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17.2冊目の修境記

午前中に1話しか更新できなかったので、3話更新しました!

「……。まさか、忘れる訳ないじゃないですか」


「そう?」


 含みのある笑いを浮かべる女神を見て、ヴィクトルは思う。


 ――こういう人でもあった、と。


「まぁ、いいわ。ところで、これが何かわかる?」 


「見ればわかります」


「ふふふ。そういう強気なところは変わってないのね」


「……」


(……付き合いが長く色々と知られている分、女神様には勝てないんだよな……) 


「どうかした?」


「……そういう鋭いような鈍感なようなところ、変わってないですね」 


「?そうかしら。……こうして本題から逸れていくのだわ」


「……そうですね」


 言われて視線を分厚い本に戻す。


「――これに似た物を見たのは気の所為でしょうか」


「あったわね」


「……これって1冊しか無かったのではないですか?」


「一般的にはそうなっているわね」


「?では何故2冊あるのですか」


 ヴィクトルは理解できない、という表情で女神を問い質しながら、預かっていた修境記を提示した。


「クリスは知らないだろうけれど、実はこれ(修境記)、2冊あるの。……いえ、()()()と言うべきね」


「……?」


 意味がわからず首を傾げるヴィクトルにあっさりと女神は衝撃的な事実を暴露した。


「あなたが持っている――3階で見つけた物、それは偽物よ」


「偽物……!?でも、差異は無いように見えますけど」


「それはそうよ。そういう風に見える魔法が掛けられているもの。――でも、ある点が決定的に本物とは違うの」


 そう言って、女神はもう1度本棚から取り出した方の修境記に視線を戻した。その伏し目がちの表情は、昔の記憶を思い出しているようで、儚げだった。


「――2冊あった内1冊は、昔火事で焼けてしまったの。2冊で1つ、として大切にされていたから作り直そうとしたのだけれど……。でも、全く同じ物を作り直す事など不可能だったのよね」


 寂しげな表情の女神は当時を知っているのだろう。


「だから、それは複製ですらない、ただの偽物よ」


「……そうなのですね」


 それでも何処かはぐらかされているように感じてしまうのは考えすぎだろうか。


「……では、どういう点が違うのですか」


 静寂が満ちた図書館に、ヴィクトルの問いかけが静かに響いた。


「それは……まだ言う事ができないわ」


「……その理由を伺っても?」


 煌めく青の瞳に女神は、躊躇いながらも口を開いた。


「……――獅子身中の虫。〝虫〟はどこにいるかわからないものだもの」


 小さな呟きは、側にいたヴィクトルにしか聞こえなかっただろう。だが、ヴィクトルの心を乱すには十分だった。


「……ッ!?それは、教会内に裏切り者が居るという事ですか!?」


「……明言はできないわ」


「ですよね。……でも、だからあんな事を訊いたのですね」


「な、何のことかしら?」


 わかりやすく反応する女神を、クリスみたいだ、とヴィクトルはつい楽しげに眺めてしまった。


「コホン。とにかく、これは持ち帰りましょう」


「図書館の秘宝を、ですか」


「秘宝は奪われるためにあるのよ!……まあ、まさか自分のもとに返ってくるとは考えもしなかったけれど」


「あれ、女神様の物だったのですか?初代聖女様が隠したと聞いていたので、てっきり聖女様の物だったのかと思ったのですが」


「……あー……そう。とはいえ、それは私の物よ。ああ、そろそろ帰らないとマズイのではないかしら。……いえ、手遅れかもしれない」


 ヴィクトル早口でまくしたて、焦る女神を不審に思いながら、帰らないとマズイ、という言葉に引っかかる。


「……どういう事ですか」


「……認めたく無いけれど……今にわかるわ」


 女神はそう言い、ゴクリとつばを飲んだ。それを見て、ヴィクトルは不安が増した。


 ――ゴゴゴゴ。


 背後から突如鳴り響いた音に、ヴィクトルは恐る恐る振り返った。


「なっ……これは……!?」

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