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わたしの名前を知っていますか?  作者: 一粒 野麦
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第3話

近くの小学校で運動会が始まったようです。ラジオ体操の曲が流れ、やがて、行進曲と共に「わー」という歓声が聞こえたり、お遊戯の音楽が流れたりし始めました。


 どうでしょう、あなたの運動会もこんな感じですか?

 わたしは草なので動くことはできませんが、運動会というものを1度でいいから見てみたいなと思っています。


 でも、有難いことに、色々と教えてもらうことはできます。

 お昼頃になったら、ひらひらと舞いながらも少し疲れたようにして、パタさんが飛んできました。いつも心細やかなパタさんは、わたしが咲かせている花をとても気に入ってくれていることもあって、よく遊びに来てくれるんです。


「こんにちは、雑草さん。今日は少し長くおじゃまします。」

「パタさん、こんにちは。今日はヒマなのですか?」


「いえ、もう1日分の運動をした気分です。いつものように近くの小学校の花壇で飛びながら遊んでいたら、子供たちだけでなく、大人たちもどんどんと集まって来て、それはそれはにぎやかでした。」

「そうですね、今日は小学校は運動会ですものね。」


「かけっこやパン食い競争の時は、すごい速さで動いているので、じゃまにならないように遠くを飛びながら、応援をしました。」

「パタさんなら、そういう時は、遠くからの方が、よく見えるかもしれませんね。」


「つな引きやお遊戯の時は、せっかくなので、子供たちと一緒になって、ひらひらと舞ったりして応援しました。」

「それは喜ばれたと思います。そういう時は、確かに近くからの方が、臨場感があって面白いかもしれませんね。」


 パタさんは、一息を付けたようで、わたしのところに来た訳を教えてくれました。


「みんなが校庭で出番のある時は花壇は静かでしたけど、お昼休みに入ったら、近くのあちこちでレジャーシートを広げ、おにぎりや唐揚げ、卵焼きなどをほおばって食べる人たちで大にぎわいになりました。

 そのうち、食べ終わった一人の子供が、紅白帽を使って虫採りを始めたので、鬼ごっこのように遊ぶのも初めは楽しかったのですが…、それを見ていた他の子供たちが、面白そうだとどんどん加わって、あっちもこっちも鬼だらけになったので、あっという間につかまりそうになって、さすがにこれは万事休すと、命からがら飛んで逃げてきました。」


「それは大変でしたね。まさに、逃げるが勝ちですね。ここならゆっくりできますよ。」

「有難うございます。ゆっくりさせてもらいます。」


 そう言いながら、パタさんは、ホッとしたように花の蜜を吸い始めました。

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