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わたしの名前を知っていますか?  作者: 一粒 野麦
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第5話

 楽しかった運動会も終わったようです。

 あれだけにぎやかだった近くの小学校に、「別れの曲」が流れました。


 ふとっちょさんのご家族が帰宅のために通り過ぎていきます。

 おじいさんが「大玉転がしは、わしの活躍で、チームが断トツの1番じゃった」と嬉しそうに話せば、おばあさんは「私のあの最後の1玉が入ったので私たちが勝ったわ」と返します。

 大人たちのプログラムに参加していたのですね。大満足の様子です。


 やせっぽさんが、何回となくストレッチのようなポーズを取りながらも「それにしても、お二人ともお見事でしたね」と言えば、ふとっちょさんは「子供たちよりも大活躍でしたね」と、ご自分は転んだらしく、身体のあちこちが痛いようでしたが、笑いながら言いました。


 一番後ろに、ワンさんも居ましたが「ウー、今日は子供たちも大人たちも大活躍で、見ていてとても楽しかったけど…、やることがなくてヒマだったなぁ」と、どこか残念そうに、しっぽを垂らしながら去っていきました。


 子供たちも次々と下校していきます。

 ところで、あなたは、運動会が終わったら、どんな気持ちになりますか?


 下校の様子を見ていると、運動が得意な子もそうでない子もいますので、運動会への思いは異なっているようですし、中にはあまり気乗りのしなかった子たちもいたようですが、いつもとは何か違った1日に、その楽しみ方を見つけて、満足をして帰っていく子たちが多いようでした。


「お疲れさまでした!」


 夕方になりました。

 今度はどこからともなく、ひゅーっと、ピュウさんが吹いてきました。

 ピュウさんは、気は優しくて力持ちでとても頼りになるだけでなく、わたしが小さい頃から何かと気にかけてくれています。 


「こんばんは、雑草さん。」

「ピュウさん、こんばんは。今日はいつもより遅いですね。いそがしかったのですか?」


「いや、今日は運動会があったので、あまり早く来てしまうと校庭に砂ぼこりが起こったりするかもと、ゆっくりと待ってました。」

「なるほど、そういうことでしたか。でも、かけっこの時だったら、ピュウさんが後ろから吹いてくれたら、弾丸のように早く走れたかも。」


「それには気がつかなかった(笑)。でも…、逆に前から吹いたら、通せんぼをしているようで嫌われるんじゃないですか?」

「それもそうですね。」


 一緒になって、大笑いをしました。

 それから、「みんなが運動会をとても楽しんで終わったみたいなので、そろそろいいかなと思って出てきたのだけど、少し寒い寒い」と言いながら、ピュウピュウとゆっくり去って行きました。


 夜になりました。

 おうちの子供たちも、夕食を食べながら、今日1日がどんなに楽しかったかを話しているようです。かけっこやパン食い競争の話が出たかと思えば、お遊戯の話になり、そうかと思えば、つな引きの話になったりしています。


 食べ終わってからも、いつまでたっても話しは途切れなかったのですが、お布団に入る時間になったようです。

 物音が聞こえなくなりました。夜の真っ暗やみは、全ての物を吸いこむような静けさです。


 わたしもそろそろ眠くなってきました。

「おやすみなさい」

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