不老不死の一日
不老不死の女の子が好きなので実際どう過ごすんだろうなと思い書きました。一時間クオリティです。
不老不死の朝は早い、どれくらい早いって?
日の出の前だ
なんでかって?
魔女狩りに会いたくないからだ。
彼女の一日のルーティンは周辺の見回りから始まる、森の奥に家をかまえているからって油断は出来ない、警戒し過ぎるぐらいでちょうどいいのだ。
面倒くさいけど仕方ないそりゃ早いに決まってる、捕まって拷問やら実験道具にされる同士はそこそこいたのだ。
覚醒したと同時に少女はベットから起きる、いくつかある拠点の中ではまともな羽毛のベットだ、体も痛くないし、寝付きも良かったようだ。
「…おはよう、私」
「さて見回りしないと」
寝起きの良くない彼女も見回りばかりは死活問題なので流石に面倒くさがってはいられない。
「靴よし、服よし、あと帽子もよし」
簡易な布の服に、いつもの硬い靴、それに顔を隠す用の帽子、着の身着のままといった体で、その姿を見た人は十人中十人が村人と答えるであろう姿である。
「もっとオシャレしたいけど目立つのは避けたいし仕方ない」
ここ黒の森は魔獣が多く、人がめったに寄り付かない秘境で人の往来は月に何人か腕が立つ狩人か冒険者と呼ばれる命知らずが来るくらいなので隠れ家にはうってつけなのだ。
もっとも不老不死でも痛いものは痛いし、怪我をすれば動きが鈍る、お腹もすくので一筋縄ではいかないが。
早速日課の見回りを開始する。
ちなみに家は崖になっている滝の裏の洞窟にあり知っている者でないとまずたどり着けない。けっこうドバドバ水音がうるさいのだがしかたない。
「崖よし」
「森よし」
「魔獣の気配もなし」
少女はサクッと見回りを終わらせると食料確保にはいる、家の備蓄はあるのだが保存食とか出処のよく分からない怪しい商人から買った格安の燻製肉とかしかないのだ。
ご飯に彩りがあるのは良いことだなどと考えつつ周りの野草やぶどうらしきものを集めている。
「まあこれくらいでいいでしょう」
またまたサクッと食料を集めるとさっさと帰路につく、草木をかき分けるようなルートを通るため結構疲れる。
「こういう時に子供の体は疲れる」
少女は今年で100歳を迎えるが体は不老不死になった14歳から全く変わっていなかった。この世界での平均寿命が50歳と考えれば化物真っ盛りである。
「せめて身長あればな」
不老不死の体に文句を言いつつも進んでいく。
145cmほどの平均より小さい体だが、なれた手付きであっという間に家につく。
「ただいま私」
魔女狩りにあわなかったことに安堵しつつ集めた野草やらを机に並べる。と言っても滝の水で洗って最低限食べられるようにしただけだが。
「いただきます」
神は信仰していない少女だったが今は亡き母親からの教えは身についているらしい。
早速野草やらをムシャムシャと食べ始める。
「うん、これはそこそこいけるわ」
緑色のTHE薬草みたいなのはいけたらしいちなみに毒薬の材料になる普通に食べたら死亡まっしぐらの毒草、ケルビム草である。
どうやら味覚が長年の生活で死んでいるらしいが気にしないでおこう。
どうせ不老不死だと気にしないで食べている内に何でも食べられるようになったようだ。
「ごちそうさまでした」
まあまあ美味しい?食事を前に少女もご満悦のようだ。不老不死にはいらない行為でも元人間の欲求には逆らえないのだ。
「さて、何しようかしら」
魔女狩りも最近は規模が縮小しており同士とも最後にあったのが5年前とかだ、少し外で好奇心を満たしてもいいかもしれない。でも外は面倒くさいし結局本を読む事にした。
ベットにだらしなく寝転がり昔からの愛読書、トムの冒険を取り出す。
冒険者という職業が無かった時代に新大陸を見つけ踏破したという青年トム、そんな彼の生き様を書いた物語だ。
今は知らないが昔は一家に一冊必ずあって母に読み聞かせしてもらったものだ。
そんな思い出もあり少女はトムの冒険をこよなく愛していた。
(やっぱりイカダ編が最高にユーモアが効いてて面白いわ、普通イカダって乗ってたら酔うし、進む方向も不安定なのに仲間のジャンと酒盛りしてるだけで進んでしまうのはいつ見ても笑ってしまうわ。
でもその後の新大陸編のヒロインであるマールとのやりとりも尊いわ、そっけないマールに対して陽気なトムがぐいぐい距離を縮めていくのはやっぱり主人公だけあってかっこいいわ、実はジャンはマールにこの時点で惚れているのだけど嫉妬に走らず相棒の恋を応援するのもいいわ、叶わぬ恋、でもトムのためなら心身を捧げる覚悟も見せる彼もヒロインという解釈もできるのよね。
でもやっぱり最後は巨大蛇編ねいままで陽気な旅だった、本作だけどやっぱり危ない新大陸だもの戦闘は避けれないのよね。巨大蛇に飲まれてしまう一行、しかし決死の覚悟で突破口を開いていく仲間達それに答えようとするトムの勇気が巨大蛇を打ち倒すのだわ。最後の一撃に関してはご都合主義だとか運が良すぎるとかよく言われるし私も最初はそう思ったけれどやっぱり仲間と力を合わせて巨大な敵を倒す王道は捨てがたいし、死んでしまうという緊張感が張り詰めていて作品に良いスパイスを与えているわ、巨大蛇編がただの冒険譚ではなく死と隣合わせの冒険ということを強調してくれるいい意味で冒険者のことを現しているように感じるわ。
その後の後日談も少し書かれるのだけど全部書かないで匂わせる程度なのが良いわ、最近の本はけっこうその後も全て書いてしまうから読者に妄想の余地を余りあたえてくれないのだけどいろいろな解釈が出来て楽しいわ。総じて最高ね。)
彼女の三大欲求の内のひとつ性欲はここで消費されているにちがいない。
少し本を読みすぎてしまったようで気がつくと日がくれてしまったようだ。
そうして不老不死は寝る、
明日の見回りめんどいなぁとかんがえながら。