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人狼ラブコメ  作者: wani
第一夜
9/49

人狼の暴き方



九曜(くよう)さんって、最低ですよね』

「突然のディス」


 夜も深くなった時間帯。自習しながら、その日の報告がてらイルイと通話をしていると、唐突に暴言をぶつけられた。


「いきなり言葉の刃で人を刺してくるんじゃない。俺も一応人の子なんだぞ」

『血も涙もないことしておいてよく言いますよ。相手に好かれてるからって、ここのところやりたい放題じゃないですか』

「なんでお前がキレてんの? というかそこまで言うほど何かあったか?」


 なんてことだ、自覚がないなんて。そんな思いが伝わってくるようなため息が、電話の向こうから聞こえた。


『最近(ゆう)さんが首に付けているチョーカー、あれあげたの九曜さんでしょう? 恋人アピールにしても露骨すぎます。もう少し穏便なものにしてください』

「知らねえよ……。なんなら俺も若干引いてるわ。わんわんってなんだよ。百合川(ゆりかわ)もそうだけど、恋の呪毒を飲んだ奴ってみんなあんな感じになんの?」

『……九曜さん、百合川さんにも何かしたんですか?』


 身体だけの関係でもいい。というようなことを言われた。のだが、ここでそれを口にすると、更に揉めそうなので黙っておくことにする。


「……そんなことより、人狼探しについてだ。さっさと見付けないと、俺の命より先に貞操が危うい気がしてきた」

『それはそれで×よかった×じゃないですか。そんなの思春期男子からすればご褒美でしょう』


 よくはない。何かの手違いで人狼にキスをされれば、それで一発あの世逝きなのだ。

 過剰ないちゃいちゃは即死の元。それがこの恋愛関係の鉄の掟だ。


「……気のせいかもしれんが、さっきからお前、やたら喧嘩腰じゃないか?」

『う……。いえ、その……最近、自分が九曜さんの三股に協力していることに、不満を覚えはじめまして……。お三方も可哀想ですし……』


「だったら、少しでも早く人狼を暴き出せるよう、俺に一段と協力するんだな。それが現状を打破する一番の近道だ」

『…………。そう、ですね』


 九曜の意見をごもっともと感じたのか、何を言い返すでもなくイルイは肯定の意思を返してきた。


「じゃあ、いい加減本題に入るぞ。恋の呪毒に冒された連中から、人狼だけをどうやって見つけ出すか。その手法をいい加減に共有しておきたい」

『これまで考えなしにやってたんですか?』

「言い方の棘! ……とにかく、一応、色々考えてはいたし、人狼と暴けないまでも、こっちが身構えて話していれば、怪しい嘘くらいは出てくるだろうという期待は持ってた。ところが実際は……その、なんだ…………あのさ…………」


「…………あいつら三人とも、すげえ真面目に恋人してくれてる……」

『のろけじゃないですか』


 返す言葉も無かった。


「いやのろけたくもなるって! ホントかわいい。俺の彼女みんなかわいい。デートして、買い物行って、手作りお菓子食べて……これが恋人というものかとつくづく身に沁みてな……。

 いや、やめようこの話。全部惚れ薬のせいだと思うと逆につらくなる」


『急に冷静にならないでください。こちらも対応に困ります』


「だからさ、逆に……いや、逆でもないんだけど。あいつらのことを思えばこそ、さっさと人狼を見付けて、別れた方がいいと思ってな」

『それは……そうですね。あんないい子たちは、三股野郎とは別れた方がいいです』


 またディスられた。

 のはもう、置いておくとして。


「そこでちょっと考えてたんだが……。こっちは本当に逆に、だ。あえて人狼じゃなく、人間を見つけ出せばいいんじゃないかと、計画を立ててる」


『…………? どういうことですか?』


「要するに消去法だ。

 まず、人狼と役能者にしか聞こえない黒い鐘。あれで怪しい奴を人狼と役能者だけに絞り込む。すると普通の人間が選択肢から消える。

 次に、鐘の音を聞いた奴らの役能を調べる。役能さえ確定すれば、そいつは人狼じゃないことも確定するだろ。それを残った全員に繰り返すわけだ」


『成る程。そうすればおのずと、最後に残った一人が——』


「人狼。ってわけだ。単純だろ?」


 単純だが効果的。そしてなにより確実だ。

 人狼を探し出す過程で、人狼以外の呪いを解けるのも良い。


『いい手法じゃないですか。なんで早くやらないんですか?』

「もうやってる」

『…………? ですから、まずは普通の人間を選択肢から外すんですよね?』

「だから、それはもうやったんだって」


『……? …………???』


「だーかーら! 百合川(ゆりかわ)(みどり)鷺沢(さぎさわ)(ゆう)雨宮(あまみや)雪姫(ゆきひめ)、全員役能者か人狼なんだよ! あいつら全員、お前の鳴らした鐘の音が聞こえてる。全員に聞いて確かめたからこれは間違いない。もちろん嘘もついてない。

 つまりこの手法を使うと決めた以上、俺は全員と付き合い続けつつ、全員の役能を探らないといけないんだよ!

 これが今後の方針。今後の俺とお前がやるべきことだ。分かったか!?」


 しばらくの無言。

 それから、イルイが静かに返事をした。


『それは…………だいぶ大変そうですね』


 なんとも他人事のような台詞だった。

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