26.久しぶりの師匠
大変お待たせいたしました(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです!
次回も、午後11頃に更新します。
結局あのあと、ジョアシャンによって助けられたクリスティーナは、ジョアシャンの住む小屋の中で楽しい時間を過ごしていた。
「それから、幻の書の原書もあったのです!」
図書館に行った時の事を思い出し、クリスティーナは瞳を輝かせてジョアシャンにそう言った。
「ほう。流石はルシア学園の図書館じゃのう。儂も昔は通ったものだ」
「えっ……!師匠も知っていたのですか!?」
「……」
初めて聞く事に、クリスティーナは目を瞬かせる。が、ジョアシャンは気まずそうに目を逸らした。
「……まあ、2階より上に入る事も出来ぬし、長らく行ってないがな……」
「そうなのですか?師匠程の実力があれば自由に出入りできると思ってました」
ジョアシャンが聖境司を引退してから30年以上が経っているため、通常は図書館の3階から5階に入る事は出来ない。だが、ジョアシャンは高名な魔術師であるため、今でも自由に出入りが出来るとクリスティーナは思っていた。
「はっはっは。そんな特別扱いは無いのじゃよ。――ところで、その本はどうしたのかね?」
ジョアシャンはクリスティーナが抱えている1冊の分厚い本に目を向けた。
「!これは修境記です!」
師匠に見せるため、クリスティーナは本物だけを持ってきていた。
「修境記……となると5階に入ったのかい?」
「……?そうですけど……何故わかるのですか?」
「昔、色々とあってのう」
「……?そうなのですか。……どうかしましたか?」
驚いている様で、懼れている様にも取れる表情を浮かべるジョアシャンに、クリスティーナは首を傾げた。
「――5階は女神様の為に作られた場所なのじゃ。して、簡単に入られる場所ではない」
「えっ……!?女神様……?そんなこと一度も聞いたことがないのですが……」
(初代聖女様では無かったの……?)
「それはそうじゃろう。今では女神様の話も忘れ去られているじゃろうから」
「……それでは、簡単に入ることが出来ないとはどういうことなのですか……?」
「5階には秘宝があると云われておってな。その秘宝を守る為の仕組みが施されているのじゃ」
「……この修境記がその〝図書館の秘宝〟なのですが……」
「なに!?」
目を見張り、驚いている師匠を見て、クリスティーナはヴィクトルにそうよね、と確認した。
「そうです。実は5階で秘宝と云われる、この修境記を見つけました」
ヴィクトルの言葉に少し現実味を持てたのか、ジョアシャンは眉根を寄せたまま頷いた。
「そうなのか……。にしてもよく入れたのう。儂は恐ろしくて入る事が出来んかった」
「恐ろしい……?」
「はっはっはっ。今思えば人を寄せ付けぬように流した空言だったのじゃろうが……良からぬ事が起こる気がしてのう」
聞けば、ジョアシャンが聖境司だった頃、5階に入ると呪われる、といったものや、天罰がくだるといった噂があったらしい。
「噂を本気にするなんて、師匠にもそんな頃があったのですね」
「何じゃ。儂もヴィクトル殿程ではないが若い頃に聖境司になったのじゃから仕方あるまい」
そこまで言うとジョアシャンはふう、と息を吐いた。
(そういえば……ヴィクトルって有能なのよね……そんな感じはしないけれど)
クリスティーナは隣に座っている幼い青年を見て思った。
いつもは子供っぽく見えるが、クリスティーナとヴィクトルでは実力に大きな差があるのだ。
(無能な私とは違うのよね……)
自嘲するように息をついたところで、ジョアシャンが再び口を開いた。
「とはいえ、一度は行ってみたかったものじゃのう……」
寂しげなその表情に、クリスティーナは思わず提案していた。
「それなら、一緒に行きませんか?」




