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18.図書館の仕掛け

「道が塞がっている……?」


 ヴィクトルは目の前の光景が信じられず、呆然と呟いた。


「あぁ……間に合わなかったわ……」


 溜め息をつく、訳知り顔の女神に、最悪の事態を覚悟しながらヴィクトルは尋ねた。


「――何が起こったのですか?」


「……実は……その……」


 だが、女神は煮えきらない態度を見せる。


「覚悟はしましたから早く話してください」


「そう?……それなら言うわね。ここに居る時間は、侵入者対策として制限されているのよ。2時間半……くらいだったかしら……。それが過ぎると本棚に刻まれた魔術が発動して、侵入者を閉じ込めるために道が塞がれるのよね……」


「2時間半って……ここに着くまでに2時間はかかってましたよね」


「えへへ〜久しぶりすぎて忘れちゃったの〜」


 女神は軽く首を傾げ、上目遣いにこちらを見遣ると、ペロリと舌を出した。


「可愛さで誤魔化さないでください」


「……ごめんなさい。でも、私が覚えて無かったら、そもそも辿り着けなかったわよ?」


「あーはい。そうですね。――弁明は良いので早く脱出方法を教えてください」


「うぐっ。……それが……覚えてないのよね……」


「……」


 ヴィクトルは漸く先程までの煮えきらない態度の理由を知った。 

 そして、今まで見せたことのない、極上の笑みを浮かべた。


「そうですか。つまり、ここで永遠に閉じ込められていろと?」


「うぅ……脱出方法を考えますっ!だから許して」


「一介の天使が女神様に対して許す、許さないもないでしょう」


 やれやれ、といった風にヴィクトルは肩を竦める。

 ……いつの間にか、立場が逆転していた。


「それはそうね!――でも、永遠に閉じ込められる、なんて事はありえないわ」


「……一応聞きますが、それは何故に?」


「……5分と経たぬ内に私の使い魔が侵入者を排除しようとするわ」


「それかなりヤバイやつじゃないですか!……いや、でも主を侵入者と間違えて襲うほど使えない使い魔なのですか」


「その……契約してから時間が経っているし何より外見が違うじゃない?」


「外見で左右されてしまうのですか」


「確かにそこだけ考えると役立たずかもしれないけれど、魔力量は多いし、高度な魔法だって使えるのよ?」


「それは、契約者が女神様だからでしょう……?」


 誇らしげに胸を張る女神に、ヴィクトルは残念な者を見るような目をして、思わず正論を零した。



 女神は、長い時間を生きてきただけに魂は老成しているが、偶に見せる、幼い性格もあった。

 それが何故かはわからないが、おそらくは生前の性格によるものなのだろうとヴィクトルは思っていた。

 女神は、もとは人であったと聞いている。



「まあ、とにかく使い魔たちが集まって来るまでに逃げないと!」


「……待ってください。使い魔って複数人いるのですか?」


「……そういえば、3人くらい居たかしら」


「3人って……一対一でも一人余りますよ。それに、その姿で戦えるのですか?」


「ちょっと、戦うこと前提にしないでよ」


「何か脱出方法は無いのですか?」


「う〜ん。あるはずなのだけど」


「はずって……不確かですね」


「う〜ん……――あっ!言われてみればあったわ!」


「本当ですか!?」


 目を見張り、輝かせるヴィクトルだったが、瞬間、目を見開いたまま固まることとなった。


 ――侵入者ヲ発見シタ。


 無機質な声が不意に、閉ざされた道の奥から聞こえたからだ。

 更にそれだけではなく、仲間を集めるような声も聞こえた。


「女神様っ!マズイですよっ」


「ええ、わかっているわ。でも、もう逃げられれわよ」


 そう言って女神は何処からか取り出した本を見せ、頼りになる笑みを浮かべた。

 

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