表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋葉原にて電気魔方陣待機中  作者: 守木菜つくし
14/14

ちゃんと知ろうとしたらそこは迷宮だった 終


 明里たちがセリリヤから話を聞いているころ、ツアー名・ゲンさんは上野から電車に乗って帰宅の途中だった。

 久しぶりの秋葉原はやはり楽しかった。

 しかしまたパソコンを自作するというのは、やはり気が重い。

 前回はCPUを組むときに緊張で腕ごと手が震えるというのを体験したのである。

(でも、メーカー製にしてまた不調になったら目も当てられない……)

 するとポケットに入れておいた古い携帯電話が震えた。

 取り出して画面を見てみると、メールが一通来ている。


──マダ アキハバラ?


 簡素な内容に返信を打つ。


──電車に乗っている。あと1時間くらいで到着


 そして決定ボタンを押す。

 何しろこの古い携帯電話には通信機能はない。

 でも、彼女が一緒に暮らしている水晶星人『魔王』にはそれだけで連絡が行くのだ。

 これこそが『スイセイ通信システム』の成功例といってよく、“アルカナ・トルカナ”のプレイヤーたちが彼女の脱退を惜しむ理由でもあった。


(でも、この成功例は面倒なんだよね)

 今の文明は通信技術などに水晶が多く使われており、水晶星人たちはその水晶たちとリンクして情報収集をしていた。

 ゲンさんの『魔王』は井湖田家にて同胞が一つ割れてしまったときに、怒りのあまり井湖田家の電気システムを力の及ぶ限り破壞し尽くすと息巻いていたのだが、ゲンさんのところに託すという寅蔵氏の申し出でそれを取りやめたのである。

 このときばかりは彼女も『魔王』を「さすがは元・勇者様!」と褒めて感謝をした。

 

 その代わりに寅蔵氏が倒れたことによる富江の嘆きに同調して壊れてしまった同胞がこれ以上出ないように、井湖田家の水晶たちは日本人に嫁いだエドワード=アルバーンの妹の孫たちに託すことになった。

 それがシンゴなのだが、このことについてゲンさんは寅蔵氏から顔見知りになってくれと頼まれた。

(管理人のセリリヤさんがいれば良いと思うけど、変なことには巻き込まれたくはないなぁ)

 何しろ『魔王』は怒りのあまり、富江がゲンさんに近づくことを警戒していた。

 その精度が高いため、下手をすれば特定の人やモノを監視するシステムの発展に協力させられかねない。

 水晶星人たちの力ですといっても信じては貰えないだろうし、うかつに信じられたら彼らも迷惑だろう。


 水晶星人たちは今、宇宙船と護衛ロボットの修復を一生懸命やっている。

 ただ、その修復方法というのが、“アルカナ・トルカナ”の中にある一見するとRPGロールプレイングゲームの中に入って勇者などの存在となってイロイロと出題される任務を終わらせるというもの。

 どうも彼らはたくさんの情報が必要プログラムを強固にするようで、そこから宇宙船などを修復しているらしいのだ。

 その為か前回のプログラムの守護者だった『魔王』を倒せるほどの力を持ったプログラム保持者でないと、今の宇宙船を空へ飛ばせないという。

 ゲンさんは最初にそれ説明をされたとき全然理解できなかったが、今はそういうものなのだと考えて彼らの情報収集に協力をしている。

 そして彼らの欲しがる情報も国家機密のようなものではなく、『銀杏とは何か』とか『水に味はあるのか』などなど。

 場合によっては古典文学の一文を書かされたこともある。

 美しい言葉はエネルギーの流れを効率よくするという理屈だった。

 とにかく分かる範囲で説明などをすれば任務終了の扱いになった。


 再び古い携帯電話がメールを受信した。


──マッテイル


(優しいなぁ)

 彼女は思わず笑みを浮かべる。


──あとで可愛いお菓子の画像を見せる


 彼が食べられるわけではないが、反応が楽しそうなので。

  そういえば、今日は久しぶりに楽しかったかもしれない。

 上野駅の本屋で思わず自作パソコンの本を購入してしまった。

(あとでじっくり読んで、それからまた考えよう)

 彼女は車窓から外の風景を見る。

 乗り物酔いをしませんようにと祈りながら。


    終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ