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魔王「勇者、来ないんだけど」

作者: 九条 ねぎ

初めて書いた小説なので、生暖かい目で見て下さったら幸いで御座います。


まさかランキング24位に載るとは思いませんでした! この様な稚拙な話を読んで頂いて誠にありがとう御座います!

 浅黒い雲に覆われた薄暗い空に雷鳴が轟き、朽ち果てた大地は化け物共が蔓延る。


 その土地は、魔族領と呼ばれており、我こそが最悪にして最凶と名乗る恐ろしい魔王が治めていた。


 人間の治める領と魔族領の境目から遠く遠く離れた北の最果て、そこには禍々しい雰囲気を纏った城がある。


 そう、この城こそが、魔族の親玉である魔王が鎮座しているのだ。

 世界征服という野望を掲げる魔族の頂点、魔王。


 そして、その魔王の今現在はというと──


 パチンッ


「王手です、魔王様」

「……待った! 待つんじゃ!」

「ダメです。もう待った3回目じゃないですか、諦めて下さい」


 ──将棋をしていた。


「我は魔王! 我に敗北という言葉は無いのじゃ!」

「ご立派な心意気です。ですが、ここで魔王ぶられても困ります」

「ぐぬぬ……」


 人間界侵略開始から早2年、様々な作戦を用いて人間界に侵攻して来た魔王。

 しかしなんというかアレである。ざっくり言っちゃえば侵略するのに飽きてきたのである。



 事の始まりは、魔族軍四天王達と一緒に異世界から取り寄せた某RPGをやっていた時だった。

 一時の暇潰しとしてやり始めたゲーム。しかし(魔王達にとっては)革新的なストーリーと、(魔王達にとっては)前衛的なゲーム性に魅せられ、ゲームにのめりにのめり込んでしまった。


 この某RPGをクリアする為に、何度も全滅をし、涙を飲む。そして、苦労の末、遂にクリアに至ったのだ。


 その際は、喜びのあまりに四天王と共に外に向かって極大魔法を連発し、近隣の山々を更地に変えてしまったほどである。


 更に、何故か魔王はゲーム内の魔王に感情移入してしまったらしく「貴様の無念、我が必ずや報いてやろう!」と立ち上がり、そして、徹夜明けのテンションとゲームをクリアした高揚感のせいで「我達も侵略しちゃう? しちゃう?」「「「「しちゃうー!」」」」という軽いノリで侵略を始めちゃったのだ。ノリと勢いって怖い。


「ところで『ふっ……私は四天王の中で最弱……』役予定のデルロアよ」

「その称号は止めてくれません? ……はい、どうしました?」

「人間共の動きはどうなっておる?」


 将棋に熱中し過ぎてしまっていて忘れていたが、現在行っている作戦の途中経過を聞いていたのだった。飽きてしまったとはいえ侵略している身、世界征服という目標を達成するまで取り敢えずやっていこうという風になっていた。


「はい、少々お待ちを、今報告書を……結論を申し上げますと、人間共に動きは無いようです」

「何故じゃ!」


 飽きてしまった原因……それは、人間達が中々反撃をしてこないからである。


 数々の非道な作戦を繰り返してきた魔王達は、人間達の反応の鈍さにやきもきしていた。


 最初の王国の姫の誘拐から始まり、全世界の町や村への魔族軍の進軍、更には軍事力の優れている帝国の滅亡と様々なことをやってきた。


 しかし、どれだけ悪事を働いたとしても、人間達から反発するという動きが出てこないのである。


 そして今回も……


「今回は人間共を刺激できたと思ったのじゃが……」

「今回の作戦は、某RPGに出てきた『ゴーレムを街の入口に置こうぜ!』作戦でしたよね」

「うむ」


 街の入口に凶悪なゴーレムを置いてしまっては、外部との流通が途絶え、住人はひとたまりもないだろうと始めた作戦だが、何故何も起こらないのだろうか。


「報告書を見てみる限り、人間共の反応は上々なようです」

「逆に好感触だと!? なにゆえじゃ!?」

「『魔王様からゴーレムが贈られてきたって!』『え? お、ホントだ』『結構いいデザインだね〜、これ街のシンボルにしない?』『いいね!』という会話が記録に残ってるそうです、今では街の名物として、繁栄の手助けになっているとか。ちなみにゴーレムの名前は『自由の象徴』だそうです」

「ガッデム!」


 まさかの結果に、思わず魔王は床に手を付き項垂れる。なにが『自由の象徴』だ。我、逆に侵略をしている魔王ぞ? 嫌味か畜生め。どうしてこんなことに……


 ……というのも、ゴーレムを作る際、とある世界には「ロボット三原則」というものが存在している事を知った魔王城の技術部が、それを遵守する形で製造したせいで、人間を襲わない、人畜無害なゴーレムを街に送ってしまったせいである事を魔王達は知らない。


 実は、今までの悪行も、巡り巡って人間達の繁栄の為になっていたのだった。


 例えば──


「何故混乱しない……何故恐れない……これじゃあ意味が「魔王様っ!」」


 おどろおどろしい魔王城の王座の間に相応しくない可愛らしい声。

 魔王が顔を上げると、最初に王国で誘拐した姫、アーリアが満面の笑みを浮かべながらこちらへ駆け寄るのが見えた。


「おぉ、どうした?」

「はい! 魔王様っ! 実はこの魔法書のこの記述の意味が分からなくて……」

「うむ、これはじゃな……かくかくしかじかじゃ」

「成程! かくかくしかじかですね!」


 懇切丁寧に教える魔王。


 姫は疑問が解けると、輝かしいばかりの笑顔を魔王に向ける。よく見ると、彼女の頬が微かに赤らんでいる。


「うむ? 何か頬が赤らんでおるぞ? 娘よ、風邪でもひいたか?」

「えっ!? いや! 大丈夫ですっ!気にしないで下さいませ! ……あと、私の事は『娘』ではなくアーリアと……」


 魔王は思わず首を傾げる。誘拐したはずの一国の姫が、我に名前呼びを強要するその意図が理解できなかったのだ。


 思考に没頭したせいで、意図せずアーリア姫の顔を凝視する形になってしまった魔王。ますます頬(最早耳まで)を赤くした彼女は、早口に

知りたかった理由を捲し立てた。


「魔王様ってお優しいですよね! 魔法に興味があった私を、魔法が発展しているこの魔族領に留学を提案して、実際に留学させて頂けるなんて思いもしませんでした! いきなり『来い』と言われた時は驚きましたが、今では来てよかったと思っております! 魔法を学ぶことで私の国の発展の礎にもなりますでしょうし、こんなに充実した日々を送れるなんて夢のようです! 国から届く手紙で私の父も魔王様の事をよく言っておられますよ! まるで聖人君子の様だと! ……私も妻となるなら魔王様の様な方と……キャッ!」


「え、今なんて言ったのじゃ?」


 思考に没頭していた事と恐ろしい程の早口だった事が重なった故に会話の大半を聴き逃していた魔王は、何かよろしくないことを言われたような気がしたので聞き返した。


 しかし、彼女は何故かトリップしており、赤らんだ頬に手を当てキャッキャウフフとしているだけである。


 これでは埒が明かないと、近くにいたデルロアに詳細を聞いてみることにした。


「のぅデルロアよ、娘は何を言ったのじゃ?」

「(パチンッ)え? あ、すいません、将棋差してて聞いてませんでした」


 聞いてなかったらしい。


「ところで魔王様、何やら将棋の戦法に『穴熊』なる鉄壁の陣がある様なのですが」

「何それ詳しく」



 浅黒い雲に覆われた薄暗い空に雷鳴が轟き、朽ち果てた大地は化け物共が蔓延る。


 その土地は、魔族領と呼ばれており、聖人君子と名高い優しき魔王が治めていた。


 やせ細った土地を持っていながらも、その魔王は、国の重要な財である魔法の技術を惜しみなく世に広め、困窮している街や村があれば魔族を派遣し、世界征服を企む悪鬼の如き帝国を成敗する等、数々の善行を繰り返してきた。


 人々からは親しみと尊敬を込めて、『魔王様』と呼ばれ、世界史上稀に見ない善王として世に語り継がれていく。


 そして現在、その魔王はというと……


「うむ、デルロアよ、例の作戦は?」

「『大雨降らせて災害起こしちゃおうぜ!』作戦でしょうか?」

「そうじゃ」

「対象の街が深刻な水不足だった様で、大変喜ばれております」

「なんじゃと!」

「またしても裏目に出てしまいましたね……あ、王手です」

「なっ!? 待った!」

「もう『待った』5回目ですよ……諦めて下さい」

「畜生め! 何故ここまで上手くいかぬのじゃっ!」

「二つの意味で才能無いんじゃないですかね」


 バッサリと家臣に言われてしまった魔王は項垂れ、溜息をつく。そして一言。


「このままだと、勇者、来ないんだけど」



あとがき

 最初にも書きましたが、小説を書くのは初めてなので、文法が可笑しかったり、誤用が沢山あるかと思います。

 良ければ誤字報告や感想、評価等(批評なんかもあればどしどしと)頂けると幸いで御座います。


 ……とは言いましたが、正直、閲覧してくれた人(PV?)が増えてるのを見てるだけで楽しそうなので、多くの人に目を通して貰えたらなぁと祈っております。


 ここまで読んでくれてありがとうございました!以外人物紹介(読まなくても大丈夫です!)




魔王

某RPGの影響とノリとテンションで、世界征服を企む……が、やる事なす事尽く裏目に出てしまい、世界中の人々からは『聖人君子』『善王』と呼ばれてしまう。勘違い難聴系と、ある意味主人公らしい主人公。

野望は、ゲーム内の魔王が成し遂げられなかった、勇者打倒と世界征服。そのため、勇者が来る日を王座で待ちわびている。

戦闘能力は世界随一で、拳の一振りで海を割る程。もうこいつ1人で侵略した方が早いレベルである。

実は礼儀正しく、姫を誘拐する時は国王にアポイントを取り、自ら王国に赴いて、姫を誘拐する事を国王に説明し(何故か留学という話にすり変わっていたが)堂々と姫を譲り受けた。誘拐後の姫も何かと世話をしている。

将棋が物凄く弱く、最近では始めたばかりの姫にも負けて、その夜は枕を濡らした。

最近、多肉植物の育成にハマっている。


四天王 軍師デルロア

『ふっ……私は四天王の中でも最弱……』役(予定)の人。裏から軍を指揮するので戦闘力は四天王の中でも低め。(それでも極大魔法は1発なら放てるレベル)

頭が良いが馬鹿、所謂勉強出来る馬鹿。魔王の立てた作戦を忠実に行う役を負うが、馬鹿なので失敗する。世界征服が裏目に出るのは、だいたい彼のせいである。最後のセリフ半分ブーメラン。軍師ェ

将棋がとても強く、魔王軍の中では敵無しだが、最近めきめきと強くなってきた姫に負けそうで内心ヒヤヒヤしてる。


アーリア姫

魔王による最初の被害者(?)

最初の国の第三王女。

魔法を学びたいと思っていたが、王国の魔法技術では独学で調べられる事が限られており、途方に暮れていたところ、魔王が襲来してきた。

あれよあれよという間に魔王城に連れてこられて戸惑うが、学びたかった魔法が存分に学べる環境に気が付いたらなっていたので、思う存分勉強している。毎日がハッピー。

魔法のエキスパートである魔王に対して、溢れんばかりの尊敬と微かな恋心を持っている。

長い台詞を息継ぎ無しで言いきれるほどの肺活量の持ち主。そしてよくトリップする。もしかしたら:酸欠?

魔王の暇潰しに付き合って、将棋を差したところ、隠れた才能を開花し、初戦で魔王に勝ってしまう。(魔王がわざと負けてくれたのだと勘違い、「魔王様! なんとお優しい!」そして恋は更に加速していく)

彼女の恋は音速を超えるっ!

ピチピチの14歳。


国王


最初の王国の国王。

魔王の礼儀正しさや数々の善行を目の当たりにし、魔法にのめり込み、結婚適齢期を逃しそうなアーリアを嫁に、と企んでいる。

帝国の最初の被害に遭いそうだったところを魔王に意図せず助けられ、国を超えて立場を超えて忠誠を誓ってる。一方的に。

恐妻家。

ちなみに彼の国の名前は決めるのがめんど……都合によって省略された。


魔王城技術部の方々

魔法技術のエキスパート達。

人間界侵略には欠かせない存在、某RPGを異世界から引き寄せたのも、技術部が開発した異次元転送装置のお陰。ある意味、人間界侵略も彼等のせいである。

異世界の技術をリスペクトしていて、彼等の作る物は、どこかで見た事あるようなアイデアやデザインをしている。

現在、青いボディの猫型ゴーレムを作ろうと計画中。


その他四天王3人。

ノリと勢いだけで生きている。

キャラクターを考えるのが面倒で、最初の「「「しちゃうー!」」」の台詞を最後に出番が無くなった可哀想な人達。

おのれ作者め。

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