20.失った記憶
評価、ブックマークありがとうございます!
お陰様で20話まで更新することができました。
今後も楽しんでいただける作品にしていきたいので、応援よろしくお願いします。
午後10時頃にもう一度更新します。
「んん……」
爽やかな朝の香りの満ちた自室で、クリスティーナは目を覚ました。
「あれ……私……」
「やあ、クリス。起きたんだね」
見慣れた自分の部屋に、居るはずのない人物を見つけ、クリスティーナは眉を顰めた。
「……あなたがどうしてここに?」
「またヴィクトルって呼んでくれないの?」
「また……?名前で呼んだことがあったかしら?」
「……そっか。やっぱり覚えてないんだね。――いや、何でもないよ」
「……?」
ヴィクトルのいつもと違う上辺だけの笑みに、クリスティーナは違和感を覚えた。
「どうかしたの?元気がなさそうだけど」
「あ……いや、別に。何でもないよ。それよりクリスに言いたいことがあったんだ!きっと驚くよ!」
先程までとは打って変わり、声を弾ませるヴィクトルに、クリスティーナは不可解そうな表情を浮かべる。
だが、ヴィクトルはそれに対してかにこにこと笑みを浮かべた。
(……訊いて欲しそうね)
「それで、何があったの?」
「実は図書館でね……」
「あっ!」
昨日の出来事を不意に思い出し、クリスティーナはヴィクトルの言葉を遮り、鋭い声を上げた。
「そうだわ。私、昨日図書館に行ったのだわ……!」
(どうしてこんなに大事なことを忘れていたのかしら……。あれ……でも5階に行ったかしら……)
クリスティーナの記憶は、5階に行くまでで途切れていた。
その後、何をしたのかも、いつ帰ったのかも覚えていない。
(どういうこと……っていけない。ヴィクトルの話の途中だったわ)
クリスティーナは、何処か悲しげで、驚きの色を含んだ青の瞳と目が合い、本題を思い出した。
「……ごめんなさい。続けてちょうだい」
「あ、うん。昨日、図書館の5階で秘宝を見つけたんだ!」
興奮したように、早口で捲し立てると、ヴィクトルは静かにクリスティーナの反応を待った。
「っ!図書館の秘宝を……!?」
(……ということは、やはり5階に行ったことになるわよね)
衝撃の情報に驚くが、今のクリスティーナはそれより戸惑う気持ちの方が強かった。
(……何でたろう。実感が湧かない……)
「――その秘宝はね……」
考え込んでしまったクリスティーナを余所に、ヴィクトルは鞄から本を取り出した。分厚いそれは、記憶を一部失っているクリスティーナでも、見覚えがある物だった。
「これだよ」
「?これって修境記……?――あれ、でも私達が見つけた物とは何がが違う……?」
「……!わかるんだね……!」
目を見開き驚くヴィクトルに、クリスティーナは却って驚く。
「……あなたこそ、知っていたの?」
「……まあ、事情がありまして」
「事情?それは私に言えないことなの?」
「……そうですね」
「ところで、どうして敬語なの?」
「いや……何となく?」
「どういうことよ……というか、最初の私の質問に答えてないわよ」
「質問……?何だっけ?」
さして思い出そうとせずに尋ねるヴィクトルに、クリスティーナは苛つきながら口を開いた。
「はぁ。……どうしてここにあなたがいるのかよ」
「あ〜、言ってたね。――何でだと思う?」
そう言ってヴィクトルは意味深長に微笑む。
楽しげにも見えるその顔に、クリスティーナは苛々を抑えられなかった。
「わからないから訊いてるんじゃない」
「それもそうだけどさぁ。予想してみてほしいじゃん?」
刺々しくなってしまった口調を気にせずヴィクトルは息をついた。
そんなヴィクトルにすっかり毒気を抜かれたクリスティーナは、しかし瞳に鋭さを宿したまま尋ねた。
「それでは質問を変えるわ。――私に何があったの?」




