12.図書館の探検
午後10時頃にもう一度更新します!
「――探検って言うから期待したのに、図書館内じゃん〜」
「……広いのだから十分探検になるわ」
ルシア学園の図書館は〝館〟というだけあり、とても広い。というか、本館と呼ばれている棟の隣に位置する棟、それが図書館だ。5階建ての本館と同じ高さ、且つ棟まるまる、ということでルシア学園の図書館はとても広い。
つまり、探検、というのも強ち間違いではない。
「――それに……図書館の5階には秘宝が眠っているらしいの」
クリスティーナは階段を上りながら、後ろからついてくるヴィクトルを振り返り、言った。
「秘宝って……図書館に?」
「ええ」
「……興味なさそうね」
「えっ?そんなことないよ?ただ、図書館に眠る秘宝ってどんな物なのかな〜と思って」
何処か落ち込んだ様子のクリスティーナを見て、ヴィクトルは咄嗟に取り繕う。
クリスティーナは、言い訳じゃない、と小さく呟いたことを悟られないように前を向き、上の階を目指して進んだ。
図書館は5階ある内、1・2階を一般人にも公開している。云うならば、3階から5階は聖境司や聖女といったルシア学園に関わりのある者しか入ることができない。
――だが、それは下の階より上の階に重要な書物があることを示している。
「……こんな貴重な書物……一般公開できない訳ね」
クリスティーナは手近な書物を手に取り、感嘆の息を漏らす。
「そうだね。古いけれど、とても保存状態が良い」
ヴィクトルも別の書物を見て、感動の声をあげている。
「……気になるけれど、本題はここじゃないわ。5階に行きま……」
秘宝が眠っているとされる5階に向かおう、と声に出そうとした時。クリスティーナは、気になる題名を持った一冊の本に目が釘付けになった。
「これって……!」
「クリス……?どうかしたの?」
目を本から離さぬまま驚きに満ちた表情を浮かべるクリスティーナをヴィクトルは不思議そうに尋ねる。
「見て。この本」
クリスティーナが掲げた、「修境記」という本を見てヴィクトルも顔に驚きを浮かべる。
「それって、クリスがさっき探してたヤツだよね?」
「ええ」
クリスティーナの手ににぎられたその本は、クリスティーナが一番見たかった本であった。
「……まさか3階にあるとは考えていなかったわ……」
――先程探し回った時間を返して欲しい。
そんな事を思うクリスティーナを見透かしたようにヴィクトルは笑うと、励ますように言った。
「まぁ、1、2階でも収穫はあったし良くない?」
「……」
(何だか言い含められているみたい……)
クリスティーナはムッとして、ヴィクトルを無視すると、修境記を抱き締めて無言で階段を上り始めた。
「3階もだけれど……4階は更に凄いわね……!」
クリスティーナは天井までの高さがある、全方位に広がる本棚を見回すように、くるりと回る。
そこには、今まで見てきた低層階より圧倒的に古く、貴重な書物が収められていた。
「本当だね。5階はもっと期待できるね!」
先程までさほど興味を示していなかったヴィクトルは、修境記が見つかった事もあり、少し興奮していた。
「ええ。早く行きたいけれど……。――ねえ、見ていってもいい……?」
クリスティーナは自身の知識欲を抑える事ができず、上目遣いにヴィクトルを見上げた。
「……っ。そんなのズルすぎでしょ」
ヴィクトルはクリスティーナから薄く赤に染まった顔を逸らす。
が、鈍感なクリスティーナはその理由に気づく事ができない。
「……?どうかしたの?」
「いいや、何でもないよ。――聖女様のお望みのままに」
「……。そう」
急に恭しく腰を屈めるヴィクトルに、クリスティーナは驚くとともに頬を染めるのだった。




