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秋葉原にて電気魔方陣待機中  作者: 守木菜つくし
2/14

ちゃんと知ろうとしたらそこは迷宮だった 2話


 ノートパソコンの電源を入れた瞬間、それはブーンという音を出すだけで画面は真っ黒なままだった。


「えっ?」

 堀原明理ほりはら あかりは目の前で起こった現象が信じられず、パソコン画面を凝視した。

 次の瞬間、何事もなく起動が始まると思ったからである。

 しかし、機械は尚も光を灯さないでいる。

「嘘でしょ。今度は何!」

 前回はBIOS画面が表示されて、OSまで起動しないというものだった。

 慌てて隣町のパソコン修理店に持ち込むと、今度は店員の前では普通に起動した。

 こうなると起動が不安定になるかもしれないとパソコン修理店の店員に言われたが、元に戻ったということで安堵して持ち帰ってしまったのである。

 あれはたまたま発生しただけだと、自分に暗示をかけるかのように悪い展開を無視したのだ。

 二十数年間生きてきて独り暮らしも三年目に突入した自分の決断が、今回は裏目に出たのである。

「これってナントカの法則なの??」

 そう言いながら彼女が思い出したのは、好事魔多しという“ことわざ”の方なのだが。

 しかも今回は行きたかったミュージカルのチケットを取るために、開始前からスタンバイするための起動だった。

 昨日は何事もなくノートパソコンの電源は起動し、ミュージカル会場への地図もプリントアウトした。

 いよいよ勝負の刻限が迫っていると気を高ぶらせて起動ボタンを押したのに、現実は無情としか言いようが無い。

 ならばスマートフォンでチケットを!と考えはしたが、歴戦の雄が多い人気ミュージカルのチケット取りである。

 しばらく自分のスマートフォンをじっと見る。

「……」

 ここで勝負に出ないでなんとする。と、意気込んだところで何だか水をさされたようで、やる気力が萎えてしまう。

「これはもう、運命がミュージカルを諦めろと言っていると考えるしかない」

 好きな役者が出るのだから、今まで舞台などに興味は無かったが見てみたいと考えた。

 しかしノートパソコンの真っ暗な画面とブーンという異音に、ミュージカルの前に考えなければならないものに気がつく。

 まずはこの問題児をどうしたら良いのか。

 深呼吸をした後、ノートパソコン電源を切る

「これを直すの?」

 こうもケチがついては、修理だけではなく新品の購入も視野に入れた方が良いかもしれない。

 高い買い物ではあるがパソコンの無い生活は考えられないのだから。

 そう思いながらも別の事が脳裏を過る。

「このメーカーとは相性が悪いかも」

 さすがに自業自得とは考えたくはなかった。

 

 考えなければいけないという事と、何も考えたくないという気持ちでベッドに横になる。

 するとしばらくしてスマートフォンが電話の呼び出し音を奏でる。

 画面表示を見てみると学生時代からの友人の名前だった。

 通話のボタンをタップすると、明理は相手よりも早く自分の窮状を告げていた。

「やっちん、パソコンが壊れたっぽい」

 挨拶もそこそこに相手から非常事態を告げられて、友人は「何でそんなことになったの?」と聞く羽目になった。



 何をやったと言っても、明理は電源のスイッチを入れただけである。

 それを伝えると、友人の“やっちん”こと、川辺八重子かわべ やえこは電話で「それなら今度の日曜日に一緒に秋葉原へ行く?」と聞いてきた。

 東京の秋葉原といえばメイド喫茶があるとTVで紹介されているのを明理は見たことがあった。

 前までは家電量販店が数多くあったことの方が有名だった気がするが、それらは今でもあるはず。

 思わずタイムリーなお誘いだと彼女は喜ぶ。

「秋葉原って、私には渡りに舟だけど何かあるの?」

 すると相手は楽しそうに答える。


「秋葉原ディープツアー・スペシャルに参加することになったの」

 可愛いメイドさんと秋葉原の街を散策できるツアーだけど4人まで大丈夫、とのこと。

 参加費用は今回スポンサーが居るので交通費のみ自費であるという。

 その説明に明理は困惑する。

「なんで私に?」

「一緒に行く予定だった知り合いが、急遽断ってきたのよ」

 家の事情ということで、彼女も深く聞かなかったという。

「やっちん、私はノートパソコンを見たいから街を散策をする時間は無いよ」

 それなら一人で家電量販店を回った方がマシである。

 そう言って断ろうとすると、相手は大丈夫だという。

「明理、そのツアーは自作パソコンをする人のためのツアーだから、基本情報を教われば購入の参考になるじゃない」

 メイドさんからお薦めのパソコンをこっそり教えてもらえるかもよ。

 そのひと言で、明理は日曜日に秋葉原へ行くこととなる。

「それから明理に言っておくけど、かなり歩くことになるからオシャレは二の次の動きやすい服装で参加よ」

 渡りに舟どころか、渡りに豪華客船ではなかろうかという展開。

 明理は都合がよすぎることに何か不自然なものを感じたが、幸運が舞い降りたのかもと思い直すことにした。

 今回のノートパソコンはオシャレに見えたから購入した。

 勉強不足だったことは否めない。

 明日、本屋へ行って参考になりそうな本を購入することにして眠りに就くことにした。

 やることが決まると、先程までの不安がかなり和らいでいることに気がつく。


 しかし、友人と自作パソコンという単語が繋がらないのが気になってはいた。

 

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