごく自然に取ろうとしたクリスティーナだったが、何処からか聴こえてきた轟音に、動きを止めた。
――ゴゴゴゴ。
「クソッ。時間か」
やられた、と吐き捨てるヴィクトルに、クリスティーナは疑問を呈する。
「え……?まだあれから30分も経ってないはずだけど……」
再び懐中時計を確認するも、先程確認した時からまだ10分と少ししか経過していなかった。
「どういうこと?それに……何が起こるというの……?」
「それは……」
――ズズズズ。
「……っ!?何っ!?」
ヴィクトルが言いかけたところで、あり得ない現象が目の前で起こり、クリスティーナは驚きの声を上げた。
「本棚が……動いた……?」
怯えたように一歩後退るクリスティーナに、ヴィクトルは難しいをしながら口を開いた。
「……制限時間を過ぎると本棚によって出口が塞がれるんだ」
「でも制限時間はまだ過ぎてないはずでは……?」
「そうなんだよね……どうしてだろう……。あっ」
「何?」
「その……前に行った時さ、制限時間は大体2時間半くらいだったなと……」
そう。あの時は懐中時計で時間を確認などしていなかった。その反省として今回時計を確認していたぐらいなのだから。
「それって、正確には2時間半では無かった、ってことよね」
「……うん。……って、話してるけどさ、本当はこんな呑気にしてられないんだよね」
「なっ!?それ、どういうこと?」
今更ではあるが、クリスティーナは制限時間を過ぎると何が起こるのか聞いていなかった。
などとクリスティーナが考えていると、ヴィクトルが悟りを開いた様な表情を浮かべ、一言話した。
「やば……」
「やば、じゃないわよ」
クリスティーナは他人事の様なヴィクトルを睨む。
だが、ヴィクトルはといえば、先程の表情から一転し、虚無の顔つきになると、一言。
「マジで魔法陣作っとけば良かった」




