9.聖女の忠告
5人の聖女がついに揃いました!
「ただいま戻りました」
魔法陣から教会の前に降り立ったクリスティーナは、待っていたケイティに駆け寄った。
「待っていたわ。今回は大丈夫だった?」
「勿論です。ですが、気になることが……」
「そう。皆を集めるわ」
ケイティはクリスティーナの深刻な面持ちから事の重大さを悟ったのか、他の聖女を呼び出しに行った。
◇
程なくして5人の聖女と聖境司が教会に集められた。
「今回私達は西領の巡回に行って参りました」
クリスティーナとヴィクトルは西領で見た事、感じた事を皆に話した。
「つまり、結界から神聖力が感じられなかったのね」
「はい……」
「でもそんなことが本当に起こるのかしら。見間違えではなくて?」
クリスティーナに今日も突っかかるのは、やはりエリザベートだ。
「そんなことはありません。疑うのであればご自分の目で確かめてみてください」
「……」
いつもと違い、言い返したクリスティーナにエリザベートは驚いたような表情を浮かべた。
「クリスティーナ、結界に綻びは無かった?」
そう低い声でクリスティーナに問いかけた聖女はいつも落ち着いている、ジゼルという少女だ。
「……はい。見たところは」
「そう」
「……?」
心なしかジゼルが安心しているように見えたため、クリスティーナは疑問を顔に浮かべた。
「とりあえず今日はこの辺にしておきましょう。皆さん何かわかったことがあれば直ぐに報せてくださいね」
「「はい」」
そうして、その日のところは解散となった。
「……ふぅ」
クリスティーナは人知れず溜め息をつく。
「お疲れ様〜」
突如後ろから声を掛けられクリスティーナは肩を強張らせる。
「あら、驚かせてしまったかしら」
振り返るとふわりとした笑みを浮かべる美女が居た。
彼女の名はフローラ・ロシュフォール。公爵令嬢で第2皇子の婚約者でもある彼女だが、親しみやすさの漂う、穏やかな女性だ。
「フローラ様。本日は忙しい中報告のために呼び立てることになってしまい、申し訳ありません」
「いいのよ。気にしないで。あなたにはいつも感謝しているのだから」
「感謝……?」
いつも感謝されるようなことをしているだろうか、と日頃の行いを思い出してみるが、思い当たる節はない。
「ええ。あなたが5人目の聖女となってから結界の補修が随分と楽になったの」
「……!そうなのですか!?」
初めて聞いた事に、クリスティーナは驚きとともに喜びを感じる。
(こんな私でも役に立てているだなんて……!)
「本当よ。でも、だからこそウェルズリー嬢と――ジゼルさんには気をつけたほうがいいわよ」
「エリザベート様とジゼル様に、ですか?」
「ええ。ウェルズリー嬢は嫉妬深いもの。あなたの功績をきっと妬むに違いないわ」
「では……ジゼル様は……?」
ジゼルは何かに興味を示すことが無い。それは人に対してもそうだ。
「彼女は……隠し事が多いから。本心を伺うことは誰にもできない。それだけに怖いの」
珍しくフローラが恐れを露わにした姿に、クリスティーナは動揺する。
「ご忠告ありがとうございます」
「いいえ。困った時にはお互い様、でしょう?」
そう言うと、フローラは去っていった。
「……何だったのかしら」
基本的にはおっとりとしている彼女だが、クリスティーナとは殆ど関わりがなかった。そのため、どうしてクリスティーナに声をかけたのか、とても気になった。
「……お兄様にも今日のことを報告しないと」
クリスティーナは呟き意識を切り替えると、帰路についた。
続きは午後10時頃に!




